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財団法人日本ユニセフ協会



レバノン南部、学校再開への長い道のり

 【2006年9月7日 レバノン、スリファ発】

ヒズボラとイスラエルが停戦した今、レバノン南部の子どもたちは、「日常」を取り戻そうとしています。しかし、そこには超えていかなければならない壁がたくさんあります。スリファ村では、村の半数の建物が損壊しました。

© UNICEF/HQ06-1218/Debbas
紛争中に爆撃の影響を受け、外壁が吹き飛ばされた校舎の前にたたずむ少年。レバノン南部。

地元の高校は、隣接する民家を直撃した爆弾のせいで、使用できなくなっています。数メートル先の地面には巨大なへこみができています。爆発により、校舎の窓ガラスはすべて割れ、外壁は内側に向かって吹き飛ばされ、ひび割れた状態で傾いており不安定です。教室の中は瓦礫でいっぱいです。

学校に通っていた200人の子どもたちは、どうしたら勉強を再開できるのか戸惑っています。12歳のイスラは、学校の近くの舗道で友達と遊んで一日を過ごしています。最近、この町でできることといったらこれくらいしかないのです。

イスラは再び学校に通えるようになることは期待できそうにないと思っています。「こんなことを言うのはとても悲しいけど、もしかしたら転校して別の学校に通わなくてはいけないかもしれません。」

「ある種の日常」

© UNICEF video
レバノン、スリファ村にある地元の高校は隣接する民家を直撃した爆弾のせいで使用できなくなっています。スリファ村にある半数以上の建物が損壊しました。

推計によれば、今回の紛争で最大で50の学校が倒壊し、300校が被害を受けたとされています。多くの学校がすでに、9月中旬に始まっている予定だった新学期の開始を延期しています。

ユニセフは、子どもたちが一刻も早く学校に戻れるようにするための活動を行っています。「バック・トゥ・スクール(学校に戻ろう)キャンペーンの目標は、10月18日時点で、35万人の子どもたちを学校に再び通えるようにすることです。」ユニセフのレバノン・緊急調整担当官フィリペ・ドゥアメレ氏はいいます。

「学校が正常に機能するように、教師たちが授業を再開できるように、学校には様々な備品もそろえる予定です。」と彼はいいます。「学校の再開を急ぐことは、子どもたちの教育に関して重要であることはもちろんですが、子ども達にある種の日常を取り戻させるためにも大切です。子どもたちは学校に通うことで、彼らが抱える心の傷に向き合い、乗り越えることができるのです。」

瓦礫に埋もれる教室

モハメド・ナザーはスリファ村にある学校の校長です。瓦礫の中を歩き回るうちに、モハメドは学校に必要不可欠な設備は修理が不可能なほど損傷していることがわかりました。コンピューター室、理科室、図書室などはすべて破壊されています。事務室にいたっては、かつての面影を確認できないほどに破壊されています。

ナザー氏は、新学期に間に合うように学校を再開したいと思っていますが、そのためには外部からの支援が必要です。「あらゆる設備が破壊されていて、その残骸が床に散らばっています。予定通りに新学期を始めるためには、教室や設備の修復が必要です。」

破壊された学校の門に鍵をかけながら、ナザー氏は、この閉鎖が永遠に続かないようにと願うばかりです。

学用品を提供

今のところ、サウジアラビアが2006-2007年度に関しては公立学校に通う子どもたちの学費を全額負担すると表明したことに後押しされ、レバノンの教育システムの復旧への期待は高まっています。

「約2,000万米ドルにのぼるサウジアラビアの支援策を、わたしたちは歓迎しています。」ユニセフの広報担当官ソア・ブサトゥ・ブスターニは言います。「この紛争によって経済的に困難な状況にある家族にとっては、計り知れないほどの助けになると思います。」

ブスターニ氏によると、サウジアラビア政府が学費を全額負担するかたわら、ユニセフは学校用カバン、ノート、文房具をレバノンの公立学校の幼児教育課程、初等教育課程に在籍する40万人の子どもたち全員に供給する予定です。この取り組みは、紛争後の家計にのしかかる負担をきっと和らげることでしょう。