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財団法人日本ユニセフ協会




レバノン南部:給水設備の修復と衛生についての意識を高める活動

 【2007年2月15日、レバノン・ヘニイエ発】

© UNICEF Lebanon/2007/Debbas

人形劇を通して正しい衛生習慣について学ぶ、南レバノンの学校に通う子どもたち。

空がきれいに晴れた冬の日、レバノン南部のある村では、子ども達が教室の床に足を組んで座り、熱心に人形劇を観ています。この人形劇の主役はウサギのフフです。

この人形劇は子どもたちの衛生についての意識を高めることを目的としています。9歳のザフラにも、この人形劇の与えた影響は大きかったようです。「寝る前にはね、」ザフラは歌うような声で話します。「必ず歯を磨かなきゃ。フフがやっていたみたいに、学校から帰ったらすぐ、友達と外で遊んでお家に帰ってきたらすぐ、手をきれいに洗わなくっちゃいけないの。」

紛争の傷跡

© UNICEF Lebanon/2007/Debbas

レバノン南部のアル・キアムでは、ユニセフの支援で建設中の貯水タワーの完成が間近に迫っています。

このような衛生についての意識を高めるための活動は、去年の夏の紛争で被害を受けた地域で行われており、ユニセフはパートナー組織であるNGOのインターSOSと協力して、資金、物資及び技術的支援を提供しています。昨年の紛争では、約1,400人のレバノンの人々(その3分の1は子ども)が犠牲になりました。

人形劇を観るなどの子どもたちが心から楽しめる活動を利用することが、衛生についての意識を高める最善の方法であると、活動に関わるボランティアやスタッフは考えています。

この活動が順調に成果を挙げている一方で、レバノン南部での衛生促進は依然として大きな課題です。半年前、紛争によって、給水設備が破壊されたことで、事態はさらに悪化しました。

給水設備の修復作業

「私たちの家への水の供給は多いときでも週に2回ほどです。」と、16歳のサマールはいいます。サマールはレバノン南部の町アル・キアムに家族と一緒に暮らしています。「家族全員が使うのに充分な量の水が確保できません。母は食事を作るのに苦労していますし、十分な洗濯もままならない状態です。」

サマールいわく、彼の家族は水道局に支払う使用料の他に、足りない分の水を購入するために、月あたり25米ドル程度を支払っているそうです。大半の住民が農業を生業とするレバノン南部の貧しい家庭にとって、このような追加的な出費は非常に負担となります。

「既存の給水設備の大半が老朽化しています。」と話すのはユニセフのシニアプログラムオフィサー、モハメド・ベンドリスアラミ氏です。「水道局は、水の輸送途中での損失を削減し、水が汚染されるリスクを下げるために、給水設備の修復作業に対するユニセフの援助を求めました。」

長期的なプロジェクトへの取り組み

© UNICEF Lebanon/2007/Debbas

ユニセフの支援を受けて建設された仮設貯水タンクの前にたたずむ男の子、アル・キアムにて。

停戦から半年が経ち、ユニセフは給水に関連する様々な活動に関わっています。ユニセフは設備の修復工事に直接携わるだけでなく、町全体及び周辺の村々の破壊された貯水タンクを再建するための資金を提供してきました。

アル・キアムの町では、1000m3の水を溜めることができる貯水タンクの完成が間近に迫っています。本プロジェクトは、アル・キアムで生活する3万人の健康と日々の暮らしにとって非常に重要であり、町の住民に目に見える希望をもたらしています。

「貯水タンクが完成すれば、水に関する問題はすべて解決すると思います。」と、サマールは言います。

緊急を要する支援活動が終了するにつれて、ユニセフはその活動を中長期的なプロジェクトへと拡大しようとしています。レバノン南部のより多くのコミュニティが安全な飲み水を手に入れられるようにするため、現在、ユニセフは29箇所の浄水施設の修復作業を進めています。

「ユニセフはまた、水道局の経費削減にむけた試みへの支援として、手押しポンプや井戸に頼って水を手に入れる人をできるだけ減らしていく活動をしています。」とベンドリスアラミ氏は言います。「具体的には、重力を利用して給水する仕組みづくりなどを紛争の影響を受けた地域かどうかにかかわらず支援していく予定です。」