メニューをスキップ
よくあるお問い合わせ
財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

2003年世界子供白書
The State of the World's Children 2003

「子ども参加」
〜なぜ子どもの声に耳を傾けなければならないのか〜

2002年12月11日

「2003年世界子供白書」発表@メキシコ・シティ
キャロル・ベラミー ユニセフ事務局長スピーチ抄訳

写真

2002年12月11日、「2003年世界子供白書」(英語版)が世界同時発行されました。今年のテーマは子ども参加。本書は、次のようなおとなの責務に焦点を当てています。

  • 子どもの意見や見解を求め、子どもの視点を真剣に取りあげる責任
  • 子どもと若者が世界で正統かつ意義のある参加を育む手助けをする責任

子ども参加とは、子どもに影響を及ぼす問題について、子ども自身の考えを盛り込むことを促し、それを可能にすることを伴います。実践的には、おとなが子どもの声に耳を傾けることを意味します。すべての子どもの多様な意見、発言の自由を保障し、子どもに影響を及ぼす決断をする際は、子どもの声を考慮すること。それが、子ども参加の原則です。

子どもたちに影響を及ぼす問題について、子どもたちの意見を聞くべきであるという原則は、家族や社会におけるおとなの権威を損なうものだと考える人々から反発を招くこともあります。しかし、子どもの意見を聞くことは、単純に子どもの考えを認めることではありません。むしろ、子どもたちを対話に巻き込み相互に交流することで、子どもは自分の周囲の世界に働きかけるための建設的な方法を学ぶことができるのです。こうした社会における「ギブ・アンド・テイク」を意味する子ども参加は、子どもが積極的に、寛容に、そして、民主的な市民として、社会において成長に伴い増大する責任を果たすことができるよう促します。

本当の子ども参加

写真

子ども参加には様々なかたちがあります。すべての子ども参加が積極的で、社会的で、目的意識のあるのもので、意味があり、建設的であるというわけではありません。本当の子ども参加とは、子どもと若者自身から始まり、子どもと若者自身の言葉で語られ、子どもと若者自身の現実を反映し、子どもと若者自身のビジョン、夢、希望、関心を追求するものです。尊厳と自尊心を高める適切な参加のために、子どもたちは情報、サポート、そして子どもにやさしい環境を必要としています。

とりわけ、正統かつ意義のある子ども参加とは、おとなの側の大きな意識改革、行動改革を必要とします。それは、おとなによってのみ定義される世界ではなく、子どもが住みたいと願う世界を築きあげるために子どもたち自身が貢献する世界へと、移行していくことなのです。

「2003年世界子供白書」発行にあたって

世界で数千万人もの子どもたちが政治制度から隔離され、政府への信頼を失っています。ユニセフは、子どもたち自身の生活を左右する決定には、子どもたちにより多くの声と参加の方法が与えられなければならないと考えています。子ども参加の重要性について、ユニセフ事務局長キャロル・ベラミーは次のように述べています。「紛争により傷つき、貧困により分断された世界では、子どもたちを受け入れ、子どもたちに耳を傾け、より良い未来を築くために子どもたちに役割を与えることが必要です。」

キャロル・ベラミーは、「2003年世界子供白書」発行にあたり、メキシコ・シティ(メキシコ)でプレス発表に出席しました。プレス発表に先立ち、メキシコの子どもたちやビンセント・フォックス大統領とともに、「世代間の対話」にも参加しました。ラテンアメリカは、これまで子どもの権利を積極的に認め、政策決定に子どもが参加するなど、子ども参加を実践してきた先駆的地域のひとつです。そのため、子ども参加をテーマとする「2003年世界子供白書」が、ラテンアメリカの主要都市メキシコ・シティから全世界に向けて発表されることは、非常に意義あることです。

世界の子ども参加

また、「2003年世界子供白書」は、子どもたちが意思決定や行動に適切な方法で参加することができる時、こうした意思決定や行動はより積極的、創造的、精力的、そして、意義のあるものになると強調しています。「子どもと若者は、自分たち自身が関わりを持ったとき、世界を違ったものにすることができることを証明した。子どもと若者は、おとなの理解を深め、おとなの行動に積極的に貢献しうる発想、経験、そして、見識を持っているのである」と。

「2003年世界子供白書」は、意見を聞き行動する機会を得られれば、どのように子どもたちがコミュニティに積極的な変化をもたらすことができたか、たくさんの事例を寄せています。

  • パキスタン
    バロチスタン州では、女性の識字率が2%しかないが、地域のボーイスカウトが女の子も学校に通えるよう教育行政関係者にロビー活動を行った。その結果、女の子の入学が認められ、初年度だけで2,500人の女の子が学校に通うことができるようになった。
  • ナイジェリア
    アビア州では、地元の高校生が周辺地域に住む25,000人のアフギリ族に予防接種の重要性を教えてまわる戸別訪問キャンペーンを組織した。その結果、何百人ものアフギリ族女性が予防接種の効果を理解し、子どもを地元の保健センターに連れて行くようになった。
  • ブラジル
    1985年、全国ストリートチルドレン会議が開催され、国政の場での法律改正等に大きな影響を与えた。1988年には、子どもの権利条約をブラジル憲法に盛り込むことを提案し、この運動を通じてストリ−トチルドレンは家族やコミュニティに戻り、学校に通い、自分たちの持つ権利を主張する方法を学んでいった。
  • 国連子ども特別総会
    2002年5月、ニューヨークで開催された国連子ども特別総会期間中、歴史上初めて国連総会で子どもたちが正式な政府及びNGO代表として発言した。子どもたちは政策決定により多く子どもの意見を反映させることを求め、教育、健康保健、そして子どもの保護のために世界中のリーダーの行動を訴えた。一方、政府は子どもにふさわしい世界を創り出すことを約束した。

国連ミレニアム開発目標の実現と子ども参加

2000年に世界中の国々が合意した8つの国連ミレニアム開発目標のうち、6つまでが子どもに関係する内容で、子どもの健康と福祉のために持続的な投資を必要とするものでした。キャロル・ベラミーは、「子どもの声を聞くこと、子ども独自の視点を理解すること、そして子どもを国連ミレニアム開発目標達成のための活動に巻き込むことが、成功のために必須である」と言います。 ユニセフによると、1億5,000万人の子どもが未だに栄養不良に苦しみ、1億2,000万人の子ども—その多くが女の子—が学校に通えず、毎日6,000人の子どもと若者がHIVに感染しています。また、子どもと若者の生活に影響を及ぼす問題の意思決定プロセス、また、その予防措置に子どもと若者を含めることは、子どもと若者が抱えるこうした問題を世界に訴えていく上で重要であると述べています。

『2003年世界子供白書』
子ども参加
−目次−
第1章 なぜ子ども参加なのか
第2章 子どもの成長への関与
第3章 積極的な学習
第4章 参加と保護の先頭に立つ子ども
第5章 子どもの声に耳を傾ける
第6章 参加の場
第7章 国連子ども特別総会における子どもたち
第8章 前進〜子どもにふさわしい世界

(A World Fit for Children)

※「2003年世界子供白書」(英語版)は、ユニセフのホームページよりダウンロードできます。

※「2003年世界子供白書」(日本語版)は、(財)日本ユニセフ協会より3月末発行予定です。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る

TMl>