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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<信濃毎日新聞2003年11月18日掲載>

人身売買を生む地方の貧困
<フィリピン>


ビヤサン・フォーラムの図書館にいるエレナ 15歳のエレナ(仮名)は街の雑踏を怖がる。人々は急ぎ足で歩き、通りは混雑しており、故郷のフィリピン南部のバリンガサグという町の舗装されてない道とは違う。故郷の生活は質素で、黄金色の田んぼの香りがした。しかし、「生活は苦しかった」エレナは言う。両親は農業で十分な収入を稼げず、エレナへのマニラでの仕事の紹介の話を聞くと、貧困を抜け出せると思い、あっせん業者から約1500円をもらった。

 船に乗って到着したマニラで、エレナがまず就いた仕事はお手伝い。しかし、料理ができないという理由で2週間で解雇された。2日後、ある警官の家でまたお手伝いとして働き始めたが、警官は彼女を性的に虐待。エレナが起きたことを仕事のあっせん業者に話すと、ただ「そしたらお客をとれ」というだけだった。ある晩、エレナは他の子どもと逃げ出し、その後、港湾警察にビサヤン・フォーラムへ連れてきてもらった。

 ビサヤン・フォーラムは、ユニセフから支援を受け、働くために地方から出てきた子どもを手助けするNGOである。セシリア・オエバンダ代表は「港が人身売買の中継地である」と指摘する。

 毎年マニラの北港だけでも400万人がマニラに押し寄せており、その中に占める子どもの数は年々増加。多くはお手伝い、工場、性労働など搾取的な労働に従事させられている。

 2000年8月には、子どもの人身売買の増加に対処するため、港に一時的な避難所を設立。子どもは通常3カ月滞在し、深く傷ついた心の傷を癒し、家族の元へ帰っていく。このほか、ユースキャンプ、署名運動、船上の被害者を見つけられるように港湾管理者や船舶会社に対しての子どもの人身売買に関する研修なども実施した。

 しかし、故郷に帰った子どもの中には、両親によってマニラに戻される子どももいる。セシリアは、貧困が原因だと考える。「政府は地方での教育に力を注ぐべきです。地方の所得向上事業の促進も重要です。そうすれば両親はマニラで子どもを働かせるのをやめると思います」

 現在、エレナはつらい過去を忘れて前進できるよう、カウンセリングを受けている。「マニラは全然良い所じゃない。早く家に帰りたい」

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