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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ケニア:難民キャンプを中心にポリオの感染が拡大。
予防接種キャンペーンがかつてない急務に。

【2013年9月5日 ケニア発】

ポリオ感染が相次ぐケニアのダダーブ難民キャンプ。ソマリアの方々が暮らすキャンプには、ポリオの予防接種を受けたことがない人たちが多くおり、周辺国を含め、ポリオの感染拡大の恐れが高まっています。(動画・英語)。

母親のひざに座っている7ヶ月のファトゥマちゃんは、遊ぶのが大好きです。やって来る人を興味津々のまなざしでみています。しかし、ファトゥマちゃんは歩けません。小さな両足は、外側にほぼ直角に曲がり、動かすこともできないのです。

「ある晩、ファトゥマは熱を出し、嘔吐もしました」ファトゥマちゃんの母親マド・ハッサンさんはふりかえります。「診療所へ行くと、医師がハガデラにある大きな病院に娘を連れていきました。病院に着くと麻痺を起こし、医師が排泄物を確認し、娘がポリオに感染していると言われました」 

■難民キャンプでのポリオ発症

© UNICEF video
ポリオの感染が拡大し、ダダーブ難民キャンプに身を寄せる人々への予防接種が実施されています。子どももおとなもすべての人々が対象となっています。

ファトゥマちゃんは、5月以降、ケニアで確認された初のポリオ感染者となりました。ソマリアから逃れてきたファトゥマちゃん一家は、現在、ケニア北東部にあるダダーブ難民キャンプで暮らしています。今年、ケニアで報告されているポリオ感染13ケースのうち、ほとんどがこのキャンプで発生しています。

「娘に治療をうけさせたいです。そして、今よりよい生活環境と清潔な水、衛生環境が必要です」と、心配の面持ちでマド・ハッサンさんは語ります。

■ポリオの発生を防ぐには

ケニアとその周辺国では、ここ数年ポリオの感染はありませんでした。今年に入り、ソマリアで感染が報告されると、続いてケニア、その後エチオピアと続きました。現在、この3カ国では140以上の感染が報告されており、子どもだけでなくおとなにも感染が拡大しています。ダダーブ難民キャンプで暮らす19歳のアウィル君もポリオに感染したひとりで、これまで予防接種を受けたことがありませんでした。

ケニアでのポリオ感染を収束させるために、予防接種キャンペーンが国内で実施され、今後も実施拡大が予定されています。相次ぐ感染が確認されているダダーブ難民キャンプ内や周辺では、予防接種が集中的に実施され、子どももおとなも全員が予防接種を受けています。アウィル君のように、これまで予防接種を受けたことがない人々がいる可能性があり、ウィルスへの免疫のない人たちはウィルスに感染しやすく、キャンプ全体の免疫を弱める恐れがあります。

予防接種チーム監督者のワルダ・ラシッド氏は、活動を始めた当初、コミュニティから予防接種への理解が得られず、いくつもの困難に直面したといいます。「年をとっているから予防接種をうけられない、と思っている人もいます。しかし、予防接種キャンペーンの実施回数を重ね、我々とダダーブFMラジオ局の啓発活動を通して、予防接種への理解が深まりました」と、続けました。

■キャンペーン成功の鍵:保健員の草の根活動

© UNICEF video
予防接種チーム監督者のワルダ・ラシッド氏。保健員は、一軒ずつ家を訪ね、すべての子どもたちが予防接種を受けるようにします.。

予防接種キャンペーン成功の背景には、いくつもの取り組みがあります。最も大きな役割を担うのは、ワルダ氏のような保健員です。一軒ずつ家を訪ね、ひとりの子どもも取り残すことなく、すべての子どもたちが予防接種を受けられるように働きかけます。また、コミュニティの協力や参加、パートナーの支援も重要です。イスラム教の導師であるイマム・アブディノール・モハメッド氏は、ダダーブFMラジオ局のスタジオで、世界保健機関(WHO)と国連難民機関(UN REFUGEE AGENCY)とともにポリオについて議論し、生放送中にリスナーの質問に答えています。

「宗教指導者として、コミュニティの人々に、何が正しくて何が間違っているかを語るのが、私の役割です。ポリオに関する正しい情報を伝え、予防接種を受けることを伝えるのも、私の役割なのです」と、イマム市は述べました。

■周辺国への感染拡大リスクも

ポリオの発症を防ぐには、ケニア単独での取り組みは不十分です。ポリオの感染力は強く、は急速に拡大するため、周辺国のジブチ、エリトリア、南スーダン、ウガンダ、イエメンでも、感染のリスクは高まっています。
ソマリアでは、長期にわたる内戦で予防接種を受けられなかった子どもたちが大勢おり、この地域におけるポリオ感染の大きなリスクとなっています。ポリオの発生が続くこの地域での予防接種の重要性がさらに高まっています。

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