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日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

レソト:最も弱い立場の子どもたちのために

【2012年1月18日 レソト発】

© UNICEF video
レソトのマトシェング村で祖母のマンフォ・トゥマネさんと一緒に座る女の子。母親は10年前に亡くなった。

レソトにあるマトシェング村は、かつては、広い大地と豊富な作物、そして土地を耕す多くの人で溢れていたと、女性の長老のマンフォ・トゥマネさんは、その当時を思い出して話してくれました。「昔は、高齢者から子どもまでが豊かに暮らす村だったんです。でも、いまはもう見る影もありません。」

現在、トゥマネさんは、壊れかけた二間の家で、冬の寒さに耐え忍びながら、7人の孫と身を寄せ合って暮らしています。トゥマネさんは、高齢のために土地を耕すことができません。そればかりか、この家には、雨漏りしている屋根を直してくれる人も、ましてや、この大家族を支えてくれるような人は1人もいません。

「この年になっても、まだこんなに多くの幼い子どもたちの世話をすることになるなんて、夢にも思いませんでした。」(トゥマネさん)

子どもたちの面倒をみるために必要な資金は、「レソト子ども基金プログラム」と呼ばれる現金支給プログラムから得ています。3ヵ月に1度支給される360 ロチ(maloti;約44米ドル)が、トゥマネさんの唯一の収入源です。

このプログラムは、ユニセフの技術的支援と欧州連合の資金協力を得て、レソト政府が進めている社会擁護施策の一環として実施されています。レソトの5つの地域に暮らす約1万世帯が、このプログラムの恩恵を受けています。

社会的擁護の仕組みづくり
© UNICEF video
レソトのマトシェング村のほこりっぽい道を歩く子どもたち。

小国レソトの総人口は200万人ほど。しかし、国民のHIV感染率は23%で、世界で3番目に高い水準です。HIV/エイズは、社会的、経済的な悲劇を引き起こします。子どもたちから親を奪い、国から働き手を奪うのです。HIV/エイズにより孤児となった子どもの割合は全体の13%。レソトは、低迷する経済に困窮しています。

この社会的擁護の取り組みは、HIV/エイズの影響を受けている弱い立場の子どもたちのための支援サービスの構築を含む国の社会的な安全網(セーフティーネット)を構築するために、2007年に始められました。この取り組みは、約6万人の子どもたちに、現金支給やソーシャルワーカーの定期的な訪問等の物理的・心理的両面での具体的な支援を提供することを目的にしています。

「この国には、HIVとエイズに関連する非常に大きな課題が山積しています。人口のほぼ4人に1人が感染しているのですから。」「社会的擁護の仕組みづくりへの支援を通じて、この大きな課題を解決していくことは、欧州連合にとっても意義のある重要なことです。これまでのところ、非常に大きな前進を遂げています。」 欧州連合のハンス・ドゥユンホウウェル レソト駐在大使は、こう話しました。

「現金支給プログラムは、子どもたちの福祉向上のための他の同様に重要な取り組みを補完するものです。つまり、このプログラムによって、子どもたちは、物理的な支援と心理社会的な支援の両方を受けられるのです。最も弱い立場の子どもたちにとって、こうした包括的な支援は、非常に大きな意味を持っているのです。」 地元自治体で福祉の仕事に携るリネオ・レフォトさんは、こう語りました。

住民参加が鍵

住民参加が、この社会的擁護支援の成否を左右します。この施策の支援を受け、村民で構成される支援委員会が、どの子どもを支援対象とするかを決定し、支給されたお金の用途を監視。また、村人たちは、子どもへの虐待を防ぐ方法や、子どもたちを守るためにするべきことをお互いに教え合うのです。

「定期的に村の家庭を一軒一軒訪問しています。孤児がいる家庭や、子どもたちの現金支給プログラムに参加している家庭を回っているのです。それぞれの家庭が、現金を受け取った後、そのお金を、子どもたちの最善の利益や子どもたちの安全を守るために利用しているのかを確かめています。」地域のまとめ役のアグネス・レエケさんはこう話しました。

また、このプログラムによって、医療サービスや教育を受ける、最も厳しい立場の子どもたちの数も増加。就学前教育への就学率を高めるため、早期幼児教育への奨学金や、制服を用意できない子どもたちに制服が無料で提供された例もあります。

© UNICEF video
マンフォ・トゥマネさんと孫たち。

トゥマネさんと孫たちも、この支援から大きな恩恵を受けています。「この土地を離れて生きていくことはできません。ですから、頂いたご支援、特にお金と制服が無かったら、子どもたちを学校に通わせ続けることはできませんでした。」

トゥマネさんの孫のテェラング・ティペちゃんは、制服が配布されたおかげで、学校では、家で抱えている様々な問題をごまかすことができると話します。「制服を着ていれば、他の子と同じに見えるでしょ。」(テェラングちゃん)

また、このプログラムでは、HIV感染率の高い地域でHIV/エイズを防ぐための非常に重要な情報を、幼い子どもたちに確実に伝える取り組みも行われています。耳の不自由なタカネ・トセオリちゃんは、手話で次のように説明します。「聞こえませんので、家でも学校でもHIV/エイズについての情報は得られませんでした。でも今は、HIVをどのように防ぐのか知っています。」

住民の参加によって動いているこのプログラムは、レソトの既存のサービスや政策、法律に支えられています。例えば、住民参加型で実施されている心理社会的支援の研修や心のケア支援活動は、最近成立した「子どもの保護・福祉法」に基づいて実施されています。また、最も弱い立場の子どもたちへの制服の提供は、レソト政府の初等教育の無償化政策の具体化を進める施策の一つです。

「非常に大きな困難に直面している中で、多くの国民や地域のみなさん、そして政府が力を合わせて取り組まれ続けていること。そして、お互いに支え合い、子どもたちをはじめとする支援を必要としている人々を守るために取り組まれている姿に、勇気付けられています。」ユニセフ・レソト事務所のアハメド・メーガン代表はこう話しています。

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