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財団法人日本ユニセフ協会



エチオピアを襲う干ばつ被害
モヤレ地区からの報告

【2006年2月20日、エチオピア・モヤレ地区発】

エチオピア南部モヤレ地区の粗造りな井戸の周りに100人以上のおとなと子どもたちが群がっています。ひとりの男性が折れた枝を持って、とりあえずみんなを制止し、混乱が起きるのを防いでいます。

男性が短く叫ぶような声を発すると、群集が前方へなだれ込んで井戸へバケツを放り込み、われ先にと水をくみ出しました。いま手に入れなければ、この先10日間は水にありつけない−他の人たちのことなど構ってはいられません。早くしなければ…。政府の給水車が運んできた水は、1〜2時間のうちにすべてなくなりました。

エチオピアに襲いかかる干ばつ被害

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給水タンクに水を補給する給水車。伝統水源が干上がってしまったため、多くのコミュニティが水を求めて道路脇の集落に移動している。

大規模な干ばつに襲われ、推定73万7,000人にのぼる人々が影響を受けているエチオピア。モヤレ地区はその中でももっとも深刻な被害を受けている地域です。干ばつ被害は国境を超え、「アフリカの角」一帯の800万人を超える人々に影響をおよぼしています。そのうちの120万人が5歳未満の子どもです。

エチオピアの低地帯を占めるオロミヤ地方。その中でも南部に位置するモヤレ地区は、ケニアとの国境沿いにあります。2期続けて雨季にほとんど雨が降らず、手堀りの井戸や地下貯水槽など従来から使っている水源はすでに干上がってしまいました。

ユニセフはすでに、オロミヤ地方からソマリ地方にまで広がっている干ばつ被災地域で活動を開始しています。手持ちの資金とノルウェー政府から早々に寄せられた資金をもとに、水の供給をはじめとする保健・栄養関連プログラムを進めています。しかし、やるべきことはまだまだたくさんあります。

「早い時期から干ばつの兆候があったので、迅速に対応し、早い時期から対応を始めることができました」とユニセフ・エチオピア事務所のビヨン・ルングヴィスト代表は語りました。「しかし、私たちの前には大きな課題が立ちはだかっています」

オロミヤ地方からソマリ地方一帯にわたる支援のために、ユニセフ・エチオピア事務所では現在、800万ドルを超える資金を必要としています。この資金は緊急用の給水車の調達や壊れたポンプの修復、新しい井戸の設置や150万人の子どもたちに対するはしかの予防接種のために使われます。2000年に同地域で大規模な干ばつが発生したとき、子どもの死因の20%以上がはしかに関連したものだったからです。

下痢も子どもたちの命を脅かす主要な脅威のひとつ。そのため、ユニセフでは衛生知識の普及にも力を入れています。「アフリカの角」一帯(エチオピエア、ケニア、ソマリア、ジブチを含む)の干ばつ被害支援のために、ユニセフでは総額1,600万米ドルにのぼる緊急支援アピールを出しています。

家畜も犠牲に

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エチオピア南部、オロミヤ地方のダイヤ地区。同地区は干ばつ被害がもっとも深刻な地域のひとつ。

モヤレから車を走らせること7時間以上。死火山の火口の端に、ゴラエという小さな集落があります。

「この集落では、毎日200頭から300頭の家畜が死ぬんだ」家畜を育てて生計を立てているヤタニ・アリさん(42歳)には、2人の子どもがいます。「こんなにひどい干ばつは5年ぶりです」9月から12月にかけて恵みの雨をもたらすはずの期間に雨が降らず、ヤタニさんはこれまでに100頭のヤギと牛5頭、ラクダ4頭を失いました。すでに全家畜の5分の1を失ってしまったのです。

近頃の心配ごとは、もっぱら4歳と生後3カ月の子ども2人の健康状態です。「問題はひとつではありません。ろくに食事も摂れていないんです。先週にはたくさんの子どもたちが下痢を起していました」

山の上にあるゴラエの集落から数キロ離れたところに、ケアというNGO団体が、家畜を育てて生計を立てている人々のために新しい井戸を建設しています。井戸が完成するまで、ヤタニさんは次の雨の季節−4月−を待つよりほかありません。「天の恵みだけが頼りなのです」