財団法人日本ユニセフ協会




【新着情報:2004-1-2】


イラン南東部地震(第3報)

ユニセフは、子どもの保護・教育および衛生面で
現地における活動を主導

現地からの報告
イラン南東部バムで発生した大地震の被害に対し、ユニセフは、各機関との迅速な調整と協力のもと、現地において、子どもの保護、水と衛生、教育の分野でリーダーシップを取って活動を続けています。
 現地入りしているユニセフ広報官(Marc Vergara)が12月31日に伝えるところによると、国連の状況レポートでは4〜6万人が家を失っており、いまだに "被災者がどこにいるのか"がはっきりしないと言います。多くがバムを出た一方、多くのイラン人がバムにおり、緊急支援を手助けしているとのことです。
 子どももおとなも同様に、トラウマが深刻な懸念事項です。被災者は寝起きしているテントを出て支援物資を受け取りに行くことにさえ嫌気がさしており、そのため、しばしば、現地に届いている支援物資を、それぞれのテントにまで運んでいかなければならないような状況といいます。
 子どもの保護について最初のミーティングが1月1日に開かれます。教育については、何人の教員が生き残っているかが主な関心事です。教員がどこにいて、もしバムを出ているのなら、いつバムに戻って来られるのか…。第2報で、保健分野でどれだけひどい被害が起きているかをお伝えしましたが、教育についても同じです。調査しなければならないことは山のように残っていますが、地震が起こった12秒間にかくも甚大な被害がもたらされたことだけは事実です。

地震から生き残った4歳の少女。トラウマのために話すことができず、名前や両親がどこにいるかも言えずにいる。
地震から生き残った4歳の少女。トラウマのために話すことができず、名前や両親がどこにいるかも言えずにいる。

■一般的な状況

  • UNDAC(国連災害評価調整)によると、12月30日時点の公式発表では、28,000人が埋葬済み。死亡が確認されていない人が推定5〜6,000人(地震前のバムの人口は推定97,000人。この地域全体では24万人)
    また、UNDACは負傷者数を3万人と推定している。
  • イラン政府は、復興と救出活動に3兆4100億イラン・リアル(日本円で推定530〜540億円)をあてることを決定した。また、学校をすぐに再開して、トラウマを負った子どもたちができるだけ早く学習をはじめられるようにすると発表した。学校の再建には100億イラン・リアルがあてられた。
  • 国際的な支援活動がペルシャ湾岸の国々と協力して続けられており、地震への支援総額は4億米ドルに達した。

■課題

  • さまざまな国からの迅速な支援により、十分な量の医療品が到着している。しかし、こうした物資を倉庫から各地へ配布するためにさらなる協働が必要とされている。必要とされている保健物資がこの地域の保健センターへきちんと届くようにしなければならない。
  • トイレや関連の資材、石鹸などが不足している。保健省や保健衛生担当官は、緊急にニーズに対応できなければ、感染症が広がるのではないかと危惧している。1000基のトイレと衛生資材が被害地に運ばれているが、保健省は、到着したトイレや物資を分配し設置することが困難な状況にある。
  • 親や保護者を失い福祉省が運営するケルマンの保護センターに送られた子どもの数は100人を超えた。福祉機関が、バムに移動式の子ども用保護ユニットを設置し、親や保護者とはぐれた子どもたちの身元確認を行ったり、保護とケアを与えたりしている。赤十字国際委員会と協力して、子どもたちの親探しを急ぐ必要がある。

■ユニセフの活動

  • ベルギー政府専用機によって、学校用キット(スクール・イン・ア・ボックス)416キットが送られた。
  • ノルウェー政府の物資支援により、被害地においてユニセフの支援物資を保管するための2基のゴム製倉庫が設置されつつある
  • ユニセフ・バム事務所のオフィス用として、ノルウェー製のテントが寄贈された
  • ユニセフは政府が行う心理社会的な救援活動を早くから支援し続けている
    1. イランの赤新月社のボランティア40名のチームが、2日間にわたる心理社会的支援についてのトレーニングを受けた
    2. 情報を広め、家族さがしを実施している
    3. 先月ユニセフによる専門家用のプログラムを受講したコルデスタン、ギラン、カツヴィンの各県の精神保健の専門家が、明日(1月1日)、ケルマンにおいて15名の、精神科医の現地研修を実施する。
    4. 明日(1月1日)、保健省において、保健省の精神保健部門、イラン赤新月社、福祉省、ユニセフ、それぞれの代表者が集まってミーティングが開かれる。ユニセフは、心理社会的支援活動と家族さがしの分野において、さまざまな機関の活動の調整役を担う。

■国連の調整

  • 支援者会合がユニセフ・テヘラン事務所で開かれ、国連機関や支援各団体・機関がこれまでに行った活動を報告し、今後対応しなければならない課題について話し合った。ここでは、主に以下のような課題が挙げられた。
    1. トイレおよび毛布の不足が非常に深刻。毛布は多くが死者を埋葬する際に遺体を包むために使われてしまっている
    2. 輸送費および管理費が活動を続けるために不可欠である
  • 国連の災害管理チームが12月31日に会合を開き、来週はじめに発表される予定の国連合同アピールをまとめるため、1月3〜5日までバムに調査団を派遣することを決めた。この関連で、以下の機関からなる分野ごとのワーキンググループが作られた。ユニセフはすべてのワーキンググループに参加しており、2分野ではリーダー機関となっている
    1. 保健と栄養分野: WHO(世界保健機関)
    2. 水と衛生分野: ユニセフ
    3. 子どもの保護と教育: ユニセフ
    4. 調整、通信、事業評価、治安:国連の現地事務所
    5. 食糧と物資輸送:WFP(世界食糧計画)