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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2003年4月23日信濃毎日新聞>

108の村が約束「女の子にとって害となる慣習は廃止します!」
<セネガル>


伝統的なバサリの踊り。バサリの踊りや衣装は村によって少しずつ変わっている  セネガルの東南の山間にサレマタ村はあります。その村に2003年3月30日、何千人もの人びとが集まりました。ケドゥーグー(トンバクーンダ地域)の108の隣接する村々から来た代表者たちが、女性性器切除(FGM)と早婚の伝統に別れを告げる約束をここで行ったのです。

この歴史的な宣言を見に来た来訪者たちは、この式典に参加した各民族グループの音楽、ダンスの歓迎を受けました。フラーニ、マンディンカ、バサリ、ベディク、コニアジの各民族です。初めてこの地域を訪れた人たちは、色とりどりの伝統的な衣装、踊り、楽器に魅了されました。

 サレマタのイマーム(イスラム教の導師)、エル・ハジ・アルファ・ウマル・サルは、この式典のために集まった人たちを歓迎・祝福し、この式典の意図をはっきりと述べました。それは、この地域の108村のメンバーたちが、自らの意思として、女性や女児の健康を考えて、残酷な慣習“FGMと早婚”をやめることを誓うことにしたのです。村々がこれを誓う前に、FGMを廃止するための法律がこの地域で施行されていたならば、刑務所はこの一帯の人たちで溢れかえっていたに違いありません。トスタン(地元の言葉ウォロフ語で「画期的前進」という意味のセネガルのNGO)がユニセフの支援を得て行っている基礎教育プロジェクトのおかげで、参加者たちはこれらの慣習がもたらす危険性について理解し、その知識を親類や近所の人たちと共有することができたのです、とイマームは説明しました。今、何世紀にもわたって続いてきた悪しき慣習を、威厳を持ってやめることができます。FGMと早婚は、イスラム教のもとでも、また他のどの宗教のもとでも、義務ではありません。イマームは強調し、女性と女児の健康を危険にさらす慣習は廃止してもいいのだと説明しました。

  元切除者だった女性。近隣の村の代表者たちと報道の人々に、なぜ自分がFGMをやめることにしたのかを説明した。ケドゥーグー郡は、何世紀にもわたってこの慣習を続けてきたために、FGMと早婚の割合が高い地域です。1999年当時は、とても多くの人びとがFGM廃止法そのものに反対していました。そこで、トスタンは、ユニセフとビル&メリンダ・ゲイツ基金、保健省の支援を受けて、トンバクーンダ地域の160の村々で、1999〜2002年まで、正規の教育以外の場所で、参加型の教育プログラムを、フラニ語とマンディンカ語で実施したのです。これらの講座は2言語を操れるケドゥーグー郡のファシリテーターによって、ベディク、バサリ、コニアジェ語に翻訳されて実施されました。

 村長、この地域の女性グループの長、サレマタのセネガル国会議員、農村委員長、地域委員会会長・・・みんなが力強い声明を読み上げ、人権を侵害し、女性や子どもに苦痛を与える慣習を廃止すべく、支援を約束しました。この人たちは、トスタン、ユニセフ、ゲイツ夫妻、セネガル政府に謝辞を述べ、社会的変革を静かに促し、生活条件の改善をもたらしてくれたことに謝意を表しました。また、特に、伝統的リーダー、宗教的リーダー、地元の当局者、あらゆる宗教(イスラム、カソリック、精霊信仰)を信じるすべての民族の女性や青年たちにも感謝を示しました。

宣言の前日、ダルエスサラーム村で、自分たちの村でどのようにして基本的人権の意識が広まったかを報道の人々に説明する村人。「みんな、安全な水が飲めて、家があり、衣服を着る権利があるんだ」 近くのダルエスサラーム村から来た参加者は、早婚による人権侵害やその危険性を劇で演じて見せました。学校に行っている子どもたち、サレマタの講座に出ている参加者の娘や息子たちは、FGMの問題点を絵にして見せてくれました。ほかにも、数人の女性たちが、人権ポスターに啓発されたことを報告しました。人間の威厳は尊重すべきものであること、どんなことがあっても、自分たちの権利を守るべきだというのが分かったと。

 地域のトスタン・プログラムに参加しているコミュニティは、予防接種率を大幅に上げることにも成功したと言います。ほかに、出産前検診を受けに、定期的に保健センターに来る妊産婦たちも増え、子どもたちの出生登録を初めて行ったり、女の子を学校に行かせるキャンペーンを実施したりしました。そのほかに、カーストや民族的な差別をやめることを公に宣言したりもしました。今年は、コミュニティの多くが識字プログラムや小さなプロジェクトを始めることにしています。

 FGMと早婚を廃止する公の宣言は、バサリの女性を筆頭に、各民族の女性あるいは女児が読み上げました。マスコミはこれを記録し、ビデオに撮り、今後はこれが国中に流れる予定になっています。

 ユニセフ・セネガル事務所のイアン・ホップウッド代表は、108の村人たちの勇気と自発性に拍手を送りました。コミュニティ全体が一丸となって平和な社会変革を可能にしたこと、また、行政、政治、伝統、宗教の各リーダーたちが支援を送ったことにも感謝を表しました。「みなさんが、引き続き、女の子の教育、妊産婦の死亡率の削減、マラリアとの闘いに果敢に取り組んでいくことを願っています」とホップウッド代表は述べました。

 ニネフェスチャの病院長グンバラ医師は、セネガルの大統領夫人、マダム・ヴィヴィアン・ワデ(海外訪問のために式典には出席できませんでした)を代表する形で、より良い生活のために村人たちがさらなる努力をすることを期待し、この歴史的な決断にはこれからも支援をしていく気構えだと述べました。

FGMと早婚廃止の決意は非常にはっきりとした力強いものでした。そのメッセージは、ポスターや歌などで広められた。 ほかの宣言同様、サレマタ宣言に参加しているコミュニティは、委員会を設置し、今回の約束が守られていくよう、活動を続けていくことにしました。

 現在、816のコミュニティが、トスタン基礎教育プログラムに参加した後で、FGMの廃止を宣言していますが、これは同プログラムを実施しているコミュニティの16%にあたります。これから数カ月の内に、カオラック、ジグインチョール、コルダ、トンバクーンダ地域にある、バンバラ、フラニ、ディオラ・フォグニの数百のコミュニティが、FGMと早婚の廃止を約束し、女性と女児の健康を改善することになっています。

ダカール、2003年4月7日
モリー・メルチン(トスタン)

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