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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第63報
4000棟の仮設学習センターを設置へ 日本からも新たな支援が。

【2011年11月1日 パキスタン・シンド発】

ユニセフは、地元NGOと協力して、ブハラ避難キャンプに仮設の学習センターを設置しました。ノオル・ジェハンちゃん(10歳)は、このセンターで学ぶ60人の子どもたちのうちのひとりです。

「いち、にい、さん、しって、数字の数え方を習っているの」と、ノオルちゃんは興奮気味に話しました。「ここでの勉強が好きです。村の学校よりもずっと。」

ノオルちゃんたちを教えているシレーン先生も、このセンターで学んでいる子どもたちは、学習とレクリエーションの両方の活動に、以前より積極的に参加するようになったと感じています。

「ユニセフが支援してくださった学習教材とレクリエーション用具がとても魅力的なんです。」「この教材を使うと教えやすいですし、子どもたちも、とても積極的に参加してくれます。」

質の高い教育
© UNICEF Pakistan/2011/Sami
ユニセフの支援で、洪水の被害を受けたブハラ避難キャンプに設置された臨時学習センターで、黒板に書かれた文字を読むノオル・ジェハンちゃん。

ブハラ避難キャンプで暮らしている人々の多くは、今回の洪水で最も大きな被害を受けた地域の一つであるタンド・アッラー・ヤール地域から避難を余儀なくされた人々です。現在、このキャンプでは、350世帯が避難生活を強いられています。ユニセフをはじめとする人道支援団体は、こうした人々に、テントや食糧、飲料水、医薬品等を提供しています。

ノオルちゃんの両親は、洪水で、わずかな所持品さえも失いました。しかしながら、唯一満足していることがあります。それは、娘が仮設学習センターで質の高い教育を受けていることです。

「娘がここで学べていることは、嬉しい限りです。」母親のミサ・スマルさんはこう話しました。「私たちは貧しくて、何も持っていません。この学校は、子どもたちのために作られました。今、少なくとも、このキャンプの中で勉強できるなんて素晴らしいことです。」

「箱の中の学校」

ユニセフは、パートナー団体と共に、洪水の被害を受けた子どもたちのために、仮設の学習センターの設置を進めています。これまでに、1,300箇所に設置され、7万人近くの子どもたちに利用されています。少なくとも4,000箇所への設置を目標にしています。

こうした学習センターの設置にあたって、ユニセフは、教員の研修に加え、どんな場所でも学校活動が再開できるように作られた、80人分の学用品や教材が入った「スクール・イン・ア・ボックス(箱の中の学校)」と呼ばれるキットや、レクリエーションキット、床に敷くマット、黒板、文房具やその他の資材も提供しています。

ユニセフのファワド・シャー緊急教育支援担当官は、絶望的な状況であっても、子どもたちが適切な教育を受けることの必要性を強調しました。「この地域は、相次いで緊急事態に見舞われてきました。このため、子どもたちは、教育面でも(今回の洪水以前から)すでに大きな損失を被っています。再び同じことを繰り返したくありません。」「教育を継続させ、子どもたちが学校に通う時間を確実に持てるよう、支援しています。」

日本からの新たな支援

日本政府は、パキスタンにおけるポリオ根絶活動を支援するため、ユニセフを通じ、2億300万円の資金協力を実施することとなり、11月3日、アムジャド・アリ・カーン州間調整省長官出席の下、両国政府による交換公文の署名式がイスラマバードで行われました。

カーン長官は、今回の署名式に際し、以下のように述べました。「パキスタンの子どもたち及び政府を代表し、ポリオの無いパキスタンという夢の実現のためにご協力を頂いたことに、心よりお礼を申し上げます。日本政府のご厚意とユニセフによる尽力に敬意を表します。残念ながら、ハイバル・パフトゥンハー州、バロチスタン州、シンド州農村部、その他の一部地域において、資金や人材などのリソースの不足により、ポリオの問題が再浮上しています。このような状況へのパキスタン政府の対応が、日本政府により本日表明された協力により補完されるものと確信しています。」

署名式に出席された大江博・駐パキスタン日本国大使、次のように発言しています。「日本の無償資金協力、有償資金協力、そして技術協力が、すべての子どもたちの苦しみを緩和するのに役立つと信じています。ポリオ・ウィルスは、どこにでも到達します。特にアフガニスタンとの国境地帯でポリオが急拡大していることから、ワクチンも、最もアクセスしにくい地域の子どもたちに届けなければなりません。」

また、現地JICA事務所の佐藤俊也次長は、次ぎのように述べています。「パキスタンにおけるポリオ根絶のための取り組みという点で、ユニセフとのパートナーシップは、過去16年間にわたり進展してきました。このパートナーシップは、相互の信頼と、崇高な人道目的に貢献するという揺るぎない決意に基づくものです。」

ユニセフ・パキスタン事務所のダン・ローマン代表は、ユニセフを代表し、日本の協力を次のように称えています。「日本政府からの支援はまさに、アーシフ・アリー・ザルダリ・パキスタン大統領のポリオ根絶国家緊急計画を加速させ実現する上で重要な時期に行われるものです。今年に入ってから既に136人の子どもたちが、ポリオに感染しました。このような数字の背後には、悲しみに打ちひしがれた子どもたちやその家族が実在することを、我々は忘れてはなりません。パキスタンからポリオを無くすことは、同国の子どもたちやその家族たちばかりでなく、世界からポリオが根絶されることにより恩恵を受けるすべての子どもへの贈り物となるでしょう。」「ユニセフは、パキスタンの子どもたちにポリオの無い未来を与えるための日本とのこのような協力に、深く感謝しています。今回の支援は、2012年に行われる予防接種キャンペーンのためのワクチンを調達し、必要な啓発活動を行うために使われます。」

日本政府は1996年以来、パキスタンにおけるポリオ対策を支援しており、パキスタンのポリオ根絶のための取り組みにおいて、最大のドナーの一つとなっています。累計8,950万ドルの協力に加え、来年に向け6,500万ドルの円借款が承認されました。2012年の日本の無償資金協力と有償資金協力は、合わせて、パキスタンにおける経口ポリオワクチンの需要の59%を満たすことになります。

今回の日本の支援は、1,100万回分の経口ポリオワクチンの調達に使われるほか、特に、ポリオの症例の50%近くが報告されている北西部の連邦直轄部族地域において、ポリオの予防接種に関する人々の誤解や先入観を取り除くための啓発活動に役立てられます。