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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2001年9月10日>

子どもにやさしい村<その2>
<フィリピン>


ジロービア村の村長、サンディ・トートー「キャプテンSです。こちらは、ラジオ・ジロービア、子どもにやさしいラジオ局です」32歳になるジロービア村の村長サンディの語り口は、とても陽気です。村にラジオ局と住民がラジオを聴くことができる設備ができたことについて、今の気分を聞かれたサンディは、「とても嬉しいよ」とほほえみながら応えました。

2000年11月、20ワットの送信機がジロービア村に取り付けられました。子どものための第5次国家計画に基づいて、ユニセフが支援するジロービア村の主要プロジェクト、コミュニティ・ラジオによる住民への広報システム(ComPAS)は、子どもの権利についてのメッセージをより多くの人たちに伝えるための1つの手段と言えます。

マニラから来た技術者が放送アンテナを取り付ける一方で、村の職員たちは、ラジオの番組計画を仕上げるためにオフィスにこもって相談しています。地元のニュースや農業・漁業に関する番組、市場取引や地方や国の政治に関する番組、娯楽番組などが現在計画されています。

「私たちの番組はすべて『子どもにやさしい環境づくり運動』を進めることを目的としているのですよ」とサンディは語ります。

ジロービアのラジオ局は、村のメディア委員会と協力して、子どもの権利や乳幼児期の子どものケアや発達、子どもの病気全般の管理、食事におけるヨード添加塩の大切さ、授乳、子どもにやさしい学校の設立など、地元に合ったメッセージを伝えるための番組を作成しています。

サンディは、このラジオ局が正式な地方放送局となるにはまだやらなければならないことがあると感じています。まず、ジロービア村は、フィリピン電気通信会社(NTC)からラジオ局の営業許可を受けなければいけません。「認可を受けるには多少時間がかかります」とサンディは少し顔をしかめて言います。それでも、ラジオ・ジロービア102FMによってジロービアの住民の生活がきっと変わるという希望をサンディが持っていることには変わりありません。

みんなをリードする子ども代表

ジロービア村の子ども代表、ビン・パスキート「私も、ラジオはきっとみんなの生活を変えると思います」と自信たっぷりに語るのは、ビネ・グレース・パスキートです。友だちからビンと呼ばれているこの12才の女の子は、ラジオ局の技術者からの合図と同時に、自分が担当する30分間の子ども向け番組を始めます。

ビンのかん高い声は、村をとりまく熱のこもった雰囲気によく合っています。ラジオブースは、あまり大きくはない建物の片隅にあります。そして、村の職員たちに混じってここに頼りないほど小さな女の子が1人いるのです。しかし、頼りないのは見かけだけで、実際にはビンは決して頼りない存在ではありません。

去年、ビンはジロービアの子ども代表に選ばれました。ビンが6年生として通っているジロービア小学校の友だちに言わせると、ビンは「小さいけれどすごい」女の子だそうです。実際、ラジオブースの中では、ビンは自分の背が高くなったように感じます。

「私たち子ども1人1人に名前を持つ権利があります」とビンはまず語り始めます。それから、子どもの基本的権利に関する活気にあふれた話し合いを放送するのです。番組の最後になると、ビンは番組を聴いている人たちに向かって「もし子どもがいなければ、どんな町や村も存在できません」と語りかけます。

将来は医者になることが夢であるビンは、自分の番組を学校から放送したいと思っています。「学校から放送できるなら、授業について話し合うことができます。宿題も放送中にします」。ビンは、理科の授業が大好きで、固体・液体・気体のことならいつまでも話し続けることができるくらいです。

もっと小さな子どもたちのために

幼稚園で授業をするジョイ・コララット39才のジョイ・コララットも、自分の村をとても愛している住民の1人です。ジロービア小学校で幼稚園の先生をしているジョイは、生き物について話をします。20人くらいいるくりくりとした瞳の5才と6才の子どもたちは、かえるの一生についてのジョイの生き生きとした話を一生懸命聞きます。

ジョイは、「ものごとは変わっていくものです」という言葉で授業を始めます。村のメディア委員会の一員でもあるジョイもまた、最近の村の変化を誇らしく思っています。それでも、村長と同じように、ジョイもまた村にはまだやるべきことがあると考えています。

ジョイの夢は、自分の受け持ちの子どもたちが全員、定期的に学校に来られるようになることです。ジョイは、6才のジョセリン・フランシスコについて話してくれました。ジョセリンは第8地区から通っているマノボ族の女の子ですが、家に食べる物がない日は幼稚園を休みます。ジョイが自分のクラスの父母会に対して、最低でも1週間に1度は学校で食事を提供する時間を設けるように働きかけているのはこのためです。

27才のベス・グンバンもジョイと同じ考え方を持っています。ベスは、村の保育園の先生です。保育園は、村のセンターや診療所からごく近くにあります。リソースセンターと呼ばれる建物にある保育園では、4才から6才までの子どものために毎日朝の集いが開かれます。ベスが担当する22人の子どものうち、女の子はたった4人です。

「保育園にもっと女の子が来るようになって欲しいと思っています。でも、特に遠くに住んでいる子どもの両親は、定期的に子どもを保育園に連れてくることができないのです」とベスは言っています。

基礎を築く

村長であるサンディも、自らが村長を務める間に成し遂げられてきたことを振り返りながら語る時は、熱が入ります。「みんなは政治は汚いものだと言いますが、私は断じてそうではないとここで宣言します」とサンディは言います。その証拠に、前回の選挙でサンディのライバルだった候補が今ではメディア委員会の委員長になっている、と続けます。

「私たちは、いつも子どもたちへの夢を念頭に置いて行動します。私たちは、子どもたちの未来を傷つけたくないのです。今できることに全力を尽くさなければいけません」とサンディは語ります。

地方政府とUNICEFの援助を受けて、ジロービアは「子どもにやさしい村」という名前に十分こたえてきました。サンディは、特に2000年に始まった水と衛生に関するプロジェクトを誇りに思っています。今では、住民のほとんどが飲み水を手に入れることができるようになりました。

サンディとその仲間は、子どもを守るための村の委員会(BCPC)でもしっかりと役割と責任を果たしています。サンディによれば、ほんの小さな子どもたちまでがジロービアの外での仕事に不法にかり出されていることが現在特に問題になっています。

サンディは、「今やっている取り組みはすべて継続していく必要があります」と言います。村を流れる川が最後には大きな川に流れ込むように、村民たちの努力も夢がいっぱいの豊かな未来に必ずつながっていることを、サンディは固く信じているのです。

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