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財団法人日本ユニセフ協会

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世界の子どもたち

<<2001年4月6日>>

HIV/AIDS対策に力を入れるスワジランド
<スワジランド>

南アフリカと国境を接する小さな内陸の国、スワジランド王国では、HIV/AIDSの問題が深刻化しています。推計では人口100万人のうちおよそ4分の1がHIVポジティブであり、感染率の高さは世界有数です。AIDSで親を失った子どもたちも3万5000人いると言われており、もともと長くはなかったスワジランドの平均余命は、ますます短くなっています。

ユニセフは子どもたちを取り巻く問題について、その背景にある根本的な原因を解決するべく世界各地でさまざまなプログラムを計画・実施しています。また、子どもたちの生命が危険にさらされる事態が突発的に起こると、「緊急支援」を要請されることもあります。

HIV/AIDSの問題は、スワジランドのユニセフ事務所にひとつのジレンマを突きつけています。ユニセフとしては、緊急事態として対応するべきなのか、それとも根本原因の解決に取りくむべきか?HIV/AIDSがアフリカ南部で爆発的に流行している背景には、家族制度の崩壊、貧困、病気、医療システムの行き詰まりといった要因に加えて、男女間の不平等が性的搾取を生みやすいという事情もあります。

感染をわざと広げる無謀な者も一部にいますが、患者の大多数は、自分の身を守る知識も力もない子どもや若い女性です。

スワジランドでは、妊婦のうちHIVポジティブの女性が占める割合は1992年に4%でしたが、1998年には33%近くまで増えています。こうした徴候があったにもかかわらず、ユニセフを含め世界全体はなかなか対策に動き出すことができませんでした。1999年、スワジランドの現状に世界の注目を集めるため、ユニセフの支援で総合的な調査が行なわれました。この調査は、親がHIVに感染して死んだため、孤児になった子どもの実情や、HIVが子どもの教育を受ける権利にどう影響しているかといったことが調べられました。

私は何より「急いで!」と叫びたい気持ちでした。スワジランドのスタッフも、事態の緊急性を認識して大変な仕事をこなしています。しかし、こうした緊急事態が、この先何十年も続きそうなのが現実です。ユニセフが2001〜2005年にスワジランドで実施する新規プログラムは、HIV/AIDSの悲劇に正面から取り組み、当面のことだけでなく、長期的な影響にも対処できるよう、強固な基盤を整えることに力を入れています。

現在、取り組まなければならない重要課題はいくつかあります。

若い人たちがHIVの蔓延を食い止められるように支援する。

孤児を増やさないために、HIVの母子感染を防ぎ、HIVポジティブの母親を支援する。

地域ぐるみですべての子どもに目を配り、孤児をはじめ弱い立場の子どもを見つけだし、物質面と精神面の両方でサポートできるようにする。

医療、教育、農業といった各分野の能力を強化し、病気と戦ううえで必要な情報とサービスを地域単位、世帯単位で提供する。

すべての地域と世帯に対応できるよう、政策立案や立法担当者が適切な政策を整え、資源を確保する手助けをする。 ユニセフの新しいプログラムでは、とくに若い人たちに重点を置いています。国王ムスワティIII世は今年の国会開会の辞で、「地域および国のプロジェクトへの若者の参加を促すとともに、若者が健全な活動に従事できるような基盤を整える」ことを呼びかけました。

ユニセフのプログラムのひとつに、「子どもの権利のためのコミュニティ・アクション」と名づけられた新しい活動があります。これは伝統的なリーダーシップや地域組織を後押しして、子どもや若者に目を配るシステム作りを進めるとともに、必要な指導や支援を提供するというものです。ここでは若者をただ「受益者」として扱うのではなく、計画を立て、自らも参加して貢献してもらうというアプローチを取っています。

このプロジェクトは、副総理府および地方行政当局と共同で推進されており、保健・社会福祉、教育、農業、経済計画・金融の政府担当者も参加しています。またワールド・ビジョン、セーブ・ザ・チルドレン、CARITAS、赤十字、イギリス国教会などのNGOも協力しています。

「子どもの権利のためのコミュニティ・アクション」プロジェクトは、すでにいくつかの地域でリーダーや若者との活動を開始しています。そこでは、若者を集めてトレーニングを行ない、自分たちの地域がこれまでどんな風にやってきたか、何を誇りにしているかを学ばせる「評価的質問」という手法を採用しています。まず、地域がとてもうまく機能していた「最高の瞬間」を決め、そうした過去の成功例をもとに、いま直面している課題に対して、自主的かつ持続可能な解決策を探っていきます。

(キャプション)「子どもの権利のためのコミュニティ・アクション」の説明を行ない、協力を求めるスワジランド副総理府のJabu Dlamini氏。「評価的質問」チームを率いて、Manzini地区、VelezizweniのNdwandwe II世の母親に話を聞いている。

スワジランドでは、孤児や老人の数が急増しています。地元地域だけでなく、国や世界全体が協力して、そうした人びとにケアを提供する必要があり、一刻の猶予も許されません。HIV/AIDSの蔓延は深刻で、大きな被害をもたらしていますが、そうした事態を冷ややかに見ることも、あるいは絶望することも許されないのです。スワジランドのユニセフが発信するのは、「希望のメッセージ」です。スワジランドは不滅です。アフリカもこの危機を乗り越えるでしょう。これからも人びとは毎日働いて、つつましい暮らしを営みながら、笑い、歌い、祈りを捧げ、必死に生きていくはずです。私たちの活動は、大陸の存続という大きい話ではなく、むしろそこで暮らす子どもたちや家族が日々生きていくためのものです。危機的状況がもたらす苦しみを、どうすればやわらげることができるでしょうか?八方塞がりの子どもたちの生活に、一筋の希望の光を与えるにはどうすればいいのでしょう?

「子どもの権利のためのコミュニティ・アクション」は、地域社会が困難に立ち向かう方法を模索する第一歩を踏み出したばかりですが、若者たちの反応には大いに勇気づけられています。私たちの夢と希望を端的に表しているのが、先週行なわれた「評価的質問」ワークショップの参加者、Moi Dlaminiの言葉でしょう。Dlaminiはスワジランド北部の郊外に住んでおり、総勢20名の少年少女が参加した1週間のトレーニングに加わりました。今後はコミュニティ評価を行なったあと、各自の地域で孤児や弱い立場の子どもを支援する活動に取りかかる予定です。DlaminiはユニセフおよびHhohho地域の行政担当者Ben Nsibandze氏に、トレーニングに参加できたことへの「感謝決議」を提案しました。

大切なのは、ここで学んだ知識です。これが大学ならば、修士号を取ったに等しいことです。

ここでみなさんに告白しますが、トレーニングに参加する前は、子どもたち、とくに孤児や立場の弱い子どもたちを助けることなど、少しも頭にありませんでした。

しかし地域に暮らす若者として、そうした子どもたちに手を差し伸べることは、私たちの責任だということがわかりました。

これからは、教わったことをそれぞれの地域に広め、親のいない子ども、立場の弱い子どもの生活を良くするために何ができるのか、考えていきたいと思います。

「忍耐があれば、目的地には半分着いたようなもの」ということわざがあります。私たちの活動が成功することを願っています。ユニセフが教えてくれたことを、固い決意と誠実な態度で、全力で実践することを約束します。

Dlaminiの感動的な言葉と、実際に若者と接した経験を考えると、私たちユニセフ関係者はスワジランド国王の知恵と配慮に感謝せざるを得ません。国王は国会開会の辞で、次のようにお話しになっています。

若者に対する政策は、それが王国内のいかなる分野に及ぶものであろうと、全国民が責任を負わねばならない。わが国の計画作りは、つねに若者を中心に据えるべきであり、それによって王国の安寧は保たれるのである。

ムババネ、2001年4月6日(UNICEF)

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