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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

≪2004年4月2日掲載≫

村がどうやって安全な水を手に入れられるようになったか
〜ふたりの子どもたちの話より〜
<ギニア>

 ギニアの農村人口のうち、安全な飲料水を手に入れることができるのは、わずか42%。ギニア東南部にある森林地帯では、その数値が20%を上回ることはありません。汚れた水は命を奪うことさえあり、最初に犠牲者になるのはいつも子どもたちです。この問題を解決するために、ユニセフはこの地域で井戸を掘り始めています。

ファッソー・コロモー(10歳)にとっての「魔法」

 この数日間、森林地帯にあるこの小さな村は興奮に包まれています。月曜日の夜、隣村の村長がやってきて、ユニセフの井戸建設のチームがやってきたことを伝えたのです。ユニセフ・ギニア事務所と英国国際開発省が、ファッソーのいる村など15村で20の井戸を掘り始めました。掘る場所は、学校や保健所など、コミュニティの中心近くに決められました。設置は中国の開発会社(CGC)が行い、2月半ばにはじめられ、3月中には完了します。

 このニュースは、クパガラエの村にすぐ広まりました。 火曜日の朝早く、村民全員がスタッフや作業に使用する機械を迎え入れました。この村で生まれ育った10歳のファッソー・コロモーが、その時のことを話してくれました。「ぼくときょうだいたちは何がおきてるのか見に行ったんだ。機械を見たくて、みんなで押し合いになったよ。ぼく、今までにこんなにすごいこと、見たことなかったんだ。機械は大きい音を立ててたよ。ぼくたちは、それをずっと見てたんだ。それで、水があふれ出た時は、魔法みたいだった」

 井戸のおかげで、クパガラエの住民たちは、ついに飲み水を手に入れました。彼らはこれまで病原菌を含んだ水を飲まなくてはならなかったのです。「ぼくらのきょうだいは5人だけれど・・・」と、小さい男の子が話し出しました。そして、突然暗い表情を浮かべて続けました。「去年、赤ちゃんが死んだんだ。先生は水のせいだって教えてくれた」

 悲しいことに汚染された水が原因の病気で弟や妹が死んでしまうことは、ファッソーの村ではよく起こりうることなのです。ギニアでは、5人に1人の子どもが5歳を迎える前に命を失っています。赤痢性の下痢は、子どもの死亡の大きな原因となっています。ユニセフ・ギニア事務所は、数年以内に、衛生状態が改善されることと、汚染された水によって命を落とす人たちを大幅に減らすことを目指しています。

 「弟がいるんだ」ファッソーは笑顔で言います。「弟は3カ月。かわいい赤ちゃんだよ!お医者さんは、赤ちゃんには井戸の水を飲ませなさいと教えてくれた。もし井戸がなかったら、毎週お母さんは隣町のソウロータまで行って、2缶分の水をくんでこなきゃならない。そこは遠くて、歩いていくのは大変なんだ。缶は重いし、一日中かかってしまう。今では、ぼくたちは学校のそばで水をくめばいいんだ。良い水で得をしたのは、ぼくの弟だけじゃないんだね」

 また、ユニセフは、人々がトイレの使い方について情報や教育を受けられるようにし、給水所委員会を村に作りました。5人の委員のうち2〜3人は女性です。委員会には、井戸の使い方や、管理・維持方法が伝えられます。彼らは衛生を守るための基礎的な方法をほかの村の住人にも伝え、井戸の水を家に持ち帰った後も安全に保てるようにしています。

 コレラ、腸チフス、はしかのような伝染病は、安全な水やトイレが不足している不衛生な状況では、瞬時に広がります。ギニアでは、農村人口のうちトイレを使っているのは5%未満です。ユニセフは2003年、ギニアに100カ所の公衆トイレ(このうち60%は森林地帯)を設置し、そして2500カ所の家庭用トイレ(このうち400カ所は森林地帯)を設置しました。しかし、こうした施設も農村人口の需要には見合っておらず、ギニアの森林地帯や他のどの場所においても、より多くの投資が必要です。

 ファッソーはこの地域では典型的な農家の子ですが、彼は違う道を歩みたいと望んでいます。「ぼくは今5年生。学校で勉強することは好きだよ」彼は、完璧なフランス語で言います。「大きくなったら、家族を助けられる仕事がしたいんだ」どんなこと?という質問に、ファッソーは自信たっぷりに答えます。「ぼくはお医者さんになりたい。いろんな人を助けたいんだ。病気はまだたくさんあるからね」

 ギニアの特に森林地帯では、ここ数年間、主にリべリアから大勢の難民が流入し、多くの難民キャンプが村の近くに建てられています。このような難民キャンプの中には、かなり生活基盤が整備されてきたところもあります。地元の人々は難民の流入に脅威を感じています。ここでは、基本的なニーズの多くがまだ満たされていないからです。ユニセフ・ギニア事務所は地域住民のために、必要不可欠なサービスが改善されるよう、この地域の中心にあるムゼレコレにある事務所から活動をしています。

コラタ村の生徒、ルイーズの話

 ルイーズはかわいらしい目を輝かせています。この小さな女の子は、2年生を担任するサロモー先生のクラスの優等生です。

 昨日から授業は少しだけ中断しています。この村に大きな変化をもたらす井戸を堀りに、ユニセフが到着したのです。井戸ができたおかげで、コラタ村に住む家族はついに安全な水を手に入れることができたのです。
 「トラックがやってくるのが見えたとき、みんなで大声を上げて喜んだわ!私たちは、その話で持ちきりになったの」ルイーズは大きな笑顔を浮かべて、ちゃんと説明してくれました。「授業中も先生の話を聞けなかったの。だって、私は学校に来る途中で見たあの大きな機械のことばかり考えていたから。上級生が教えてくれた通り、あの機械は、井戸を掘って、この村の人に飲み水をくれるんだって」

 先生は、子どもたちの熱意に押され、仕事を手伝えるように、早めに帰ってよいことにしました。井戸堀りの現場では、ルイーズが他の村の子どもたちにまじって、もう何時間もそこにいます。「友達と一緒に、午前中ずっと働いている人たちや大きな機械を見ていたの。すると大きな音がして、突然水があふれ出したの。みんなは、すごい!って拍手をしたわ。ぜったいにわすれられないと思う」

 ルイーズはきょうだいたちと、どうやって一日に3回、4回と水をくみに行っていたかを、くわしく話してくれました。「夕方学校からもどったら、弟や妹たちと水のある場所へ行くの。姉さんが水をバケツでくみ上げて、一番小さい妹の頭にのせるの。私たちが行く井戸は湿地のそばにあって、乾季には干上がってしまうから、そのときにはもっと遠くまで歩いて行かなければならないの。1時間か、それ以上時間をかかることもあったわ。」

 いったん井戸ができれば、女の子達はもう水をくみに長い距離を歩く必要はなくなります。さらに良いことに、水は病原菌におかされていない上、乾季に干上がってしまうこともないのです。しかし、ルイーズには、もうひとつ問題があるようです。「家族のなかで学校に通っているのは、私ひとり。姉さんが、私の学費を払ってくれてるの。うちには、子どもたち全員を学校に行かせるお金はないのよ。母さんは、きょうだいに家事を手伝ってもらいたいと思っているの」

 ルイーズのきょうだいは学校に通ったことがありません。これは、ギニアでは珍しいことではありません。52%の女の子たちが学校に入学しますが、。その3分の1は小学校の卒業を迎える前に退学してしまいます。女の子が学校に行くことに対する意識の低さのほかに、施設が整っていないことや教師が十分でないことも障害となっています。その上、女の子に学校に行くための時間がどれほど残っているでしょう?一日に3回も水くみに行くことを置いても、家事をし、子どもたちの面倒も見なくてはならないのですから。

 ユニセフは女の子がみんな学校に戻って、自分の持つ可能性を伸ばしていくことができるよう、活動を続けています。

 小さなルイーズの夢は大臣になること。ルイーズは、自信を持ってこう言います。「きょうだいたちも私と一緒に学校へ行けるようになると思うわ」

クバガラエ/ギニア(UNICEF)
2004年3月26日
Valerie Lontie

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