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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ユニセフ・東ティモール特別代表
浦元義照さん報告会レポート
<東ティモール>


ユニセフから学校に届いた学用品。教育への支援がますます重要となっている。  2002年8月27日(水)に,日本ユニセフ協会にて、ユニセフ・東ティモール特別代表浦元義照さんによる東ティモールに関する報告会、「破壊と殺戮の原因、人間と国の安全保障、東ティモールと子どもたち」が開かれました。
 2002年5月20日に独立を成し遂げた東ティモールの復興の現状、これからのニーズと子どもの生活改善において何を支援したらよいか、ということを中心に報告されました。

〈報告要旨〉

 人間と国の安全を保障するのに欠かせないことは、破壊と殺戮の直接の原因である紛争を終わらせ、平和構築を進め,紛争の背景にある貧困を撲滅していくことです。そのためには、中・長期的解決に重要な役割を担う、教育、保健衛生の改善が必要です。特に教育は、国造りを担う人材を養成していくということからも非常に重要になってきます。前シンガポール共和国首相であるリー・クァンユーが、“よい政府とは子どもが平和に学校で学べる”事と述べましたが、私はそれに両親と共に健康な生活を送ることができるような環境をつくることを加えて、これに向けた国づくりが非常に新しい国、東ティモールで現在行なわれています。

■復興の現状

   現在,東ティモールでは、警察、防衛軍、国会の樹立や電力の整備などでは素晴らしい成果をあげているものの、問題点も多数あります。

(1)経済状況と若者の不満
 経済が上向いてなく、最貧国であることが大きな問題になっています。特に青年層の80%は職がない状態であるなど、若者の不満がつのっています。若者は独立に多大に貢献したものの、政治の実権は海外から戻ってきた人々が握り、多くの若者は職も十分な食べ物もない状態です。

(2)行政面での問題
 政治指導者間の調整がうまくいっていないということがあります。大統領、首相が反目し合うなどの問題が起きていて指導力が発揮できていない状態です。地方行政も中央政府の再建が優先されたため、まだ充分に機能してません。

(3)社会サービスの普及
 教育や保健などの復興がまだまだ十分でなく、人材育成も遅れています。特に基礎教育においては、学校の数が不足し、教員の中で教師の資格を持っているのは約10%足らずと、子どもが教育を受けられる環境が整っていません。

(4)金融システム
 郵便局や銀行がなく、援助の際の資金流通において困難があります。

(5)言語の問題
 国としてのアイデンティティー形成において現在の指導者層が使うポルトガル語がテトン語と並び国語となり、若い層に普及しているインドネシア語を話す人々がいろいろな決定段階に参加できない面があります。

■再建のためのニーズ

(1)行政の改革‐地方レベルでも
 行政府が説明義務を果たしていくことが必要です。それに向け市民社会を育成し、知る権利を広め、情報公開を徹底させていくことです。そして、政府をうまく作動させるためにも地方レベルでの管理・実施体制を整えることが必要です。ユニセフがすすめているのは、住民による県知事の評価表提出で、これは行政の透明性を高め、説明責任の義務を果たすことに役立ちます。

(2)教育の改革
 教育においても責任の義務をはっきりさせることが必要です。問題が起こった際の校長の責任があいまいで、それを防ぐためにも、校長に権限、予算を与え責任義務を課すことです。またそれに伴ないPTAが重要になってきます。もっとPTAに権限、予算を与え、地域住民が積極的に学校に対し提言を行い、学校とPTAが同等になっていくようにする必要があります。また、基礎教育の普及を高め、子どもの就学率を上げるためにも幅広い広報活動を行ない、子どもの権利を広めていくことも必要となってきます。

(3)援助資金の流通
 銀行、郵便局がない状況で援助資金を現場に届けるために、村の学校で働く先生たちが形成している金庫ネットワークを利用し、それと同じシステムで学校への資金援助を行なっていくことを試みる必要性があります。

■子どもの状況改善に向け誰を支援していくか

(1)地域社会
 子どもの支援をするにあたっては、家族単位が最善ですが、全ての家族にというのは困難です。そこで、地域社会を基盤とした支援をし、問題を共有し地域住民が助け合う精神を育てていくことが重要です。

(2)女性
 女性の地位の向上も子どもの生活を改善するにあたって重要です。女性に1投資すれば、2、3の見返りがあると言われているほど、効果があります。

 このように東ティモールの国造りはまだたくさんの課題が残されているものの着実に前進しています。ユニセフは特に人間と国の安全保障に向け、基礎教育に力を入れています。基礎教育の内容充実のためにも、カリキュラム作成、教科書づくり、教員の訓練などの支援に積極的に取り組んでいます。なかでも学校のデータシステム作りを行ない、全国のネットワーク作りに貢献したことは、非常に成果がありました。ユニセフの初等教育支援に対する期待が更に高まっています。

〈浦元義照さんプロフィール〉
宮崎県出身。ハーバード大学大学院行政修士課程修了。1978年からユニセフに勤務。ミャンマー,スーダン,本部課長,インド等を経て、1995年のインドネシア事務所副代表。2001年から東ティモール特別代表。独立後の東ティモールを視野に入れて新しいプロジェクトなどに精力的に取り組んでいる。


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