財団法人日本ユニセフ協会
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ケニア:懸念されるポリオの大発生

【2006年10月26日、ニューヨーク/ナイロビ発】

© UNICEF Kenya/2006/Cameron
ソマリアでの紛争悪化に伴い、6月以降ソマリアからケニアへ数千世帯の家族が移動しています。病気が大発生する危険性が高くなっています。

ソマリアでの紛争が深刻化し、隣国のケニアへ逃げる難民が増えています。国境沿いの難民キャンプで生活するある子どもはポリオと診断されました。これは、ケニアにおいてここ22年間で初の症例です。

「9月17日、3歳の女の子が母親にケニア北東部の難民キャンプにある病院に連れられてきました。女の子は麻痺で苦しんでいました。」ユニセフの広報担当官サラ・キャメロンは言います。「彼女の排泄物のサンプルがケニアと海外の機関に送られました。1カ月後、女の子はポリオにかかっていることがわかったのです。」

ケニア保健省とWHO(世界保健機構)、ユニセフからキャメロン氏を含む代表チームが女の子を訪問しました。調査の結果わかったのは、ウイルスはソマリアから来ており、8カ月間にわたって進行を続けたということでした。つまり、ウイルスがケニアに入ってから多くの時間がたっていたのです。

公衆衛生における緊急事態

© UNICEF Kenya/2006/Cameron
ケニア北東州の3歳の女の子は、ここ22年間ケニアで初めてのポリオと診断されました。

「これは、ケニアにポリオが再発する危険性が極めて高いということを意味します。」キャメロン氏は言います。「ポリオは、特に不衛生な環境では、簡単に感染します。難民もしくはケニアとソマリア国境を移動する移民によってもたらされたものなのかどうかはわかりません。しかし、ケニアの公衆衛生において、深刻な緊急事態であることは間違いありません。」

このような深刻な状況の中、病気にかかった女の子の予防接種カードによって、女の子は2005年にポリオの経口ワクチンを2回、2006年に4回摂取していることがわかりました。ほとんどの地域においてワクチンは非常に効果的ですが、子どもによっては、通常よりも多くのワクチンを摂取しないと免疫が得られないことがあります。

11月の最初の週に、ケニア政府とユニセフ、WHOは、ソマリア国境に近い5県の5歳未満の子ども全員にポリオの予防接種を行うキャンペーンを実施する予定です。ユニセフは緊急予防接種のための資金を呼びかけています。

「2回の全国予防接種デーを実施するためには、500万ドル(約6億円)が必要です。」キャメロン氏は言います。「予防接種は1月にも実施され、ケニアの550万人の子ども達が予防接種を受けられることを目標にしています。」

難民の子どもへ予防接種を

ダダーブにはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によって設置された難民キャンプが3つあります。1月以降、キャンプはソマリアから35,000人近くの新しい難民を受け入れています。そのほとんどは女性や子どもです。

キャンプでは162,000人以上が避難生活を送っており、1キャンプあたり2万人という推奨収容人数を5倍以上も超過しているにもかかわらず、人数は増えつづけています。難民の流入は、施設への負担となり、生活環境は深刻な状況です。保健ケア、安全な水、教育、そして子どもの保護が優先的なニーズとなっています。

ケニアに到着しキャンプへ移る前に、現在、難民は登録され、ポリオの予防接種を受けるプロセスをふみます。最近のポリオ症例よりも以前から、キャンプでは5歳未満児の緊急予防接種が実施されてきました。

「ポリオは極めて感染力の強い病気です。」キャメロン氏は言います。「とてもとても早く感染します。子どもたちの命を奪い、深刻な麻痺をひきおこします。これ以上感染が広がらないよう皆が力をあわせて取り組まなくてはなりません。」