公益財団法人日本ユニセフ協会
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ソマリア干ばつ緊急募金 第1報
エチオピア:干ばつに見舞われる地域に飲料水を支援

【2011年7月1日 エチオピア・アゼボ発】

© UNICEF video
エチオピア北部のティグレ州にあるラヤ・アゼボ地方にある水源から水を汲むティラレムさん(13歳)と母親のメドヒンさん。水汲みは起伏の激しい山道を歩いて運ばなければならない重労働。

ティラレム・キロスさん(13歳)は、エチオピア北部のティグレ州にあるラヤ・アゼボ地方に暮らす小学7年生です。ティラレムさんは、大きくなったら医者になりたいと思っています。しかしながら、彼女の日課である水汲みの仕事はとても厳しく、結局夢が実現できなくなるのではないかと不安を抱いています。

週3回、ティラレムさんと母親のメドヒンさんは、自宅から最も近い水源である、村の裏山を流れている湧き水を汲みに行きます。水源までは、歩いて1時間以上。9歳の時から母親を手伝って水汲みを続けているティラレムさんですが、たいてい、この水汲みの仕事で疲れ果て、その日は学校へ通うことができません。そのため、ティラレムさんは、現在、次の学年に進級できていません。

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ティラレムさんと母親は、毎週、エチオピアのラヤ・アゼボから数時間かけて、水汲みをしなければなりません。そのため、ティラレムさんは、学校の授業に参加できず、勉強が遅れてしまいます。

ティラレムさんには、ほとんど選択肢はありません。「朝早く起きて水を汲みに行かないと、水は汚れてしまいます。この村よりも高いところに住んでいる人々が、水に入って体や物を洗ったりして、水を汚してしまうのです」と、メドヒンさんは説明します。「太陽が照り付けていると、水が干上がってしまうこともあります。そんなときは、水たまりの水を使わなければならないんです。体によい水ではありません。」

他の女性たちも、貯水用の容器いっぱいに水を汲みにくるので、水を汲む順番が来るまで数時間も待たなければならない日もあります。ティラレムさん親子は、25リットル入る水の容器をそれぞれの肩に背負って、山道を帰っていきます。二人は、この大変な仕事を無言で堪えています。
「とても重いです。結局は水ですから」「ロープが肩にどんどん食い込んできて痛くなってくるんです。ロバはいませんので、娘と私が水汲みをしなければならないんです。」とメドヒンさんは言います。

限られた水源

地域の水管理事務所によると、ラヤ・アゼボ地域の人々で安全な水へのアクセスがある(=安全な水を手に入れられる)のは、わずか49パーセント。エチオピア政府は、「水へのアクセス」の定義について、自宅から1.5キロ以内に改善された水源があることとしていますが、そのために、長い道のりを歩かなければならない人々も含まれているのです。また、ラヤ・アゼボ地域は、干ばつが多い地域でもあり、すぐに利用可能な水源は限られています。「この地域で、年間利用できる最も安定的な水源は、深井戸です。ですから、安全な水源へのアクセスを確保するためには、かなり多くの資金が必要となる場合が多いのです。」ユニセフのル・フィッセア水と衛生担当官はこのように話します。

ユニセフは、地域の水資源局と共に、安全な水やトイレへのアクセスを改善するべく活動しています。また、本活動は、タンカーで水を供給するだけでなく、深井戸の設置および水配給システムの構築も視野に入れられています。

© UNICEF video
エチオピア北部のティグレ州で、深井戸から水を汲むシェフェナ・ハブテ・ハゴスさん。ユニセフの支援で彼女の村に深井戸が設置される以前は、家族の健康と清潔な環境を整えることは難しかった。

「こうした地域の人々をはじめとする最も厳しい立場の人々に飲料水を提供することは、多くの具体的な恩恵をもたらします」フィッセア水と衛生担当官はこのように話しました。自宅近くで水を汲めることは、子どもたちが勉強できる時間を増やし、衛生習慣を改善し、下痢性疾患の罹患率を減らします。ユニセフの支援によって深井戸が既に設置されたラヤ・アゼボのジャラ村に住むシェフェナ・ハブテ・ハゴスさんは、エボ村にも同じようなシステムが必要だと感じています。

「オダと呼ばれているところまで水汲みに行くと、それだけで一日を費やしてしまいます」と、ハゴスさん。「とても離れていますので、そこで夜を明かさなければならず、子どもたちは、お腹をへらして待っていました。でも今は、近くに給水所がありますから、そこに水を汲みにいけばいいんです。子どもたちにお昼や夕食を準備してあげることができます。もう、子どもたちがお腹をすかして寝ることもありません。」

過去5年間で、エチオピアの水と衛生(WASH)分野は大きく前進しました。そのほとんどが、政府とユニセフのような人道支援機関との共同プログラムを通して達成されたものです。しかしながら、まだまだやらなければならないことはたくさんあります。政府の統計によると、エチオピアの総人口8,200万人のうち、約3,000万人が、いまだに基礎的な衛生施設(トイレ)と安全で利用可能な飲料水へのアクセスがありません。干ばつもこうした問題を悪化させる一因となっています。

格差の終焉

エチオピア政府は、水と衛生分野において、大規模な計画を実施しています。これは、2015年までに飲料水へのアクセスのある割合を98.5パーセント、衛生施設(トイレ)を利用する割合は100パーセントにまで引き上げることをめざした「万人のためのアクセス計画」を通して行われています。ミレニアム開発目標を凌ぐ高い目標が掲げられています。

この目標を達成するためには、革新的で費用対効果の高い、セクター・ワイドアプローチ(広範囲分野別アプローチ)が必要です。ユニセフは、以下のような活動を通してエチオピア政府とパートナー団体を支援しています。

  • コミュニティを基盤とする全ての水と衛生分野における活動の拡大
  • 教育、保健、水の分野の間で交わした覚書を通して、全国のWASH分野を強化
  • 学年齢期の子どもたちを対象にした全国手洗いキャンペーンの開発
  • 水と衛生分野において危機的状況にある地域への支援
  • エチオピア国内で基本的なサービスを受けられる割合が非常に低い4つの“開発地域(Developing Regional States)”でのWASH活動の拡大
  • 地理的にまた人口的に最も支援が必要なグループを特定するため、エチオピア国内全ての水と衛生分野のインフラ設備の調査・分類

清潔な水と健康的な生活

2015年までにこうした目標を達成するためには、約23億米ドルの資金が必要です。現在、このわずか3分の1程度の資金しか集まっていません。ホゴスさんは、安全な飲料水の提供は、将来への投資であることを証明できると話します。

「古い水源の水質は、劣悪なものでした。蛙もいましたし、様々な種類の寄生虫も生息していました。」と、ホゴスさんはその当時のことを思い出して話します。「私の子どもたちは、よく腹痛を訴えていました。でも今は、きれいな水を飲んでいますから、病気になることはありません。」

これは、ホゴスさんの子どもたちが毎日学校に通っているということを意味しています。ティラレムさんをはじめとする子どもたちの夢が叶う日も、そう遠くはないに違いありません。