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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー 報告会レポート

日野原重明 日本ユニセフ協会大使 百賀記念講演
『みんなでユニセフを支えよう』開催

【2012年5月22日 東京発】

昨年100歳を迎えられた日野原重明 日本ユニセフ協会大使の百賀記念講演「みんなでユニセフを支えよう」が、今月15日、東京のユニセフハウスで開催されました。
現在も、精力的に多彩な分野で活動を続けていらっしゃる日野原大使の貴重なお話しを伺うことができました。

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みなさま、よくいらっしゃいました。今から5年前に、日本ユニセフ協会大使に就任しました。ちょうどこの場で就任の挨拶をしてから、早5年。今日は、100歳の記念講演をかねて、みなさんにお願いしたいことがたくさんあります。

昨年の10月に満100歳になり、現在は、100歳と7ヵ月です。もうすぐ101歳になろうとしています。100歳はゴールではありません。私は、若いときには腎臓炎や肺結核といった病気に苦しみました。ただただ安静にと言われ、寝ていました。発熱がひどく、ひとりでトイレにも行けないような状態のときもありました。こんな私が医者になりました。

私は、音楽が好きなのですが、小学校4年生(10歳)のときに腎臓炎にかかり、1ヵ月ほど運動ができませんでした。その時からピアノを習い始めました。中学では、モーツアルトやベートーベン、ショパンなどを弾くことができるようになりました。病気になったので、音楽に触れることができたのです。不思議な関係ですね。障害があるから、病気に出会ったから、ということがありますね。

100歳を越えた今でも童謡作家になりたいと思っています。作曲もしてみたいです。年をとるにつれて、子どもが好きになりました。また近頃は、私もfacebookに現れて私のつくった格言を紹介したりして、仲間を増やしたいと思っています。そのためには毎日ネクタイを変えなくてはいけません。夏は軽快な服装をし、冬は少し厚手のスーツを着たいと考えています。

私は子どものために人生を捧げたい

日本ユニセフ協会大使の就任式で、私はこう話しました。「95歳からの私の人生を子どもたちのために使いたい。私は子どものために人生を捧げたい」と。
世界には、5歳の誕生日を迎えられない子どもたちがたくさんいます。9回表でもチャンスはあります。9回裏でもひっくり返せるのです。私は、子どもたちのために、子どもたちのいのち、健康、そして子どもたちの持つ権利を守るための活動に時間を使いたいと思います。

昨年は5回、海外へ行きました。そこにユニセフ事務所があるときには、事務所を訪ねて、ユニセフの現場をみてきました。子どもたちの権利を守る運動が足りなくて、多くの子どもが亡くなっています。生まれてもすぐに死んでしまいます。非常に大変なことがあるのです。

‘いのち’の授業

3,4年前から小学校に行って、いのちの授業をしています。心はどこにあるでしょうか?心は心臓にあるんではありません。脳の中にあるんですね。2年生で最初に習う漢字に、「思」という字がありますが、この漢字の下の部分にある「心」の上にある「田」は、脳を真正面から見た様子を表しているんです。心は、脳の中にあるんですね。

いのちはどこにあるのでしょう?子どもたちは「いのちは心臓にある」といいます。聴診器をあてて鼓動を聞いてみると、確かにドキドキと音がします。でもそうでしょうか?心臓はいのちではありません。酸素や栄養のある血液を手足や内蔵に送るポンプ、入れ物です。いのちではありませんね。

いのちは見えない、さわれない。これとよく似ているものは何でしょう?昨日の時間は見えない、さわれないですね。明日の時間も、みえない、さわれない。でも今の時間は君たちが持っています。いのちというのは、「君たちが使える時間のことをいのちというのだ」と話しています。

子どもたちに、「学校に行って勉強したり、給食を食べたり、宿題をしたりするのは誰のためでしょう?」と尋ねます。子どもたちは、「自分のためだ」と答えます。いまはまだ小さいから、持っている時間を全て自分の成長のために使うことはいいんですが、大きくなったら、君たちの使える時間を誰かのために使うことが、君たちが生きていくことだと話しています。

子どもたちに誰が何を支援できるか

子どもは生まれて健やかに成長する権利を持っています。この権利を持っている子どもに、誰が何を支援できるかということなのです。それには大変な資金がいります。世界のほうぼうから予算を集めて、ユニセフは事業を展開していますが、日本は、世界で1番多く集めたお金を本部に送っています。これは、日本の素晴らしいことです。日本の個人、企業、資産を持っている方々が、何かよいことのために寄付しよう、よきことのために捧げるという人がいるからです。

しかしながら、私はアメリカに何度も行っていますが、アメリカでは、生きている間に財産の半分をよきことのために使おうという資産家のグループもありますし、96.5パーセント、遺産を寄付するという事業家もおります。私たちは裸で生まれて裸で死ぬのです。お金を持って死ぬことはできません。私は、遺産も全てよきことのために捧げましょうと言っていますが、こういう趣旨に理解をする人は少ないです。ですが、ユニセフのような活動に理解のある方々に、その額にかかわらず、生前に遺産相続についての手続きをしておいて頂きたいと思います。日本ユニセフ協会が一生懸命になって取り組んでいることに、ファンドレイジング(寄付)があります。寄付して下さる方が一人でも増えることを私は切に願っております。

金額の大小を問わなくても、遺産などをユニセフのような活動に使いたいという人が、日本には、まだまだ、もっともっと多く存在すると思っています。皆さんが、色んな意味でPRして、ファンドレイジングのためにボランティアになって呼びかけてくださればと思います。皆さんが訴えれば、個人でも企業でも反応していくと私は信じています。

今日の日本ユニセフ協会大使としてのお話しをきっかけにして、喜んでファンドレイジングする人の数を増やそうではありませんか、私は日本ユニセフ協会大使として、みなさんに呼びかけます。

個人的なことも申しましたが、もしみなさんの心に触れることがあれば、直接、間接、そういう方向に日本ユニセフ協会をもっていこうと努力して下さいとお願いして、本日の講演を終わりたいと思います。

「100歳はゴールではなく関所だよ」

私は、2年前から俳句をつくり始めました。私はまだ初心者です。次の関所、次の関所と、関所をひとつひとつとわたって、いつまで生きられるか分かりませんが、これからも頑張っていきます。ご清聴ありがとうございました。

写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会

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