財団法人日本ユニセフ協会



約400,000人の子どもたちが重度の急性栄養不良を患う可能性
治療可能な病気に取り組む

【2010年5月28日 ニジェール発】

© UNICEF
Niger/2009/Fouchard
ニジェールのマガリアにある保健センターで急性栄養不良の治療を受けるスレバちゃん(3歳)

スレバちゃん(3歳)の体重は鳥のように軽いです。母親のハブサトウさんの膝に横たわり、まわりの音や動きにほとんど反応しません。ハブサトウさんが指で治療食を与えようとしても顔を背けます。スレバちゃんは衰弱して食欲を失ってしまっているのです。

スレバちゃんは1ヶ月前に下痢性疾患の病気になりました。重度の急性栄養不良のため消化管は傷つき、食事をとることも多大の苦痛を伴います。手と足の先には腫れやむくみもできています。

村での栄養状態調査で、スレバちゃんの上腕周囲が9cmに満たないということが判明しました。これは瓶の首と同じぐらいの細さで、重度の急性栄養不良の症状の一つです。ハブサトウさんはすぐに南ニジェールのマガリアにある保健センターに娘を連れて行きました。スレバちゃんはそこで少なくとも一週間は観察の元、食事療法を受けます。適切な医療ケアを受けることで、回復することができるのです。

食糧不足

ハブサトウさんはすでに2人の子どもを栄養不良により亡くしました。家にはスレバちゃん以外に4人の子どもがいますが、全員が栄養不良状態です。母親が家にいない状態では子どもたちの栄養状態の危険度はさらに高くなりますが、ハブサトウさんが病院にいることがスレブちゃんの助かる唯一の方法なのです。

ハブサトウさんは夫と共に、少ない土地で雑穀を育て、鶏を飼育しています。しかし、最近になってアフリカサヘルの半乾燥地域をおそったひどい食糧不足によって打撃を受けました。ハブサトウさんが市場で塩と香辛料を売って家計の不足を補ってはいましたが、家族は1ヶ月30ドルで生活をしなければなりませんでした。このため、今年に入り、スレバちゃんの父親はコミュニティの多くの男性と同じように家を出て職を探さなくてはならないようになりました。

南ニジェールは今年の食糧危機によって最も打撃を受けた地域の一つです。過去数年間の雨不足で収穫量は大幅に減りました。2009年の秋の時点でマガリアの人々は、作物の収穫量が減る5月から8月の厳しさがさらに増すことを分かっていました。

治療可能な病気
© UNICEF Niger/2009/Fouchard
重度の栄養不良に苦しむスレバちゃん。今年だけでニジェールの子ども約378,000人が治療可能な病気に命を脅かされています

政府と国連機関によるとニジェールの約780万人が食糧不足に直面しています。結果、ユニセフは2010年に378,000人の子どもたが重度の急性栄養不良に対する治療を必要とするだろうと予想しています。今のところ、今年1月から62,000人以上の子どもたちがユニセフが支援する治療的食事療法を提供するセンターに登録しています。この値は数年前と比較すると大幅に増加しました。

食糧難に悩まされている人は多く、依然として深刻な問題ですが、栄養不良は治療可能な病気です。スレバちゃんのような重い病気の子どもも助けることができます。

2005年に同じような食糧危機が起きたとき、二ジュールは各国に先駆けて、栄養不良の人たちを集めて一斉に外来で診療・治療をする新しい取り組みを導入しました。現在は、ユニセフと関連機関によって支援されている約400の保健センターで栄養管理が行われています。ユニセフは国内の栄養不良の子ども用の治療食を285,000箱供給する予定です。4月には国連も栄養問題などのために1億9000万ドルもの支援を呼びかけるニジェール緊急人道支援行動計画を立ち上げました。

スレバちゃんが治療を受けているセンターの中の一角では、飛び上がり、元気に遊んでいる子どもたちがいます。一時は栄養不良に苦しんでいた子どもたちです。今はすっかりよくなり、もうすぐ家に帰ることができます。ハブサトウさんは看護婦がスレバちゃんに手当てをしてくれている様子を見つめています。適切な治療を受けることで、スレバちゃんも近いうちに家に帰れるようになるでしょう。