メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

1本の注射と2つのカプセル:はしかとビタミンAキャンペーン 
<エチオピア>

<2003年7月16日掲載>

 心配そうな目をして、6歳の女の子ラハムは、目の前の保健員に言われて上着の袖をまくりあげました。お父さんもお姉さんやお兄さんも集まった多くの人がラハムを見ています。アムハラ地区南ウォローにあるコンポルチャの急ごしらえの予防接種所の外には、子どもたちの長い列ができています。注射針がラハムの細い腕に入り、その数秒後には、ラハムは、エチオピアで子どもの命を奪っている主要な病気から、もう守られているのです。
 「お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに、泣かなかったよ」と、注射を終えたラハムは、誇らしげに言いました。

 2003年7月、南北ウォロ、ワギムラ、アルシ、シダマ、ウォライタ、フィグのそれぞれの地域で、7日間のはしか予防接種キャンペーンが行われ、520万人の子どもたちが予防接種を受けました。ラハムはその1人です。南ウォロは最近の干ばつで大変な被害を受けた地域です。このキャンペーンで、都市部でも農村部でも、120万人近くの子どもたちが予防接種と1滴か2滴のビタミンAの投与を受けました。ビタミンAは、多くの栄養不良の子どもたちに緊急に必要とされています。病気感染に対する抵抗力をつけるためです。

 南ウォロとその他の6つの地域での予防接種活動は、エチオピアの子どもの死亡率を削減し、子どもを予防可能な病気から守るための大きな闘いの一部です。1700万人以上の子どもたちが2003年のはしかとビタミンキャンペーンの対象となっており、年間145万件と推測されているはしかの発症数を減らすことを目指しています。

 エチオピアで、はしかは、子どもを脅かす最大の病気の一つです。そして、干ばつと、子どもがより脆弱な状況にある中で、その感染は、ますます拡大しています。WHO(世界保健機関)は、毎年、この病気によって7万2,000人以上の子どもが亡くなっていると推測しています。最近になって、国のあちこちで小規模な流行が報告されており、その数は増えているとしています。

 「通常の状況下では、5歳未満の子どもに、はしかの予防接種を受けさせればよいのです。でも、こうした緊急事態下にあっては、15歳未満の子どもすべてが予防接種の対象となります」と、キャンペーン中に南ウォロを訪れたユニセフの担当官プラディープ・マランカー氏は話します。

 「5歳を過ぎた子どもたちは、この病気に対する抵抗力が十分あるかもしれません。しかし、彼らが感染すると、弟や妹にその病気をうつしてしまいます。すべての子どもを対象にすることで、5歳未満の子どもがより守られるようになるのですが、現時点ではそこまでたどり着いていません」

 ビタミンAは、保健省とWHO、ユニセフが共同で行っているこの予防接種キャンペーンの重要な構成要素です。1歳未満の子どもには、ビタミンA(10,000IU)のカプセル1つが投与され、ラハムのような6歳児などそれ以外の子どもたちは、カプセル2つ分の無味の液体を飲み込みます。

 「干ばつの被害を受けた地域の子どもたちは、ビタミンAが豊かな食べ物を十分な量、食べていません。ビタミンは、はしかやその他の感染症を引き起こす病原菌の攻撃から細胞を守る力を強めるのです」とマランカー氏は言います。

 南ウォロのコンポルチャで、子どもたちは、保健センターや学校、市場や寄り合い所などに設けられた17ヶ所の予防接種所にそれぞれ連れてこられました。もっとも多くの子どもが集まったのはキャンペーンの初日の午後でした。ちょうど、子どもたちは学校から、親たちは仕事から帰ってくる時間だからです。親たちは、その1本の注射や2滴のビタミンAの大切さをよくわかっているようでした。はしかは、もしきちんと治療されなければ、聴覚障害や視覚障害、脳へのダメージや死さえもたらし得るのです。

 「子どもをはしかから守るためにここに来ました。もし、予防接種を受けられなければ、病気になって死んでしまうかもしれませんから」と、義理の母のアドバイスを受けて、3歳のシャミルと1歳のイマムの2人の子どもを予防接種所に連れてきたザラ・イマームは話しました。「夫は、子どものころはしかにかかったんです。彼の視力は今でもぼんやりとしています。」

 彼女が住んでいる地域では、人びとは、はしかの治療にレモンの果汁やユーカリの葉を使います。レモンに葉を浸して、傷やただれた場所に貼ります。
 「良くなる子どももいるけれど、死んでしまう子どももいます。私は治療よりも、防ぐ方がいいと思います。だから、子どもを守るためにここに来たのです」 ザラは幼い方の子どもを連れて予防接種所に入りながら、そう言いました。

 南ウォロでユニセフのスタッフが出会った子どもたちは、ほとんどすべてが予防接種を受けました。例外は、注射針を怖がる女の子1人と保健員が近づくのを見て学校から逃げ出した男の子2人でした。しかし、ユニセフやWHOのスタッフがこの地域で一軒一軒回りながら実施した調査によって、彼らは、すぐに見つかり、近くの保健センターにつれていかれました。

 「この病気のことはすべての母親が知っています。目に見えるものですから。病気になった子どもがだんだん悪くなっていくのが分かります。そして、だれもが、家族のだれかがこの病気にかかったことがあるのです。人びとは、その危険性に気付き、どこにいけばその危険から守られるかを知っています。キャンペーン期間中に、非常に高い割合で社会動員が実現した理由はここにあります」とマランカー氏は述べました。

 エチオピアは1998年からはしかのキャンペーンを行ってきました。保健省、ユニセフ、WHOとパートナー達が、2006年までにすべての地域で80%の予防接種率を達成するために、がんばっています。

アジスアベバ 2003年6月24日(ユニセフ)

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る