財団法人日本ユニセフ協会



ケニア:国中を襲った暴動が沈静する中、
国内避難民10万人に緊急支援物資を急送

【2008年1月9日 ナイロビ発】

2007年末の大統領選挙に端を発し、ケニア全土に広がった暴動と混乱が沈静化する中、ユニセフは、ケニアで活動する他の国連機関・NGOなどと協力し、特に支援を緊急に要する状況におかれている国内避難民10万人あまりに、医薬品や医療資材、重度の栄養失調児の治療用栄養補助食品、シェルター用のビニールシート、毛布に加え、ポリバケツ、石鹸、簡易調理器具などの緊急支援物資を急送しています。

現地のユニセフ事務所は、「避難民の多くが、女性と子どもで占められています。

今回の暴動は、(政治的な問題以上に)貧困など、この国の人々が長年抱える様々な問題がその根底にあります」と伝えています。 今回の暴動が生んだ混乱と破壊の結果、ケニア国内で最大50万もの人々が長期的な支援を必要とする状況になるばかりか、スーダンやウガンダ、コンゴ民主共和国で展開される他の人道支援活動にも大きな影響を与えることが懸念されています。

また、暴動や混乱が特に激しかった地域の子どもたちは、その多くが慢性的な栄養不良状態に置かれていました。暴動発生以降、これまでに25万を超える人々が住む場所を追われ、子どもを含む死者も600人にのぼると推定されています。貧困など、以前から困難な状況にあった子どもたちや女性が、さらに危機に面しているのです。

【2007年1月8日 ナイロビ発】

ルシア・アグダさんは、1月6日、暴動と混乱から逃れるため、8人の子どもを連れ、ほとんど着のみ着のまま故郷のケリチョを離れました。

© Sara Cameron
ケニア西部ケリチョの避難民キャンプにたどり着いたルシア・アグダさんと子どもたち。

アグダさんは、ケニア西部ケリチョのおよそ2万人のケシイ族と呼ばれる少数民族の一人です。彼女が避難を決めたとき、他のケシイ族の人々はほとんど避難していました。

アグダさん一家は、13年以上一緒に生活し、一緒に働いてきた近所の人々からの暴力や脅迫に耐えた後、ケリチョ地域の行政府庁舎の正面の広場に作られた避難民キャンプにたどりついたのです。

アグダさんや子どもたちの経験は、今回ケニア各地で多くの人々が経験した悲劇です。ケニアを揺るがしている暴動と民族間の衝突により、子どもたちをはじめとする多くの人々に被害が及んでいます。

今のところ、アグダさんのような状況にある25万にものぼる避難民が、生まれ育った家庭や地域に早い時期に戻れる見通しは、残念ながら立っていません。人々は、長年住み慣れた場所から、警察の護衛のもと、恐怖や、暴力、脅迫の心配のないところへ避難しています。こうした人々は、自らは暮らしたことがない、先祖が遠い昔に暮らしていた地域に避難しているのです。

民族間の緊張が高まり衝突が続く中、人々は、より「歴史的民族的に関係の深い」安全を得られる場所に逃れることを強いられています。ケニアが、過去何十年にもわたって民族の融合に逆行する状況が生まれているのです。

生まれ育った場所を奪われ、恐怖と無秩序がはびこる状況は、いやおうなく子どもたちに深刻な被害を与えています。恐怖や生活の場所・住環境の変化などのすべてが、子どもたちを困難な状況に追いやっています。屋外での生活を強いられる彼らは、寒さや、食糧不足、不衛生な飲み水などの大きな危険にさらされています。

子どもたちはまた、性的虐待などの直接的な暴力の危険性にも晒されています。友人を失ったり、学校に通えなくなったり、家族が引き離されたりして、様々なトラウマにも直面しています。

ユニセフは、仮設の避難所を作るための資材や医薬品・医療資材、安全な飲料水やトイレ、教材やレクレーションキットなどを提供し、支援活動を展開しています。日常生活を奪われた子どもたちの心のケアの必要性も高まり、その準備も進めています。

ユニセフは、ケニアでの人道支援活動に当面必要な費用US$5,104,300(約5億5500万円)の支援を、国際社会に求めています。