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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

大洪水に落胆 心の力失わず
<ベトナム>


 車は大通りから畑の一本道に入り、赤い土ほこりを巻き上げて走る。途中、フォン川の岸辺にさしかかると、ベトナム女性連盟のファン・ティ・ランさんが言う。「昨年の大洪水で、ここまで川岸が崩れました。民家や家畜が流され、大変な被害でした」

到着したのはベトナム中部の古都フエ市から十数キロのトゥイ・バン村。ユニセフが「生存の知識」の普及と女性の収入向上プロジェクトを展開している村の一つである。村の貧しい女性グループによる学習会の見学が目的だ。

家々の間の小路を、頭上の庭木と足元の石に注意して歩いて行くと、夏休みの思い出の一片を再体験しているような、懐かしい気持ちになる。どの家の庭にも、小さな祠(ほこら)が建っている。聞くと、天と地の神を祭っているのだという。

訪問先の家の軒先で女性たちが車座になり、ミーティングを開始した。グループの活動は、出産・育児・衛生・保健などに関する勉強会や、生活向上を目指した、融資による生産を中心としている。ミーティングではクイズ形式による学習内容の復習、融資金の返済状況の確認などを行う。

融資活動は当初の回転資金のみユニセフが提供、後は女性グループが運営する仕組みで、メンバーは融資でヒヨコや子豚を購入して育て、売却して返済金や生活資金に当てる。返済率は100%に近いが、昨年の大洪水で家や苦労して育てた家畜を失い、返済が遅れている人もいるという。

帰り道、村の小学校で子どもたちに会った。肩を組んでふざけ合うガキ大将三人組み。誇らしげにノートを見せてくれる子。友だちの後ろに隠れてこちらをうかがう恥ずかしがり屋。体はきゃしゃだが、皆人懐こく、鈴を転がしたようによく笑う。一人が教えてくれた。「洪水の時、校舎の屋根まで水が来たよ」

ユニセフはベトナム女性連盟などと協力し、女性と子どもたちへの支援を実施しているが、何よりもベトナムは、惜しみなく働く教育熱心な大人たちと、お医者さんや学校の先生、サッカー選手になるなど、夢を抱いて熱心に勉強する子どもたちの国だ。大洪水に落胆させられても、自ら生活を良くしていこうとする心の力は失わない。

村を離れようと、車を再び走らせると、子どもたちは手を振りながら、どこまでも追いかけてくる。

ベトナムの天と地の神様にお願いしたい。「もう二度と大洪水を起こさないでください」と。

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