財団法人日本ユニセフ協会




【新着情報:2004-1-4】


イラン南東部地震(第4報)

被害状況とユニセフの取り組み

 1月3日〜5日にかけて国連機関の合同被害調査が実施されています。保健施設や家族からはぐれた子どもたちなどの状況が明らかになりつつあります。ユニセフは、イラン政府当局や専門機関、NGOと協力しながら、今後の活動計画を策定中です。

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■現在の状況

  • イラン政府によって被災者用に計画された3つの避難民キャンプのうち、 ひとつのキャンプの準備が整った。しかし、被災者のキャンプへの移動は始まっ ていない。
  • イラン赤新月社による被災者の調査および被害地図作成が続いており、食 用油、米、砂糖、豆類といった食料配給票の配布がはじまっている。
■進展と課題
  • ユニセフは、デンマークの救援チームが提供したテントへ移動した。デン マーク/ノルウェーチームが提供したもうひとつのテントは、UNDAC(国連災害 評価調整)のチームなど他の国連職員が使用している。ゴム製簡易倉庫の建設が 続いており、金属の骨組みが建てられたところである。
  保健分野
  • さらなる調査によって、バムの保健施設の完全な崩壊について以下のよう な詳細が明らかになっている。イラン政府は、保健部門の再建には2,500万米ド ルがかかると推定している。
  • - 主な3病院
    - 23ヶ所の保健センター(インフラ面での被害額:1センターあたり約20万米ドル)
    - 97軒の保健施設【2年の研修を受けた2名のヘルスワーカーによって運営 されるコミュニティレベルの施設。1軒あたり1,500人の住民を担当する】(イン フラ面での被害額:1軒あたり約4万米ドル)
  • IFRC(国際赤十字社・赤新月社連盟)によると、ドイツ、フィンランド、 ノルウェーの赤十字社によって、250床の病院が設置され、1月2日から患者の受 け入れを始めている。この病院は、今後1年間はここで運営され、最初の3〜4ヶ 月間は国際スタッフが支援し、その後、イラン人スタッフにすべて引き継がれる 予定である。これにより、現地の病院が活動できなくなっている今後数週間、医 療支援を継続することができる。
  • 通常の予防接種事業が再開された。ユニセフは、地震前に大規模なはしか の予防接種キャンペーンを支援しており、予防接種率は、すでに90%に達してい る。
  • ユニセフは、子どもの健康について新たに発生している課題(ひどいチリ による幼い子どもの呼吸器系疾患や空気感染の疾病等)について、WHOやイラン 保健省と緊密に協力して活動している。また、WHOや保健省とともに、コレラや 赤痢、下痢などの疾病の兆候を注意深く見守っている。今のところ、これらは心 配されるような状況ではない。10件あまりの下痢の発症が報告されているが、流 行というようなものではない。
  水と衛生
  • ユニセフは、地震直後、浄水剤、水タンク、大型水タンクなどを地震の直 撃を受けたバムとその近隣の地域に届けた。この地域は、普段から水道供給がな い貧困地域である。ユニセフは、現地に水と衛生の専門家を送り、ニーズ調査を 行っており、政府やNGOと協力し、今後の支援活動について細部にわたる計画作 成を支援している。
  • ユニセフの水と衛生担当官は到着後すぐに、国際NGOおよび国際赤十字と 最初の会合を持った。
  • 国際NGOの一つはバムに水関連の技術者を擁しており、ユニセフとの協力 に関心を示している。
  子どもの保護
  • イラン政府によって派遣されたトラウマ関連のカウンセラー30名が現地に いる。ユニセフは、現地で精神保健チームと協力して活動している。子どもの保 護の専門家Rune Stuvland氏が1月5日の週の初めにに到着する予定である。
  • ユニセフは、家族とはぐれた子どもたちのケアと家族探しの面で、イラン のチームを支援している。現在ケルマンにある政府運営の福祉機関の保護センタ ーには1,500人の子どもが保護されている。ユニセフは、赤十字国際委員会とさ らに協力し、ケルマン以外の地域にいる子どもたちの身元確認や家族のもとへ帰 す努力を続けている。
  • 別の国際NGOが子どもの保護を担当するスタッフを現地に送ってきており 、ユニセフとの協力に関心を示している。
  その他
  • 教育面については、どこに人々が移動しているのか、何人の子どもたち( 性別・年齢)が去り、あるいは残っているのか、何人の教員が働ける状 況にある のか、どこに仮設校舎を建てられるのか等、多くの不明点があ る。これらの課題 については、この週末に行われる国連合同調査のを通 じて詳細を見ていくことに なる。
  • ユニセフは、子どもの冬用衣服、おまる、紙おむつ1万セットを現地調達 した。こうした物資の配布については、現在バムの当局者と調整中である。
■スタッフ関連
  • 国連合同調査団に参加する2人のユニセフ・スタッフが雪のためテヘラン を出られずバムへの到着が遅れている。1月3日には出発できる予定である。
  • 現地でのスタッフの住居が依然として課題である。何人かのスタッフは車 で寝起きしている。
  • 交通の状況がいまだ不安定である。バムの空港はまだ完全に稼動していな い。しかし、ケルマンからバムへの地上交通については、ほとんど問題がなく、 移動時間も以前は12時間かかっていたものが、3〜4時間程度にまで短縮している 。

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image1  12月26日(金)バムの町を襲った地震により、およそ3万〜4万人が亡くなり、3万人が負傷したと推定されています。こうした人々の多くは、治療のためイランの別の町へとバムを出ました。飛行機やヘリコプターで。あるいは、倒壊した建物によってひどくいたんだ車で。生存者達は、かつては自分の家だったところに座り込み、瓦礫の中から何とか引き出せるものを探しています。

 この災害に対する国際救援活動は迅速で大規模なものでした。ユニセフは、即座に、保健キット、テント、簡易発電機、おとな/子ども用毛布、そして「スクール・イン・ア・ボックス」を届けました。イラン政府当局との協力で何を優先させるかが迅速に決められました。ユニセフは、子どもの保護、水と衛生、そして教育分野における活動の主導機関となり、すでに6人の外国人スタッフと4人のイラン人スタッフをバムに送りました。

 バムの町が再建され、人々が立ち直るには時間がかかるでしょう。人々は長期の見通しを何も立てられずにいます。起こったことに対するショックがあまりにも大きいのです。この地域の200km四方に大きな町はありません。地震は砂漠地帯を襲わずに、まさに町の中心部を襲いました。それも、金曜日の早朝、人々がまだ眠っているときに。

 人々が先のことを考えられないもうひとつの理由として、これからバムの町がどうなっていくのかが分からない、あるいは何が残されるのかが分からない、ということが挙げられます。公式報告では、バムのおよそ70%の住居が倒壊したといいます。しかし、残った建物や耐震性の建物で暮らしている人はほとんどいません。

 データの不足が対応を難しくしています。バムの人口は10万人ほどでしたが、現在、ここに何人が残されているのか、誰も分かりません。数値がどうであれ、一番の被害者は子どもたちです。イランの人口の半分以上は18歳未満ですから、死亡者や負傷者、トラウマを負った人々の半分が子どもと考えてよいはずです。

 すべての家族は、町に残るか、去るかを決めなければなりませんでした。多くは親類の生死が分かるまでは町を去りたがりませんでした。しかし、すべてを失い、ひとりぼっちになってしまった人々には、町に残る理由はありません。まだ動く車があればそれを使い、外の町から知人や親類が迎えに来ればそれに乗って、町から出て行きました。彼らは、近隣の村や、世話になれる人がいる場所に散らばっています。

image2  バム郊外のバラバット村に住むホセイニ一家は比較的幸運でした。家族で亡くなった人は誰もありませんでした。13歳のモハメッド、11歳のアリ、9歳のモーセンは父親が書類作業を終えるのを待っています。これから父親は、町の外のテントで待っている母と5歳の妹を車で迎えに行きます。車は、シスタン・バルチスタン州のイランシャールまで500kmほどの道のりを走る予定です。

 ラマザンデ一家とホルシーディ一家は、家族の多くを地震で失い、これから町を出るために待っています。両家は、バムからあまり遠くない2つの村に親類がいます。彼らは、イラン赤新月社の配給所では何ももらえなかったと不満を漏らしました。

 イランでも貧しいこの地域では、多くの家族が日用の必需品を買う現金を持っていません。ユニセフ・イラン事務所代表カリ・エッジはバムの被災地を訪れ、住人が「子どもたちの学校のことを考えるなんて早すぎる、一番ほしいのは子どもの冬用の衣服だ」と話すのを聞きました。ユニセフは、テヘランからすぐさま1万セットの子ども用衣服(すべてのサイズのコート、ジャンパー、ズボン、ブーツ、ソックス、手袋など)を調達しました。

 地震から1週間が経ち、バムで生き残った子どもたちは国中に散らばり、支援を必要としています。それは今だけではなく、明日も、来週も、来月も、そして今後数ヶ月にわたって必要なのです。町を再建するのに時間がかかるのと同様に、子どもたちの生活を立て直すにも時間がかかります。