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財団法人日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

フィリピンで緊急教育支援に携わって

氏名:伊藤 博
派遣先:フィリピン・マニラ事務所 (Education)
派遣期間:2009年8月〜12月

子どもたちにノート、ペン、クレヨン等の学用品の入った学校かばんを配る伊藤氏

2009年8月より12月までの4ヶ月間、ユニセフのフィリピンマニラ事務所の教育セクションでインターンをさせていただきました。ユニセフの教育セクションはChild Friendly School System(CFSS: 子どもに優しい学校制度)という、比較的恵まれない子どもたちや学校を対象としたプログラムの普及に力を入れており、私の役割はそのプログラムの評価分析をお手伝いすることでした。

赴任してしばらくはフィリピン教育省のデータ(退学率や標準テストなど)を用いて、CFSSに参加する学校の状況についてまとめる業務を行っていました。評価分析に関するレポートの原稿を書いたり、他の人の書いたレポートを校正したりと、大学院で学んだ事が活かせる機会もいただき、充実した毎日を過ごしていました。このような平穏な日々に暗雲が立ちこめたのは、歴史的台風16号がフィリピンのルソン島中央部を直撃した9月26日の事でした。

その日は土曜日で朝から雨が降っており、友人との予定もキャンセルになったのでオフィスに行く事にしました。午前10時頃に家を出た時には少し雨脚が早い程度だったのですが、午後3時過ぎに家路につく頃には腰付近まで水位が上昇し、水の流れも意外に早いため、通りは川のようになっていました。ただ、通りの人たちは悲壮感に乏しく、どこから持ってきたのかゴムボートで遊んだり、子どもたちはそのまま泳いだりと、フィリピンの人たちのたくましさに対して微笑ましく思いさえしたのです。日曜日には水も引き、何事もなかったかのようでした。被害のほとんどなかったマカティ市に住んでいた私には事の重大さが理解できていなかったのです。

月曜日にオフィスに行くと早速緊急会議が開かれました。その時点ですでに何百という人々の命が失われ、何百万という人々が被害にあっているという情報が伝えられていました。またその一週間後に、やはり大型台風の17号がルソン島北部を襲い、「皮肉にも16号の穴を17号が埋めた(つまり16号によって被害を免れた地域も17号によって大打撃を受けた)」と教育セクションのチーフは言っていました。台風17号の上陸から1週間位してチーフから「緊急教育援助の方も手伝ってほしい」と言われ、情報収集および状況レポートの作成を始めました。CFSSの時と異なり、緊急教育援助に関する基礎知識がまったくなく、またどの上司も自分の仕事に手一杯で、指示も正直よく分からないものが多かったため、私はミスを連発しました。意外に苦戦したのが被害人口の内訳の計算です。被害人口から就学人口や年齢別人口を割り出し、どの地域のどの人口に焦点を合わせてどのような援助をどの程度行うのかを計算するのですが、台風が来るたびに被害人口は変動し、またユニセフも予算などに合わせて援助対象とする人口の割合を変更するので、計算するのがどの時点における数字なのかを把握しておかなければなりません。ただそういった重要な決定が下される席にインターンの私がいるはずもなく、上司も激務のためにそういった情報を私に伝える余裕がありません。またそういった計算をレポートに書く際は、細かな援助の内容や予算配分なども臨機応変に素早くまとめなければいけないのですが、恥ずかしながら私は本当にどうしていいのか分からずコンピューターの前でうろたえてしまったこともありました。

インターンも残り1ヵ月という11月下旬頃から、またCFSSの業務を再開しました。毎年12月中旬にCFSSを総括する研修会があるためで、CFSSに参加する学校がどのような状況にあるのか、各地地域の教育省の担当者や学校関係者などに報告してもらい、ユニセフの持つデータと照らし合わせながら評価分析を行う、というものです。そのデータを計算してまとめるのが私の役割で、それなりに自信をもってやっていたつもりだったのですが、一部小学校と高校のデータを混合してしまうなど、最後まで上司に迷惑をかけてしまいました。

洪水後の避難センターの一室にて

フィリピンの人に関してですが、ラテンアメリカの人なつこさとアジアの礼儀正しさの両方を兼ね備えているという印象を受けました。オフィスの雰囲気も非常に良く働きやすい環境だと思います。現地で使用されるタガログ語に関しては話せるようになったとは言い難く、最後まで理解できない事の方が多かったですが、必要最低限の会話といくつかのジョークを言うだけでかなり親近感をもってくれたように感じました。

現在は米国の大学院で、論文の準備を進めています。今年の6月に学位を取得し、その後はユネスコにJPOとして派遣される予定になっています。どのような形になるかは分かりませんが、いつかまたフィリピンに戻り、インターンとは違った視点からユニセフの活動に携わりたいと考えています。

最後に私のインターンを全面的にサポートしていただいた日本ユニセフ協会及びその活動を支えてくださっている皆様方にお礼を申し上げたいと思います。JPOの面接である程度自信を持って話せたのは、ユニセフでインターンを経験していたからだと思います。本当にありがとうございました。

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