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財団法人日本ユニセフ協会
 



フィリピン台風緊急募金 第5報
タクロバンを覆う泥とがれき。すべてを失った人々

【2013年11月13日 フィリピン・タクロバン発】

台風30号がもたらした破壊は、多くの災害現場を経験してきた職員にとっても、衝撃的な光景です。

【ユニセフ・フィリピン事務所 ノノイ・ファハルド緊急支援専門官の報告】

© UNICEF Philippines/2013/Maitem
台風30号で家を失った子ども(タクロバン)

私は15年以上緊急支援に携わってきました。正直、もう起こりうるすべての惨状を目の当たりにしてきたと思っていました。しかし、月曜日に、国連の被害状況調査チームの一員としてタクロバンについたとき、私は衝撃を受けました。飛行機が滑走路に着陸すると、泥とがれきが目に入りました。目の前に広がる光景は、泥とがれきだけなのです・・・こないだまで木々や建物や人々の普通の暮らしがあったところに。

確かに、舗装された1本の滑走路はあります。でも、滑走路しかないのです。空港のターミナルビルの中にあった物はすべて外に飛び出し、外にあった物が中に入ってしまっているのです。飛行機に乗り降りするためのタラップまでもがビルの中に入ってしまっています。私たちは、破壊された空港ビルの一部には入らないように言われました。がれきの中に、そこに避難した空港職員たちの遺体があるからです。空港から市内への道路のそばには、いくつもの小さな漁村がありましたが、その海沿いの村々は跡形もなくなっていました。

不気味な静けさ

© UNICEF Philippines/2013/Maitem
破壊された町を歩く子どもたち(タクロバン)

市庁舎に向かう車の中から、路上の遺体を数えていましたが、100まで数えたところでやめました。おそらく、そんなことをすべきではなかったのです。放心状態で、あてもなくさまよう生存者たちの間に、遺体がただ、放置されていました。無傷の建物はありません。最も大きく強いはずのコンクリートの建物までもが被害を受けています。

市庁舎の周りを歩くと、不気味な静けさがありました。これまでに携わってきた災害現場の経験から、何らかの活動、トラックが行き交う様を想像していたのですが、ここには何もありません。電話も鳴らないし、何のざわめきも動きもないのです。ただ、支援を求めて呆然とさまよう人々がいるだけです。

被災した人々と話をするため、市の競技場に行きました。言葉を交わす前から、彼らの目にショックと恐怖、いらだちを見てとることができました。私が衛星電話を持っているのをみて、一人の男性が言いました。「それを使って助けを求めてくれ。我々には食べ物が必要なんだ」

すべてを失って

© UNICEF Philippines/2013/Maitem
泥をかぶったぬいぐるみ(タクロバン)

父親がわが子に食べ物を与えることもできない時、どれほどの絶望感、空腹感を感じるのか、想像することしかできません。ましてや、大切な家族を失って、だれも保護してくれる人がいなくなってしまった子どもたちの思いはどれほどのものでしょう。何日間も、ほとんど何もない状況で過ごしているたくさんの子どもたちのことが、とても心配です。

子どもたちと家族のための支援物資を積んだユニセフのトラックが、間もなく到着します。私は、ここに残って、政府や地方自治体の職員たちと一緒に、支援物資が到着しだい、すぐに配給する任務があります。少しでも助けになりたいと思っています。

市内の様子を見て回ってから、ようやく見つけた衛星電話が通じるスポットから、マニラの同僚に伝えました。「これ以上、被害状況を調査する必要はありません。人々は、すべてを失ったのです。必要なものは、すべてなのです」