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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

やむを得ぬ労働と学校を両立
<フィリピン>


 私たちのバスがその小学校に着いたとたん、パチパチ、パチパチとすさまじい音がした。校門や木の枝に垂らした数千の爆竹が踊り、はねていた。フィリピン風の陽気でお茶目な歓迎の仕方である。

ここはフィリピンのセブ本島の東隣にある小さな島マクタン島。日本からの観光客は大半が本島ではなくこの島に滞在するという。華やかな観光ビジネスの見えにくいところに貧困があった。

この島の農家の多くが爆竹作りを副業としているが、従来はやはり大人に交じって子どもたちが大勢この危険な作業を手伝わされていた。その結果、子どもがけがをしたり、病気になったりしたが、最大の問題は、そうした子どもたちが小学校をやめてしまったことだった。

先生はもちろん家庭訪問をして子どもを学校にやるように、と親に説得したが、低賃金とはいえ、子どもの労賃は貧しい家庭の大切な収入源であるので、なかなか効果が上がらなかった。一時的には復学してもまたやめてしまう例も多かった。

そこで小学校は発想を転換して、爆竹作りをしなければならない子どもたちは午前中、普通通り授業を受けて、ほかの生徒が下校した午後、教室で先生の監督のもとに、紙を巻いて筒を作るといった、直接黒色火薬に触れない労働に就くことにした。また賃金も適正なレベルに引き上げられた。

ユニセフは、市当局と連携してそうした貧しい子どもたちの母親に食品加工技術やせっけん作りといった職業訓練を施した。一方的に児童労働を禁止しても、貧困のゆえに子どもたちはもっと危険で搾取的な仕事に就くことになり、学校に行く機会はますます閉ざされてしまう。

私たちはマクタン島のババ小学校で、柔軟な対応により、やむを得ず働き続けなければならない子どもたちも学校に通えることを知ったのだった。

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