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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

チャド:
元子ども兵士の証言
レイプ、殺人、薬漬けの日々


【2014年6月30日 チャド・ンジャメナ発】

チャド・ンジャメナにあるトランジット・センターで、武器や軍用車両の絵が描かれた壁にもたれて座る少年。
© UNICEF/NYHQ2010-1152/Asselin
チャド・ンジャメナにあるトランジット・センターで、武器や軍用車両の絵が描かれた壁にもたれて座る少年。

木の幹に座り、地面に目を落としながら、イブラヒムくん*がチャド北部の武装勢力に徴用されていたときのことを思い起こします。3年前のことです。イブラヒムくんは淡々と、まるで彼自身ではなく、別人に起こった出来事のように語ります。

15歳の時、イブラヒムくんは武装勢力に加わることを強いられ、薬漬けにされ、人を殺すように命じられていました。

「武装勢力が村にやって来て、僕が通っている学校に乗り込んできました。生徒を脅し、暴力をふるって、武装勢力に加わるように強要したのです。仲間になれば、家族に危害は加えないと言われました」

イブラヒムくんはクラスメートとともに、山の中にある武装勢力の基地に連れていかれました。子どもらしく生きる権利は奪われ、子どもではなく、紛争の武器として扱われたのです。

殺害やレイプを強要され、薬漬けの生活

「3カ月の間、武器の使い方、上官へのあいさつの仕方などを叩き込まれました。迫撃砲の解体や修理の方法、実際に的に向かって銃を撃つ練習をしました。特に射撃はたくさんしました。そして、躊躇せずに人を殺し、女の子や女性をレイプすることを強いられました。自分たちはとても強い存在だ、と証明するためでした」

レイプしようとして抵抗された場合、相手の胸や耳を切り落とすように命令されていました。ほとんどの時間、特に暴力的な行為をするとき、イブラヒムくんもクラスメートも薬物を使用していました。

脱出しようと試みる者は、時には見せしめのため、他の子どもたちの前で殺害されたり拷問されたりしました。

家族からの拒絶

チャド・ンジャメナにある武装勢力から解放された子どもたちを支援するためのセンターに通う男の子たち。
© UNICEF Chad/2014/Pirozzi
チャド・ンジャメナにある武装勢力から解放された子どもたちを支援するためのセンターに通う男の子たち。

耐え切れなくなり、決死の思いで脱出したイブラヒムくんは、家族の住む、故郷の村に戻ることができました。しかし、彼を待ち受けていたのは、期待とは全く異なる現実でした。

「武装勢力での暮らしに耐えられず、両親に会うために逃げ出しました。でも両親は、やっとの思いで帰ってきた僕を一目見たとたん、一目散に逃げていきました。誰も、僕には村に戻ってきてほしくないのです」

家族に拒絶された少年は、再び武装勢力のもとに戻りました。そして戦闘を繰り返しながら生活をしていましたが、2年後ようやくに平和協定が結ばれ、反体制武装勢力に恩赦が出て政府軍に合併されることになりました。

政府は武装勢力に関わる子どもたちの年齢確認を実施しました。しかし、イブラヒムくんは上司に年齢を偽るように強要されました。軍に留めておくためです。

「同い年の友達の多くが、解放されました。でも僕は、上司に18歳だと報告するように命令されました。武器の扱いが上手く戦力になる僕を、手放したくなかったのです」

年齢確認の日、イブラヒムくんは上司から隠れようと試みましたが、見つかってしまいました。「何度も念を押されました。繰り返し年齢確認のための質問を受けましたが、その度に18歳だと言うように強要されました。まだ、僕は17歳でした」

社会復帰までの長いプロセス

年齢を証明する公式な書類を所持していないために、子どもたちの解放が難しいことがよくあります。そして武装勢力からの解放は、長きにわたる社会復帰のプロセスの、始まりにしかすぎません。解放後、子どもたちはまずトランジット・センター(一時受け入れ所)で、精神状態の検査とカウンセリングを行います。そして、家族の再会や地域への復帰を果たすため、職業訓練を実施します。

2011年、チャド政府は武力における子どもの徴用を予防する行動計画に署名しました。しかし、国連による「子どもと武力紛争」年次報告書2013に、子どもを政府軍の兵士として徴用している8カ国のうちのひとつとして、数えられています。**

豊かな国の土台を築くために

ユニセフ・チャド事務所ブルーノ・メイズ代表は「子どもを兵士として徴用することは、道徳的に許されるものではなく、国際法上でも禁止されています。ユニセフはこれらの行為の撲滅と、将来にわたって同様の事態が起こらないようにするため、政府の子ども兵士の徴用を防止するための活動を引き続き支援します」と語ります。

ユニセフはパートナー団体と協力し、武装勢力から解放された子どもたちに医療ケアや心のケア、家族の追跡と再会、学校に再び通うための支援など、一連の支援を行っています。

「元子ども兵士の子どもたちが、悲惨な経験を乗り越え、社会へ再復帰できるようにする支援は、単に、彼らの奪われた子ども時代を取り戻すための手助けに留まらず、彼らがこれから生きていく国をより良くするための土台作りを支えているのです」と、メイズ代表が語ります。

「学校にもう一度通いたいです。でも、軍の上司が許してはくれません。もう僕は18歳になってしまいました。でも、何かをずっと、失ったままだと感じるのです。学校に通うことができれば、僕もフランス語を学んだり、読み書きを勉強できるのに…」(イブラヒムくん)

*仮名です
**2014年5月に発表された最新の報告では、チャドは子どもを政府軍の兵士として徴用している国のリストから除外されています

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