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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ルワンダ:児童養護施設にかわる場所


【2012年7月30日 ルワンダ発】

3年前、エスターちゃんが、初めてムポレ・ペファの児童養護施設に保護されとき、生まれてから数時間しか経過しておらず、裸で、へその緒からの血で血まみれになっていました。ある男性が野原で彼女を見つけたのです。近くの中学校の生徒が生んだのではないかと思われましたが、本当のところは誰にも分かりません。

現在、エスターちゃんには、家族がいます。このことは、過去の紛争の傷を癒し、結束力のある社会に向かって歩き出そうとするこの国の急激な変化を象徴しているようです。エスターちゃんは、ユニセフが支援しているある志高い計画の最前線にいます。その計画とは、ユニセフが、ルワンダに34ある全ての児童養護施設を閉鎖し、そこで生活している3,153人の孤児たちのために、新しい家庭を用意するというものです。

さらに、ルワンダ政府は、いかなる子どもも置き去りにされることがないよう、家族の結束を深めてほしいと非常に意欲的です。

施設の閉鎖
© UNICEF Video
ルワンダのキガリ郊外で、ギルバートさんとプロビデンス・ムウェネダタさん、二人の子どもともに暮らすエスターちゃん(3歳)。

エスターちゃんは、3ヵ月前にムポレ・ペファの養護施設を離れました。エスターちゃんの新しい親となった、ギルバートさんとプロビデンスさんのムウェネダタ夫妻は、エスターちゃんは、ほんの1,2日で、キガリ郊外にある広々とした家の新しい環境にも慣れたようだと話します。グロリアちゃん(6歳)とグラディスちゃん(3歳)という二人の姉もできました。

「初めて家に来た日は、ほとんどしゃべりませんでした」と、ムウェネダタさんは話しました。「次の日、新しい学校に彼女を連れて行ったら、エスターは、私たちが迎えに来るということが分かるまで、泣き続けました。私たちの間には、つながりができていたのです。私たちは、エスターを愛していますし、彼女も私たちを愛しています。娘たちも、新しい妹を迎える準備ができていました」

心理学者のビディビ・カラングワさんは、エスターちゃんとムウェネダタさん一家を結びつける手助けをしました。地元NGO「子どもたちの希望と家」で働くカラングワさんは、脱施設化についての国際的な経験もあります。そのNGOは、ユニセフやルワンダ政府、その他の子どもの権利に関わる団体のパートナーであり、子どものケアの改善と育児放棄の根絶を目指して活動しています。

ルワンダにある他の多くの児童養護施設と同じく、ムポレ・ペファ児童養護施設は、1994年の紛争と大虐殺の直後に開設されました。推定80万人が殺害され、数十万人の子どもが親を亡くしました。1979年には4つだった児童養護施設の数は、2011年には、34にまで増加したのです。

つい最近まで50人の子どもたちが暮らしていたムポレ・ペファ養護施設は、最初に閉鎖された児童養護施設のひとつです。「子どもたちの希望と家」のプログラム担当部長のエパファロディテ・ンサビマナさんは、この閉鎖は、財政的に意味があることだと話しました。「施設の子どもを一人養育するのに係る費用は、1日約3,000ルワンダ・フラン(約5米ドル)です。しかし、同じ費用で、6人の子どもをもつ標準的な家庭の生活費を賄うことができるのです」 。

家族を探す

児童国民会議のザイナ・ニィラムバカマ事務局長は、「多くの人々が、児童養護施設に子どもを預けるという選択肢以外はないのだと考えていました。しかし、この考えはもう終わりにしなければなりません。児童養護施設にいる子どもの70パーセントは、親が生きていたり、面倒を見ることのできる親戚がいるのです」と話しました。

イラコゼ・プルチェリエさんは、「子どもたちの希望と家」のスタッフが知らせてくれるまで、4歳になる孫のケイシアちゃんの存在を知りませんでした。

「ケイシアを初めて見たとき、とても心を動かされました」プルチェリエさんはこう話しました。ケイシアちゃんは、栄養不良の兆候を示し、足を引きずっていました。児童養護施設では資金不足のために提供することのできない特別な靴が必要だったのです。「とても嬉しかったですが、ケイシアの暮らしていた環境に動揺もしました。最初は、ケイシアが私に慣れるまで、施設で彼女と過ごす時間をもって欲しいと言われたのですが、初めて会った日の最後に、ケイシアは、私に帰らないでといったのです」

全体のシステムを変える

児童国民会議の専門家は、2年間かけて、国内全ての施設を閉鎖することを目指しています。ルワンダ政府は、ユニセフや他の児童福祉団体の支援を受けて、さらに多くのソーシャル・ワーカーや心理学者の研修を実施しています。この計画は、養育放棄されそうな子どもを認識し、拡大家族のいない子どものために、他の選択肢を用意する手助けをするネットワークを、各地域に構築するというものです。

「この活動へのコミットメントはすでにあります。首相でさえ、養子を迎えているのですから」「急いで(閉鎖して)ほしくはありません。子どもの居場所を確保し、子どもたちが家族と再会できるようにしたいのです」(ニィラムバカマ事務局長)

ユニセフ・ルワンダ事務所のノアラ・スキナー代表は、次のように話しました。「この取り組みは、‘脱施設化’で終わりではありません。強固なシステムを整え、今、そして将来にわたって養育放棄を防ぐ適切な照会メカニズムが機能するように、子どものケアシステム全体を注視しています」

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