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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

読み書きで貧困の悪循環とたたかう母親たち

 娘が10歳になった日、マリエタは自分の10歳の誕生日を苦い記憶とともに思い出しました。20年以上も前のその日には、痛ましい思い出があります。彼女は両親に学校をやめさせられたのです。その結果、マリエタは弱い立場に立たされました。旧ユーゴスラビア・マケドニア共和国では多くの女性たちが同じ状況にありました。
 「お店の人がウソをつくのです」彼女は語ります。「ときどきおつりをごまかされても、私にはわかりませんでした。恥ずかしくて、たずねることもできませんでした」「こうした女性の多くは家庭を切り盛りする立場にありながら、読み書きや計算ができません」ユニセフ・スコピエ事務所の教育担当官、エレーナ・ミシクが説明します。「請求書が理解できないので、支払うことができませんし、子どもの宿題を手伝うこともできません。女性たちは、たいていの場合、母親と子どもだけで暮らしています。夫がよその国に出稼ぎに出ていて、めったに帰国しないためです」

新たなる出発

 しかし、マリエタのような女性たちに、再びチャンスが訪れました。テトヴォ市の上の丘、アルバニア系少数民族の村には4500人の住人がいますが、その村のマリエタと5人の女性は、3カ月前にユニセフの女性識字プログラムに参加したのです。

 ユニセフは、この国の多くの母親が、なぜ幼い子どものケアや発達向上に不可欠な情報を活用しないのかその理由を調べた結果、識字プログラムの必要性を認識しました。コミュニティを基盤にした乳幼児ケアプロジェクトの一環で、全国的に各家庭に配布された資料を受け取った多くの母親たちが、文字を読むことができないこと、それなのに「読み書きができない」とレッテルをはられることを恐れて、それを認めることができずにいることがわかりました。

 女性識字プログラムは、この状況を改善するために立ち上げられました。13のコミュニティの女性・少女向けにカリキュラムが開発され、25人の地域スタッフが読み書きの指導者として訓練を受けました。指導者たちは現在1,250名ほどの成人女性の指導にあたっています。

 指導者は4ヶ月間にわたり、週2回、女性たちのもとを訪ね、基本的な読み書きと計算を教えます。授業は学習者の自宅で行われ、1度に教わるのは、1人か、多くても2人です。

実用的で個人的なエンパワーメント

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 「とても誇らしい気持ちです」マリエタは顔を輝かせて言いました。「一番誇らしい気持ちになったのは、幼い娘が私から最初の字を習ったときでした」学んだ人たちは、貴重な能力を身に付けただけでなく、信じられないほどの誇りとエンパワーメントを感じています。 マリエタの義妹ドリータも、プログラムに参加しています。「娘は6歳で、そろそろ1年生にあがります」ドリータは言います。「娘が字を習うのを手伝いたいし、いずれは宿題も手伝ってやりたいです」

 ドリータは、学習障害のある13歳の娘の手助けもしたいと願っています。「娘はいつも手にペンを握っています」ドリータは語ります。「学校では娘を受け入れてくれないので、私が字を教えてやることができたらと願っています」

 

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 現在、教育を受ける機会を失われたために、多くの家族が貧困の悪循環に苦しんでいます。マケドニアの子どもたちのおよそ20%は、8年生までしか学業を続けることができません。けれども、マリエタのような親たちが、この悪循環を断ち切ろうとしています。

 「私には10歳の娘がいます」マリエタは語ります。「その子も、私のほかの子どもたちも、絶対に学校をやめさせるつもりはありません。両親が私に学校をやめさせたのは大きな間違いでした。同じ過ちは絶対に繰り返しません」

*登場人物の名前は仮名です。

旧ユーゴスラビアマケドニア共和国、ドルノ・パルシステ
2002年7月9日(ユニセフ)、ターニャ・アコーネ

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