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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

ビタミンA欠乏症を減らすことが世界経済の改善につながる

ダボス
2004年1月21日

 ユニセフと微少栄養素イニシアチブは、新しい報告書を発表し、日常の食事における基礎的なビタミンやミネラル分の不足が、世界人口の3分の1の人々の健康に悪影響を与えており、特に南半球の国々の経済発展を妨げる要因になっていると指摘しました。

 外部の専門家の集まりなどで、ビタミンやミネラルの欠乏症が個人や国にとって何を意味するのかについて通じているところは、ほとんどありません。しかし、世界経済フォーラムにおいて発表されたこの報告書によると、主要なビタミンやミネラルの欠乏が、知的発達を損ねたり、免疫機能を弱めたり、先天的欠損症を引き起こしたりして、およそ20億人の人びとが、もともと持っていたはずの身体的精神的可能性を発揮できない生活を送らざるを得なくなっているのです。

 報告書は、80カ国における栄養“被害状況調査”の結果をまとめています。報告書は、研究室でのテストなどがなくては計ることがが難しかったビタミンとミネラル欠乏の度合いに新たに注目しています。

報告書によると…、

  • 鉄分の欠乏は、幼い子どもの知的発達を損ない、国家的にIQを下げている。また、成人の生産性をひそかにむしばみ、もっとも被害のひどい国々では、およそGDPを2%押し下げていると推測される。
  • ビタミンA欠乏は、開発途上国に暮らす5歳未満児の40%に対し、免疫機能の低下を引き起こしている。これは、年間100万人の子どもの死の原因となっている。
  • 妊娠期のヨード欠乏症によって、年間2,000万人もの子どもが知的障害を持ってうまれてくる。
  • ひどい鉄分欠乏による貧血が、年間5万人の女性の出産時の死を招いている
  • 葉酸欠乏が、年におよそ20万件の先天性欠損症を招いており、心臓病によるおとなの死亡10件に1件がこれと関係がある。

報告書は、おとなのビタミンおよび微少栄養素の欠乏は、特に女性の状況について、把握しにくく、油断のならないものであると論じています。これが国家や経済発展に与える影響は、ようやく測定されはじめたところです。しかし、ビタミンおよびミネラル欠乏症の問題の本質は、栄養不良が最も破滅的で取り返しのつかない被害をもたらすのは、危険にさらされやすい人生の最も初期の段階であるという事実にあります。

 「もはや、単に個人のレベルで、微少栄養素欠乏の状況を把握し治療するだけでは、受け入れられません。私達は、ビタミンやミネラルの欠乏症がもたらす壊滅的な結果から、市民全体を守らなければなりません。特に子どもたちを。先進工業国では何年も前からやってきたことです。この簡単な、しかも命を救うことができる微少栄養素を、すべての人が手に入れられないことの言い訳は成り立ちません。私達はなにをする必要があるのかを知っているのです。それをしなければなりません」と、ユニセフ事務局長キャロル・ベラミーは述べました。

解決方法

 報告書は、すでにテストされた安価な方法を使えば、社会全体がビタミンや微少栄養素欠乏症から守られると述べています。その方法とは、例えば次のようなものです。

食料の栄養強化

多くの人びとが日々消費する食料に必須ビタミンやミネラルを強化する。(例えば、小麦粉、塩、砂糖、食料油、マーガリンなど)費用は、ひとり1年あたり、数セントのみ。

栄養補助剤

危険にさらされやすいグループ(特に子どもや出産適齢期の女性)に、ビタミンやミネラルのサプリメント(錠剤、カプセル、シロップ)を提供する。費用は、ひとり1年あたり数セント。

教育

コミュニティに対し、必要なビタミンやミネラルを取ることができる食料について知らせる

疾病のコントロール

マラリア、はしか、下痢、寄生虫病などの疾病をコントロールすることで、体が必須ビタミンやミネラルを吸収できるようにする。

 これらは、先進工業国では何十年も前に、ビタミン・ミネラル欠乏症の問題解決に使われた方法です。しかし、“すでに知られた課題に、すでに分かっている解決方法を、同じ規模で実施する”には、より熱意を持ち、より柔軟に考えを広げ、より組織的に取り組まなければならず、そうでなければ、開発途上国でビタミン・ミネラル欠乏症を抑制するという国連の目標は達成されないだろうと、報告書は指摘します。

 栄養改善のための世界連盟(GAIN)が、この微少栄養素の格差を埋める民間—公のプロジェクトを進めるために設立された理由です。ユニセフはGAINの設立メンバーです。

 南部アフリカ開発銀行の議長であり、GAINの議長を務めるジェイ・ナイドゥ(Jay Naidoo)氏はこう話します。「栄養の格差は、われわれが、すぐに、そして簡単に、また安価に終わらせることのできるものです」 例えば、もっとも困窮している75カ国で、小麦粉に鉄分と葉酸を強化すれば、鉄分欠乏症は10%にまで、先天性欠損症も3分の1にまで減らすことができる、とナイドゥ氏は話します。こうした栄養強化にかかる費用は全体で8,500万米ドル、ひとりあたりにするとおよそ4セントなのです。

 「結果的に、これらの国々は、生産性の向上によって2億7,500万米ドル、収益力の強化によって2億米ドルを得られると推定できるのです。食料の栄養強化に投資する官民のパートナーシップを強化したことが、健康面だけでなく、国家経済の面での投資につながった例が数多くあります」と、ナイドゥ氏は述べました。

 10年にわたる劇的な開発の末、事実が知られ、解決方法が普及し、そしてその目標には多くのの個人や組織、政府、民間団体、医療・科学界、市民社会すべてが加わり得るものです。報告書はこうまとめています。「非常に多くのことが、非常に多くの人と非常に限られた人のために、成し遂げられ得るときに、もし、ビタミン・ミネラル欠乏症が今後数年のうちに抑制され得なかったとしたら、それは、世界的な恥となるだろう」


“Vitamin and mineral deficiency, a global damage asseessment”
(報告書:ビタミン・ミネラル欠乏症、世界の被害状況調査) はこちらからダウンロードできます(英語) →http://www.unicef.org/media/files/davos_micronutrient.pdf

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