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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

治療用栄養支援で深刻な栄養不良の子どもの命を救う
<エチオピア>

<2004年2月4日掲載>

 生まれて5か月になるカダルが、声もなく泣いています。治療のための栄養補給支援を行うテントの中、床に寝かされたカダルは、衰弱しきって大きな声で泣くことができません。鼻から胃に管をとおして、衰弱した子どものための治療用ミルクを与えられています。
 「私はもうお乳がでないんです」とカダルの母親のファティモ・アブディ(25歳)は嘆きます。彼女は、夫ともう4人の子どもたちと一緒にハルタシェイクにある国内避難民キャンプに住んでいます。「家には食べるものがないんです。…私の赤ちゃんが心配」

 カダルは幸運な赤ちゃんのひとりです。母親はハルタシェイクにあるユニセフが支援している治療用栄養支援センター(TFC)へカダルを連れて行き、そこで、カダルの栄養不良はもっとも深刻な段階にあると診断され、その治療を受けることができたからです。

 27歳のミリアム・アベルブも、干ばつが続いていた2年前に、夫と4歳のファティモ、2歳のアブディと一緒に避難民キャンプにやってきましたが、それ以来、家族を食べさせるのに苦労しています。「ヤギや羊はみんな死んでしまいました。夫は、あるときは畑を耕し、衣服を洗います。仕事がある日があると思えば、次の日には何もすることがないという状態です」とミリアムは言いました。「赤ちゃんがひどく弱ってしまったとき、私はここへ駆けつけました。この子はひどい栄養不良でした」

 ユニセフが支援するセンターへ来る他の子どものように、アブディは栄養状態が最悪の段階(フェーズ1)にあった間、緊急治療用の栄養補給を3時間ごとに3、4日間続けて受けました。危険な状態が2日間続きましたが、今ではフェーズ2にまで改善し、危機を脱しました。「赤ちゃんが死んでしまうのではないかととても恐ろしかったけれど、今はもう大丈夫。助かってよかった…」とミリアムは言います。「これからはもうこんなことが二度と起こらないように注意します」

 エチオピア全土で、少雨のために飢えに苦しむ人の数が増えました。調査によると、干ばつの被害がもっとも大きい地域で、栄養不良の割合は全体で15%、深刻な急性栄養不良の割合は3%を超えていることが分かっています。5歳未満のおよそ6万人の子どもが危険な栄養不良の状態にあると推定され、栄養補助と治療用栄養補給について緊急な支援が必要だということを示しました。

 この危機に対応するために、ユニセフは、政府、NGOや支援団体と協力し、44ヶ所の治療用栄養支援センターを開設しました。2003年には、1万8千人以上の5歳未満の子どもを受け入れ、深刻な栄養不良の治療を行いました。6万人以上の中度の栄養不良の子ども、妊娠している女性や授乳期の女性もそれぞれにあった栄養補助を受けました。

 「このような(栄養不良の)子どもの多くは、、脱水症状や低ブドウ糖症に苦しめられています。彼らは危険な状態にあり、もしこの状態が続けば、すぐに心不全で亡くなるでしょう」と、ジジガを拠点としてユニセフで働くケニア出身の栄養士のジェームス・キンゴリがいいました。治療用栄養補給が始まると、「一時間もたたないうちに、変化が見られるんですよ。それはもうすごいことです」

 「子どもたちは、何回もお母さんのお乳を飲もうとするのですが、お母さんのお乳は出ないのです。治療用栄養支援センターで、お母さんたちも十分な栄養を与えられ、24時間以内にお乳がでるようになるのです」とキンゴリが続けて言いました。「お乳を増やすことで、子どもは水分補給ができ、母子ともに元気になります」

 25歳のファティモ・モハムードは、1歳になる息子のデカビディと一緒に治療用栄養支援センターに来ました。デカビディに表情はなく、瞳の焦点も定まっていませんでした。ユニセフとともにソマリ地方で活動する国内NGO「母子開発機構(MCDO)」のキャンプ指導者のモハメド・イブラヒムは、「デカビディと同じ歳の元気な子どもなら8.5キロは体重があります。でも、デカビディは6.3キロしかありません」と言います。「私たちは3〜4日間、治療用栄養補給を続け、彼を重篤な状態から救い出すためにがんばります。彼を救いたいのです」

 2003年、ユニセフは保健省、NGOや支援団体の約900人の医療従事者に対し、深刻な栄養不良の管理について訓練をしています。急性栄養不良についての新しい基準となる治療要領や治療についての研修内容はユニセフのコンサルタントであるマイケル・ゴールデン教授によって作成され、2003年6月にエチオピア政府に採択されました。

 「私たちは、もっとも弱い立場にある女性や子ども、お年よりに対する支援を非常に多く受けています」とジジガにある州防災準備局と食料安全事務局とNGOコーディネーターをつとめるムクタル・ムハンマド・サイードは言います。「治療用の食べ物、ミルク、水−私たちとユニセフのパートナーシップは家族のようなものです。ユニセフは、私達の能力を高め、格差を埋めるために、多くのことをしてくれています」

2004年1月16日
ハルタシェイク、エチオピア(ユニセフ)

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