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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

シエラレオネ、国家子どもの権利法を可決

[2007年6月7日 フリータウン/シエラレオネ発]

6月7日(木)シエラレオネ議会によって国家子どもの権利法が可決された。これは、子どもの権利のための大きな前進である。

この法律は、子どもに関係のあるシエラレオネの制定法および慣習法の双方を再検討した結果得られた成果である。大部分は「子どもの権利条約」と「子どもの権利と福祉に関するアフリカ憲章」を踏襲しているが、部分的にシエラレオネに適合させている。国家子どもの権利法は既存のあらゆる国家法律に優先し、18歳未満を子どもとするという国際的な定義を採用している。これは、シエラレオネの多くの法律や政策がより国際的基準にあったものに変えられつつあるひとつの表れであり、同国の歴史上前例がないことである。

「政府は、子どもたちに対してその福祉と生存と発達を保障する義務を負っている」と社会福祉・ジェンダー・子ども問題省のシャーリィー・グブヤマ氏は語った。

この法律は、指針のひとつに“非差別の原則”を掲げ、シエラレオネのすべての子どもたちを対象に十分な水準のケアを実現するための枠組みを提供している。具体的には早婚の禁止、武力紛争のための子どもの徴兵禁止、名前や国籍を持つ権利、無償の義務教育を受ける権利、ドメスティック・バイオレンスや人身売買からの保護、村落レベルで子どもを保護するための構造とシステムの整備、女性器切除などの子どもに悪影響を及ぼす有害な伝統的慣習からの保護などが含まれる。

「子どもの権利法の施行によって、シエラレオネにおいて子どもの権利を普及させるための運営上の枠組みが整うことになる。すべての子どもたちが本来持っているはずの権利を尊重されるよう、ユニセフはこの法律の施行に対する政府の努力を支援する。今日子どもの権利法が可決されたことは、シエラレオネのすべての子どもにとって、2002年の戦争終結以来、最も重要な出来事のひとつである。しかし議会での議論からも明らかなように、社会のあらゆる場所に子どもの権利が十分に浸透するためには、さらに多くの努力が必要とされているのだ」。ユニセフ・シエラレオネ事務所長ギアート・カペラエレ氏はこう述べた。

子どもの生存のための議員行動グループ(PAGOC)議長、ホンA.O.Dジョージ氏は、すべての議員および子どもの保護の専門家が、子どもたちの安全のための“門番”であると述べた。「この重要な法律が制定されなければ、例えば、子どもたちに権利を与えるという現在の仕事は、今後もそれを実行する担当者の気分に左右されることになる」とホン氏は強調した。

シエラレオネの現代史のなかで、子どもたちはとても不安定な状況に置かれている。貧困がはびこり、2006年人間開発指数によると、シエラレオネはリストされた177カ国中176番目とされている。主要な指数の分析からは、子どもと女性がもっとも苦しんでいることが明らかである。シエラレオネは、世界でも乳児・5歳未満児・妊産婦の死亡率がもっとも高い。乳児死亡率は出生1,000人あたり158人、5歳未満児死亡率は同267人(2005年複数指標クラスター調査≪MICS≫)、妊産婦死亡率は出産10万件当たり1,077人(2005 年MICS)と推定されている。

しかしながら、大きな前進も見られる。予防接種普及率が着実に改善し、生後12〜23ヶ月の子どもの35%がすべての予防接種を完了しており、63%ははしかの予防接種を終えている(2005年MICS)。地域社会レベルにある全国のほぼすべての末端保健所に、ワクチン保存のための太陽熱発電による冷蔵庫が取りつけられた。しかし最も重要なことは、政府が子どもと妊産婦の死亡率の削減を2大優先事項のひとつと位置づけ、強いコミットメントを示していることである。

教育システムも徐々に回復し、現在4,600校の小学校が稼動、純就学率も69%になった。世界銀行が資金を出し、ユニセフの支援を受けて実施されてきたSABABU教育プロジェクトでは教員の研修が行われてきたが、この取り組みによってシエラレオネは「拡大HIPC(重債務貧困国)イニシアティブ」における要件を満たし、世銀の債務救済対象国に認定されることとなった。シエラレオネはまた教育セクター計画も策定し、ファスト・トラック・イニシアティブからの「促進基金」受給資格も得ることになった。

子どもたちは暴力、搾取、虐待、権利の剥奪などにさらされている。地域格差はあるが、5〜14歳の子どものおよそ半数がなんらかの児童労働に携わっている(都市部で27%、農村部で57%)。子どもの約11%は孤児であり、20%が血のつながった親と暮らしていない。性的暴力やジェンダーにもとづく暴力も、依然として深刻な問題となっている(2005年MICS)。

2000年に子どもの権利委員会は、子どもについての一貫した定義の採用、結婚年齢の下限の規定、「国際養子縁組に関する児童の保護及び協力に関するヘーグ条約」の批准、性的搾取・虐待の犠牲者に対する保護とサービスの提供、すべての子どもを対象とした初等教育の実現、こう留に代わる選択肢の提供、子どもの高い死亡率に対処するための国際的な支援の要請、および広く普及している女性器切除への対応などの必要性を強調した。シエラレオネは、2006年、子どもの権利委員会に対し第2回目となる報告書を提出している。

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