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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

水道がもたらす発展
<ベトナム>


ディエンが住むハタン村はハノイから南西に160キロ離れたところにあります。一番近くの小さな町からでも車で2時間半もかかります。曲がりくねってでこぼこした上り道を行くのは4WDの車でも大変。この小さな山村に住む360人の人々は米、トウモロコシ、果物、野菜などを育て、ブタを飼育して生活しています。

1996年12月にユニセフとベトナム政府の支援によって水道ができてからは、ハタンの人々は安全な水を簡単に手に入れることができいるようになりました。しかしそれまでは水を手に入れるのは大変な作業だったのです。

「昔は小川や泉から水をくんでくるのに毎日少なくとも2時間かけていたんですよ」。5人の子どもを持つヒエンは言います。「体を洗ったり洗濯をしたりするためには大きな丘をふたつ越えてまた別の泉に行っていました。でも、今ではその時間に夫の農作業を手伝ったり、家事をしたり、子どもたちと過ごすことができるんです」

水道ができる前、ヒエンの11歳の息子ラップもお母さんが水をくむのを手伝っていました。けれど、ラップが長い道のりを運べるのはせいぜい小さなバケツひとつ。あまりお母さんを助けることはできませんでした。「でも、今ではこんな大きなバケツを水道から台所まで運べるんだよ」。ラップは得意そうにバケツを運んでみせます。

水道ができてから、米やトウモロコシの収穫も増えました。以前は1年に1回しか収穫できませんでしたが、水道ができたおかげで今では1年に2回の収穫です。「いまでもよく育たない時はありますが、以前と比べれば食糧事情はずっとよくなりました」とラップのお父さんは話します。時には作物が余り、7キロほど離れたマーケットで売ったり、別の物と交換したりすることもできるようになりました。

子どもたちの健康状態も改善しました。水道ができてから、村の子どもたちが重度の下痢をおこす割合は70%も減少し、以前は大勢見受けられた皮膚炎をおこす子どもも、今ではずいぶん少なくなったといいます。

水道ができたころ、村の子どもたちが面白がって蛇口を開けたり閉めたりするので、大人たちは水道が壊れてしまうのではないかと心配していました。しかし、村の水道委員会のリーダーを務めるディエンは言います。「心配はいりません。壊れたって自分たちで修理できますから」。水槽やフィルター、セメントなど水道作りに必要な材料を提供し、作り方を指導したのはユニセフやベトナム政府ですが、実際に水道を作ったのは村の人々なのです。

ハタン村には最近読書室ができました。そこには給水システムから子どもの健康や栄養に至るまで、さまざまな事柄に関する資料が置いてあります。村のリーダーたちは、読書室に集まり、村の将来について話し合います。結婚して近くの村に引っ越す子どもたちのために、新しい給水システムを作る必要がある、ということから、子どもたちのために教室を増やす必要がある、ということまで話題はさまざまです。

水道がハタン村にもたらしたものは安全な水だけではありません。人々の自立や村の発展の種をも植え付けたのです。

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