HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > ミャンマー サイクロン緊急支援
財団法人日本ユニセフ協会





ミャンマー サイクロン被害第27報
ミャンマー:サイクロン被害から1年 続く復興支援活動

【2009年5月1日 ミャンマー発】

© UNICEF/Myanmar/2008/Naing
サイクロン「ナルギス」により4000校以上の学校が全半壊した。被災一週間後、コテル町の小学校があった場所を訪れたユニセフのスタッフ。

2008年5月2日から3日にかけてミャンマーを襲い、甚大な被害をもたらしたサイクロン「ナルギス(Nargis)」発生から、明日でちょうど1年を迎えます。被災者約240万人以上、その4割近くが子どもたちと推定され、その規模の大きさと地理的条件の厳しさから支援活動は難しいものとなりました。ナルギスが残した深い爪跡が残るミャンマーの子どもたちのために、ユニセフは支援活動を続けています。

小学校2年生のス・ピイ・フォヨ・ルウィンちゃん(7歳)は、新学期が始まる今年の6月を目指して建設が進む真新しい学校の姿から目を離すことができません。

学期末が近づくにつれ、ルウィンちゃんや彼女の友人達は、臨時の教室として使われている修道院から、学校が再建されていく様子を、ますます興奮して見つめるようになりました。彼女たちは、恐らく何千回も、学校の校庭に造られている色とりどりの遊具のことを話題にしたに違いありません。以前は、シーソーなどといった遊具は、想像上のものでしかなかったのです。

© UNICEF/Myanmar/2008/Naing
被災後、ユニセフは、屋根用資材をクンギャンゴンへ送った。ユニセフの初期の支援活動は、臨時教室の設置と倒壊した学校の修復作業であった。

新しい学校の完成まであと1ヶ月。親も一緒になって、新しい教室の準備に大忙しです。この新しい学校は、サイクロン「ナルギス」に襲われるまでシット・カヤル・コーン村にあったかつての学校があった場所に建設されています。

ス・ピイ・フォヨ・ルウィンちゃんとそのクラスメートの子どもたちにとって、建設作業はもどかしいほど進んでいません。子どもたちや教師、親でさえ新しい学校を待ち望んでいるのです。昨年の5月、甚大な被害をもたらしたサイクロン「ナルギス」に襲われてから、心から安心して学業に臨むことはできませんでした。でも、この新しい学校は、そうした「安心感」とともに、かつて無かったような学校での新しい生活ももたらしてくれるはずです。

学校は完成間近。ルウィンちゃんたちの新しい学校、シット・カヤル・コーン学校は、ユニセフが「ナルギス」の最も大きな影響を受けた7都市に建設している9つの「モデル」校の中のひとつとなりました。シット・カヤル・コーン学校はサイクロンの影響で全半壊した4,000校の学校のうちのひとつです。

シット・カヤル・コーン学校は、サイクロンの被災前にあった学校より、より良く、より安全に、より子どもに優しい学校にするべくデザインされています。この国で今後建設されている学校のモデルとしての役割を担っているのです。

以前より良い環境を創る

ヤンゴン管区にあるシット・カヤル・コーン学校は、新学期、100人の生徒を迎える予定です。「よりより学校再建」イニシアティブの元で再建されている他の8校と同様、この6月に開校予定のこの学校にも、図書室、校庭、校庭の外壁、職員室が整備されています。すべての学校に、飲料水やトイレが設置され、障害のある子どもたちも容易にアクセスできるような配慮がなされています。

新しい学校はまた、ミャンマーの伝統的な建築様式に基づきながら、現地で調達可能な材料を利用して暑さや騒音を軽減する新しい技術も導入されています。また、今後起こり得る災害に備え、コミュニティの緊急避難所として利用できるようにもデザインされ、サイクロンや地震にも十分に耐えうるよう設計されました。ユニセフは、2010年末までに、こうしたモデル校を37校建設する予定です。

世界で最も悲惨な災害のひとつとも言われているサイクロン「ナルギス」がもたらした甚大な被害。村の人々に残されたのは、子どもたちの教育への「望み」だけでした。修道院の臨時教室で授業が再開されると、ユニセフ・ミャンマー事務所は、授業をより活発にするための学校教材、教科書、学校用具を積極的に提供しました。

「コミュニティも私も、学校施設を維持し、学校を安全に保つために細心の注意を払うつもりです。」学校建設のために自らの土地の利用を申し出た、村の修道院長バッダンダ・サンダウバスさんは話します。

サイクロンによって、多くの人々の生活が崩壊しました。学校の再建作業は、こうした人々に仕事を得る貴重な機会も与えています。「一日2,500?3,000チャット稼ぐことができます。」地元の村人のウ・キャウ・モエさんは話します。「サイクロンで、野菜畑を失いました。節約して、学校建設の仕事で得た収入で、早く元の生活に戻りたいです。8年生になる私の娘のように多くの優秀な子どもたちを生み出すこの学校を建設する手伝いができてとても光栄です。」

この村の人々は、学校建設に積極的に参加しています。学校建設が行われている地域では、教師や父母会、そしてコミュニティの人々が、学校建設に関わる人々のために、食事や宿泊場所を提供しています。

「学校を建ててくれた人々に、どんなに感謝しても言葉で言い表すことはできません。子どもたちに、より良い学習環境を作ることはとても大切なことです。」ハラ・ミョさん(41歳)は興奮気味に話します。彼の息子も、この新しい学校に通う予定です。ミョさんは学校再建に協力し、雨の日でも晴れの日でも、長時間働いています。

ミャンマーのデルタ管区を中心に襲ったサイクロン「ナルギス」への緊急支援の一環として、ユニセフは、被災した2,740校の60パーセント近くに、学校用具、教育用教材、学習用教材、遊び場づくりのための資材などを提供。これにより、41万人の小学校の子どもたちが恩恵を受けました。この支援により、学校閉鎖の期間が最小限に抑えられ、31万5,000人の子どもたちが小学校に再び通うことができるようになりました。

ユニセフはまた、「より良い学校再建」イニシアティブの一環として、教員4,500名に、子どもを主人公にした新たな教育アプローチの研修も実施しています。

「この地域に、真新しい、以前よりも強く質の高い学校が建設されるのを見て、本当に感動しています。私たちの村が、学校建設のモデル校のひとつに選ばれたことも誇りに思います。」ダウ・サン・イ校長先生は涙を浮かべてこう話しました。

ユニセフの復興支援活動は順調に進んでいます。しかし、ミャンマーの子どもたちが抱える問題の長期的な解決をもたらすためには、引き続き、息の長い地道な活動が求められています。