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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

≪2004年9月21日掲載≫

母子・父子家庭の子どもたちをみんなで守ろう!
<アルメニア>

 アルメニア第2の都市、ギュムリを破壊させた1988年の地震から16年がたちました。バァトゥヒ・ぺトロシアンは今日のギュムリの都市風景になっている数百のドミックス(仮設住宅)の一つに住んでいます。近年ではアメリカ・アルメニア・リンシー基金の支援によって建設作業も進んでいますが、アルメニアのシラク北部地域の貧困は依然として厳しいものがあります。

 失業率はアルメニアの全国平均より2〜3倍高く、人口の約60%が貧困ライン以下で暮らしています。ギュムリに住んでいる大部分の人と同じように、バァトゥヒ一家も電気や水道水がなく、もっぱら主食のじゃがいも、パスタ、パンを食べて暮らしています。

 バァトゥヒは結婚後、夫とともにロシアに移住しました。しかし、7年後、結婚生活が失敗に終わると、バァトゥヒは職もお金もない状態でギュムリに戻ってきました。2人の子ども、スヴェトラナ(現在13歳)とエマ(同11歳)も一緒でした。

 「帰ってきたとき、娘たちはロシア語とアルメニア語が入り混じった言葉しか話せませんでした」とバァトゥヒは言いました。「本はおろか服さえ買うお金がなかったので、娘たちは学校へ行くことができませんでした。お腹を空かせた子どもたちに食べさせる物がなかったときは思わず叩いてしまいました。自殺したい気分でした。何しろ、家を暖めることさえできないのですから」

 しかし、スヴェトラナとエマが学校に行っていないことを知った“シラク国際協会の危機的状況にある子どもたちのための地域密着型ケア・センター”所長のゲガヌシュ・ギュナシャンは一家を支援するためにすぐに立ち上がりました。

 ユニセフの支援を受けて、センターでは一人路上で働いている子どもや貧しさのため学校へ行けない子どもがいる家庭を支援しています。現在、センターには6歳から15歳の子ども50人が登録され、その他にもたくさんの子どもたちが不定期にセンターを訪れます。スヴェトラナやエマのように親がひとりしかいない子どもたちは20人います。

 「私たちが生きていけるのはセンターのおかげです」とバァトゥヒは言いました。「現在、食べ物をもらうために子どもたちは寄宿学校に行っていますが、子どもたちはそこが好きではありません。午後2時に授業が終わると、子どもたちは夕方の6時までセンターにいます。子どもたちはセンターで過ごすことが好きなのです。ゲガヌシュは子どもたちにとって第2の母親のようなものです」

 センターは2002年に設立されました。ここには子どもたちのニーズに応えるソーシャル・ワーカー2人、先生2人、看護師1人、医者1人、心理学者1人、そしてボランティア10人がいます。子どもたちは手芸品の作り方を学んだり、学校の勉強を手伝ってもらったりします。初めてセンターを訪れたとき、スヴェトラナとエマは文字を読むことさえできませんでした。今では、センターのスタッフのおかげでスヴェタレナは文字を読んだり、書いたりすることができ、将来はコンピュータ・プログラマーになるという夢を持つこともできるようになりました。

 スヴェトラナとエマは現在教育を受けられるようになりましたが、一家の状況が全体的によくなったというわけではありません。

 貧困ライン以下の暮らしに押しつぶされそうになったバァトゥヒは4月に入院しました。絶望とストレスのあまり、子どもたちとの関係も悪くなり、バァトゥヒは子どもたちに無関心になり、しばしば面倒を見なくなってしまったのです。

 一カ月後、スヴェトラナとエマはセンターの配慮で治療を受けた母親と再会しました。もしシラク国際協会の支援がなければ、この出来事によって、一家はバラバラになっていたかもしれません。同じような状況におかれた多くの子どもたちと同じように、13歳のスヴェトラナは年齢より大人びています。

 「お母さんの面倒を見るため、早く仕事につきたいと思います」とスヴェトラナは言います。「夢は強い家族を持つことです。食べ物を得ることがどんなに大変かを知っているので、お母さんの負担にはなりたくないのです」

 ギュナシャンによると、このほかに親と離れて暮らさなければならない子どもはこのセンターにはいないと言います。貧困のせいで、本来は障害がある子どもたちや親がいない子どもたちを収容する特別な寄宿学校や子どもの家に入らなくてはならない子どもたちが急激に増えています。

 2001年以降、ユニセフは危機的状況にある子どもたちと障害がある子どもたちのための代替ケア・センターの設立を推進しています。これまでオーストリアとオランダのユニセフ国内委員会の資金援助によって、このようなセンターがアルメニアの貧しい5つの地域につくられました。

 「この活動は、危機的状況にある子どもたちの施設への収容を防ぐ国家政策を作る上で必須のものです」とユニセフの子ども保護担当官であるナイラ・アヴェティシャンは言いました。「危機的状況にある子どもたちと家族に対する国策の一部として支援が持続できるように、地元当局と地域社会の役割を強化するべきです。」

2004年8月25日
ユニセフ・アルメニア事務所

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