公益財団法人日本ユニセフ協会
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ソマリア干ばつ緊急募金 第30報
子どもに戻れる場所-子どもに優しい空間

【2011年11月9日 ソマリア・モガディシュ発】

© UNICEF video
ソマリア・モガディシュに設置された「子どもに優しい空間」を利用している避難を余儀なくされた女の子。

避難を余儀なくされている何十万人ものソマリアの子どもたちは、恐れと不安を抱きながら厳しい生活を送っています。長引く武力紛争により避難を強いられた村の人々は、次々と住む場所を追われ、コミュニティは崩壊しました。首都モガディシュまでなんとか辿り着いたとしても、暮らしが楽になるわけではありません。日々の食事や避難場所を探し続けなければならないのです。

何も知らない土地の、過密状態のキャンプに留まっているしかない子どもたちにとって、こうしたつらい経験は、トラウマ(精神的外傷)となり得るものです。

「人々は、避難してくる間にたくさんの問題に直面しています。」「ですから、子どもたちが抱えていると思われる問題を見つけるために、最初に面談を実施しています。その後、難民登録をしますが、必要に応じて、専門的な治療ができる病院への照会も行っています。」ソマリアの首都にある「子どもに優しい空間」で活動しているユニセフのパートナー団体のスタッフのオマール・アハメドさんはこう話しました。

モガディシュにあるアハメドさんが活動している「子どもに優しい空間」は、多数の銃弾が打ち込まれた壁の間に設置されている小さな白い避難テント郡の中にあり、合計で200人以上の子どもたちに、安全な空間を提供しています。

ここの子どもたちは、軽食等での基礎的な食糧支援や飲料水や衛生関係のサービスなどどても重要な支援も受けています。子どもたちの生活の大部分を占める教育面においても、全ての子どもたちが、読み書きや算数などの基礎クラスを受けることができます。しかし、それ以上に大切なことは、子どもたちが遊べるということです。

取り残された子どもたち

© UNICEF video
200人以上の子どもたちが小さな白いテント内の「子どもに優しい空間」を利用している。

「子どもたちが一緒にいることができますから、これは、心理社会的な支援でもあります。」「ただ一緒に遊ぶだけで、子どもたちは、ストレスを軽減することができるのです。」ユニセフのコンサルタントのラウン・カニャンギさんはこう話しました。

それぞれの「子どもに優しい空間」には、ユニセフのパートナー団体のスタッフが配置されています。スタッフの中にはソーシャルワーカーもおり、支援を必要としている子どもを特定し、それぞれに適切なサービスを提供するためのケアや保護を行っています。

多くの子どもたちは、家族と共に避難キャンプに辿りついていますが、残念ながら家族と離れ離れになり、1人になってしまったり、すでに厳しい生活をしている人々に頼らざるを得ない状況に置かれている子どもたちもいます。

「親と離れ離れになった多くの子どもたちが、コミュニティに引き取られています」ユニセフ・ソマリア事務所のビンドゥ・アブラハム子どもの保護担当官は、このように話しました。「人々の移動と共に、この緊急事態で住む場所を追われ、通常であれば人々を支えるはずのコミュニティも移動し、そのために取り残された子どもたちもいます。」

家族との再会

最近モガディシュでユニセフの研修が実施され、ユニセフのパートナー団体は、保護者と離れ離れになった子どもたちの身元の確認や登録の方法を学びました。この研修は、家族との再会事業が目的とされていますが、心理社会的な支援も提供しています。

NGOの10団体から参加した約20名との協議を通じて、情報収集、管理・運営、普及活動、また、データ収集の安全性を確保するための文化や背景を考慮した適切なプローチが開発されました。この研修中に導入予定のこのシステムは、保護者と離れ離れになった現在確認されている子どもたちにも用いられる予定です。子どもたちの情報や安全は厳重に保護され、細心の注意が払われています。

「この研修で多くのこと学びました」と、研修に参加したアハメドさんは話しました。「親と離れ離れになった子どもたちの登録方法や、どうやって保護者を見つけ出し、再開させるのかという方法を学びました。」

現在までに、3万2,000人近くの子どもたちが、ソマリア全土にある350箇所以上の「子どもに優しい空間」を利用しています。

こうした子どもたちにとって、「子どもに優しい空間」は、飢えや武力紛争にさらされ、混乱した状況の中でも、本来の子どもらしさを取り戻すことができる唯一の場所なのです。