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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

約300万人のHIV感染者が命を救う治療受ける
しかし今もまだ何百万人もの感染者が予防と治療を受けられない状態

【2008年6月2日 ジュネーブ/パリ発】

2007年末、HIV/エイズ流行の歴史に大きな足跡が残された。ユニセフ、WHO、国連エイズ合同計画が本日(2日)発表した新しい報告によると、現在、低・中所得国の約300万人が抗レトロウィルス治療(ART)を受けている。

“すべての人に治療を”:優先事項となっている保健分野でのHIV/エイズ対策活動の規模拡大によって、さまざまな進展が指摘されている。たとえば母子感染の予防を目的とした対策活動の利用機会が拡大したこと、検査やカウンセリングの広がり、サハラ以南のアフリカ諸国のように感染者のきわめて多い地域では男性の割礼に国家が大きく関与するようになったことなどである。

WHOのマーガレット・チャン事務局長は次のように述べている。「これは公衆衛生にとってきわめて大きな成果である。コミットメントと決意があれば、あらゆる障害を取り除くことができるという証しだ。資源が限られた状況で生活している人々も、これらの医薬品によって経済的・社会的に生産的な生活に戻ることができるだろう。」

何百万人もが治療

報告書によると、2007年末で新たに約100万人が抗レトロウィルス治療を受けるようになり、現在の治療対象者は合計約300万人となっている。この数値は、2005年までに低・中所得国で暮らすエイズ陽性患者300万人がARTを受けられるようにするという‘3 by 5 ’イニシアティブの目標数値である。目標達成には2年ほど遅れたが、ARTの規模拡大に向けた飛躍だと広く評価されている。

報告書では、ARTの急速な規模拡大の要因として以下のようなことを挙げている。

  • おもに価格の減少により薬品が入手しやすくなったこと。
  • ARTを実施する体制が改善し、国ごとの状況に対応できるようになってきたこと。WHOの公衆衛生アプローチでは、薬品処方の簡素化と標準化、サービスの分散化、個人および研究施設の有効利用などが強調されている。
  • 検査を受けてHIVと診断される人の数が増えたことで、ARTへの要請も増加したこと。

利用者の増加:ニーズの増加

報告書は、ARTが必要だと推定される970万人のうち約31%が2007年末までに治療を受けたと述べている。これは、いまもまだ670万人が命を救う薬を利用できていないということでもある。

国連エイズ合同計画のピーター・ピオット事務局長は次のように述べた。「本報告書は、各国が多くの問題に直面しながらも達成してきた成果を強調しており、だれもがHIVの予防・治療・支援を受けられるようにする本当の一歩である。これをもとに、今こそ各国と国際社会が予防・治療活動の強化にむけてともに協力しなければならない。」

子どものHIV予防

胎内の子どもへの感染予防のためARTを受けることができた妊婦は、2007年末で約50万人であった(2006年には35万人)。同時期にARTを受けた子どもは20万人である(2006年末には12万7000人)。しかしながら乳幼児のHIV診断は難しく、これが大きな課題となっている。

ユニセフのアン・ベネマン事務局長は「現在、母親から新生児へのHIV母子感染の予防がさらに推進されているところだ。報告書から、我々はHIV/エイズの影響を受けた子どもと家族のためにいっそうの努力を行なわねばならないと思っている」と述べた。

肺結核、貧弱な保健ケア・サービス体制、進展にむけた問題点

治療の規模拡大を阻むそのほかの問題点として、多くの治療プログラムで長期治療を受ける患者が少ないこと、相当な数にのぼる人々が自分のHIVの病状を認識していないこと、診断が遅すぎて治療開始から6ヶ月以内になくなる人がかなりいることなどが挙げられる。

肺結核もまた、世界のHIV感染者の主な死亡原因となっており、アフリカでは死因のトップを占めている。これまでHIVと肺結核の治療が十分に統合されておらず、肺結核を予防できなかったり両方の病気に対する治療薬を利用できないという理由で、多くの人命が失われている。

報告書は、ART利用の今後の拡大が、感染が深刻な国々の弱いヘルスケア体制、とりわけヘルスケア・ワーカーの研修や維持の難しさに阻まれる可能性があると警告している。感染者の多い地域のヘルスケア体制は、‘頭脳流出’(ヘルスケアの技能を持った人材が他の仕事やほかの国へ移ってしまうこと)とHIVによる高い死亡率によって、今後も影響を受け続ける。

報告書ではまた、公衆衛生の重要な情報を収集・分析・発表する活動を改善する必要性が強調されている。各国、国際的なパートナー団体・機関などが報告書に数値を提供している。これらの数値は限定されている部分もあるが、HIV/エイズに関する保健分野のさまざまな要素について最良かつ最新の推定値である。

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