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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

《2002年8月28日掲載》

コソボ紛争 精神的外傷に苦しむ
<ユーゴスラビア>

紛争の真の被害者はいつの時代も子どもや女性である。ユーゴスラビア連邦コソボ自治州。コソボのアルバニア系住民と、連邦のセルビア人との対立が激化、本年3月以降にコソボ周辺国・地域に非難した住民の数は一時80万人にものぼり、50万人以上の子どもが紛争の被害に遭ったと報告される。

暴力、殺人などの残虐行為、住み慣れた家を焼かれるなど激しい衝撃を受けた幼い子どもたち。信頼する家族、大好きなおもちゃを失った子どもの多くは、トラウマ(精神的外傷)に苦しんでいる。車の音におびえ泣き叫ぶ、軍服を着た男性を見ると体の震えが止まらなくなる、一日中泣きやまない子どももいる。

多くの難民が流入したコソボ周辺国・地域では、ユニセフの心理カウンセラーチームがトラウマに苦しむ子どもの支援活動を行っている。カウンセラーは早朝に難民キャンプを訪れると、まず3歳から10歳までの子どもを集め、グループを分けを行う。そこで子どもの健康状態の確認とトラウマレベルの診断を行い、最後にカウンセリングの一環として子どもが自由に遊び、絵を描き、話をする機会を設ける。

トラウマを負う子どもの多くが暴力的傾向、あるいは極度なうつ状態にある。ユニセフによるカウンセリングの場において、自分の体験、思いを自由に表現することで多くの子どもの症状は改善する。音に対する過剰反応、意味ない反復行動、会話の拒絶など特に症状が深刻な子どもには、一対一のカウンセリングを行う。こうした深刻なケースがこれまでに70例確認されている。

ある14歳のアルバニア系の女の子は、コソボから脱出するために家族とともに山の中を歩いていた際、偶然出会ったセルビア人の警察に呼び止められた。けん銃により脅迫をうけた彼女は、あまりの恐怖に全身まひの状態に陥ってしまう。家族による必死の介抱にもかかわらず、彼女は歩くことも話すこともできず、見かねた家族はユニセフのカウンセリングチームを訪ねた。カウンセラーは彼女に一対一の心理治療を施し、10日後ようやく彼女の口から言葉がもれ一人で歩けるようになった。

破壊された橋や建物の修復はすぐに可能である。傷ついた幼い子どもの心の修復にはどれほどの時間が必要なのだろうか。

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