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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

大統領に新たなライバル出現??
〜女の子たちにも大きな夢が〜
<ブルキナ・ファソ>


今日はブルキナファソの政治にとって歴史的な日になったばかりでなく、これまで絆を強めつつあったブルキナ・ファソの大統領府とユニセフ・ブルキナファソ事務所との関係がさらに、新しい段階に入ったことを示す記念すべき日となりました。何よりも、女の子の教育の重要性が認識された日になったのですから。
大統領になって初めて、ブレーズ・コンパオレ大統領は、ユニセフが支援する「サテライト小学校」を訪問したのです。サテライト小学校は、子どもたちが通いやすいように、村の近くに建てられた学校で、教育の機会を奪われがちな農村部の子どもたちに教育を提供しようと考えられたものです。ブルキナファソでは正規の学校として認められています。

この訪問は、ユニセフ・ブルキナファソ事務所の招待によるもので、パンタンロアーナ村を訪問した大統領は、引き続き、子どもたちの教育の機会向上、特に女の子の教育の機会改善に力を入れていくことを約束しました。20分にわたる熱のこもった演説の中で、大統領はサテライト小学校が国の子どもたちの教育にとってどれほど大切な役割を担っているか、また、そのほかの面でもどれだけ子どもたちに役立っているかを力説しました。

そういう意味ではとてもすてきな日だったのですが…。この大統領に、突然ライバルが出現しました。大勢の聴衆を前に、大統領と同じくらい情熱的に「大統領立候補宣言」をした人がいたのです。その人の名前はダヤンバ…。

2003年1月14日、午前11:45。それは、小学校の児童、先生、親、海外・国内のメディア、大使、協力者たち、大臣、コミュニティのリーダー、国連やNGOの代表など、何百人もの来賓がいる中でのことでした。コンパオレ大統領を前にして、ダヤンバは勢い良く手を上げ、元気な声で叫んだのです。
「僕は大統領になりたいと思います!」
そう、ダヤンバはまだ9歳の男の子です。このサテライト小学校に通い始めて2年目。「君たちは将来何になりたいのかな?」という大統領の質問に素直に答えただけなのです。ダヤンバの大統領立候補宣言は、タイミングとしては突然のものでしたが、彼が持ち合わせている自信や将来への夢の大きさは、この学校の生徒みんなが持っているものでした。

ダヤンバはこのサテライト小学校の97人の生徒のひとりです。97人中50人は女の子です。サテライト小学校はユニセフの支援を受けていますが、このプロジェクトが始まったのは1995年。すでに10万人の男の子、女の子——その多くがサテライト小学校がなければ学校には行けなかったであろう子どもたち——が国内に建てられた229のサテライト小学校で学びました。

サテライト小学校プロジェクトが実施されているほかの村落と同じように、パンタンロアーナ村(人口1,000人)も、プロジェクト導入のための基礎的な条件を満たしています。乾いた埃を舞い上げる北東の貿易風に吹きさらされるパンタンロアーナ村には、小学校がありません。一番近い従来型の学校は5キロも先です。村も村人も、経済的に苦しく、貧しい状況にあります。しかし、救いとなっているのは、村人たちが子どもの教育に熱心なこと。自分の子どもでなくても、なんとか手を貸そうとしてくれます。サテライト小学校は、学校が村にできることを村人たちが支持し、建設や日々の運営面で村人が手助けできることを証明しなければ導入できません。また、学校に行く子どもの50%が女子でなければなりません。その点でも村人の協力は欠かせないのです。

サテライト小学校は、パンタンロアーナのように貧しい村に建てられ、7歳から10歳までの女の子、男の子向けに小学校1〜3年生の授業をします。子どもたちが、身体的にも、文化的にも村の環境に近い教育を受けられるよう配慮されています。子どもたちが日常的に使う言葉、習慣、伝統などを尊重し、健康、栄養、家族教育、市民権などについても教えるようにしているのです。このプロジェクトを成功させるために、学校の運営はコミュニティの家族の参加を原則としています。長期目標は『万人のための教育』に置かれ、ブルキナファソの貧困撲滅への一助となるよう考えられています。

ブルキナファソの公用語はフランス語ですが、現地の言葉となるとその数は60以上にもなります。そこで、サテライト小学校では、1年生向けには、村の言葉で授業をし、徐々に公用語のフランス語に移行し、2年生の終わりには100%フランス語による授業に切り替わるようになっています。3年生の終わりまでには、基礎学力として読み書き、算数を修得させ、小学4年生になったときには、従来型の学校に編入できるよう、フランス語の授業にも慣れさせておこうという配慮ができているのです。

コミュニティによる運営委員会は、両親や教師が参加し、学校の円滑な運営に力を貸します。先生方は、コミュニティ出身の人が積極的に採用され、その先生方に基礎教授法の訓練を授けるようにしています。そうすることで、先生方は自信をもって子どもたちに読み書き、言語表現、算数といった基礎学力と共に、社会教育、ライフ・スキル(人生に必要な生きるための知識)などを教えることができるようになるのです。サテライト小学校には、大型クローゼットがあり、男女別のトイレが設置されています。また、サテライト小学校の90%では安全な飲み水が供給されるようになっています。ほかに、各クラスのカリキュラムには必ず衛生教育が含まれています。

サテライト小学校は成功と言えるでしょうか?サテライト小学校プロジェクトの監視や評価の結果を見ると、毎年同じ結果が出ていることが分かります。サテライト小学校を卒業して進学する子どもたちは、従来の学校の子どもたちよりも、どの教科(読み書き、算数)においても1.5〜2倍も成績がいいことが分かっています。また、中途退学者も少なく、保持率(進級や留年に関わらず翌年も在籍している割合)は94.9%となっています。どうして、サテライト小学校の子どものほうができがいいのでしょう。その理由はいろいろ考えられます。子どもたちが日ごろ話す言語を使って授業をするので、子どもたちの理解が早い。学校の運営と日々の活動に両親が関っているので、子どもたちが励まされてやる気が起きる。同じような理由で、サテライト小学校の方が欠席率も低い。また、教師対生徒数の(平均)比率が、サテライト小学校では29対1であるのに対して、従来の学校では48対1にもなるといった背景が考えられます。

コンパオレ大統領がスピーチで述べたように、「『万人のための教育』、そして、特に『女子教育』は、絶対的に優先させなければなりません。教育に関する調査結果を見ると、教育を受けた母親に育てられた子どもは、より健康で、より高い教育を受けることができ、より手厚い保護を得ることができます。サテライト小学校のおかげで、ブルキナファソでは、より多くの女の子たちが学校に通えるようになりましたが、こうした女の子たちこそ、将来のブルキナファソで重要な役割を担うようになるのです」

サテライト小学校のプロジェクトが始まった1995年以来、ユニセフは全国229のサテライト小学校の計画、建設、運営を支援し、机、教材、学習資材、男女別トイレなどの提供を行ってきました。学校に設置した手押しポンプや井戸のおかげで、子どもだけでなくコミュニティ全体に安全な飲み水を供給することができるようになりました。もちろん、パンタンロアーナ村のような場所には、まだ保健センターはありませんが、サテライト学校が建設されたことで、一番近い町から医療チームが来るようになり、子どもの健康状態をみたり、予防接種もしてくれるようになりました。また、学校に菜園を作ることで、子どもたちに実地教育ができるだけでなく、キャベツや玉ねぎなどの野菜を栽培でき、栄養面でも子どもたちの健康に役立っています。

ユニセフ・ブルキナファソのジョーン・フレンチ代表は、スピーチの中で、7〜12歳の子どものうち、現在、基礎教育の機会に恵まれている子どもは、女子でわずか36%、男子で49%しかいないことを明らかにしました。でも、学校が子どもたちのそばにあり、子どもたちが毎日5キロ以上歩いて学校に通わなくてすむようにできれば、就学率——特に女子の就学率——を上げることができるのです。

スピーチの結びで、コンパオレ大統領は、ブルキナファソ政府の女子教育への取り組みについての意気込みを語りました。
「『万人のための教育』、特に『すべての女子に教育を』はブルキナファソにとっては大きな課題です。強い継続的な意志が必要ですし、積極的な人員動員、資源の効率的な運用、教育制度のたゆまぬ改革が必要です。それを効果的に示してくれているのがサテライト小学校プロジェクトです」

『万人に教育を』…。サテライト小学校のもっともすばらしいところは、大統領立候補宣言が、もはやダヤンバのような男の子だけでなく、女の子のものにもなったことでしょう。それも、パンタンロアーナのような小さな村のサテライト小学校に通う女の子たちも、こうした夢を持つことが可能になったのです。サテライト小学校のおかげで、女の子たちも男の子と同じように教育の機会に恵まれ、学校に通うことができ、クラスの中でも男の子と対等にやっていけるようになったのですから。


2003年1月14日
執筆者:ケント・ページ ユニセフ西部・中央アフリカ地域広報官

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