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公益財団法人日本ユニセフ協会

アジア・太平洋地域
10代で妊娠する少女たち
公に取り上げられない“隠れた問題”

【2014年9月19日 バンコク発】

ユニセフ東アジア・太平洋諸国地域事務所のデバシシュ・ダッタ青少年支援専門官が、東アジアや太平洋諸国での10代の妊娠に関する問題について報告しています。

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意図しない10代での妊娠

2人の子どもをもつ、妊娠7カ月のエフリンさん。(フィリピン)
© UNICEF/NYHQ2013-1555/Ferguson
2人の子どもをもつ、妊娠7カ月のエフリンさん。(フィリピン)

10代での妊娠は、公に打ち明けられることの少ない隠れた問題です。東アジア・太平洋諸国地域では、多くの10代の若者が性行為を経験しています。そして毎年、多くの少女が意図しない妊娠で子どもを授かり、予期しないかたちで自らの人生を大きく変えています。

10代の子どもたちの性行為や妊娠を公に取り上げたり、問題に取り組むことは、多くの文化で避けられる傾向にあります。その結果、適切な対応がされていないのが現状です。

ほとんどの10代の子どもたちが、意図しない妊娠の予防法や育児に関する必要な知識やスキルがなく、若くして出産することへの社会からの偏見や教育の中断、その他の長期的な影響に対するサービスへのアクセスもありません。

東部アジア・太平洋諸国地域の国々では、妊産婦の保健データが集計されていなかったり、年齢による分析が行われておらず、10代の少女の妊娠や中絶に関する正確なデータが存在しません。また、10代での妊娠のうち、性的虐待による妊娠が占める割合も、わかりません。

社会的な偏見や孤立

10代の母親や生まれてくる赤ちゃんは、合併症を起こすリスクが高まります。しかし、10代の妊娠がもたらすのは、健康への懸念だけではありません。まだ心身の発達途中である10代の少女が妊娠することで、子どもらしい生活を送る権利、健康な生活を送る権利、教育を受ける権利など、母親になる少女と生まれてくる赤ちゃん双方の権利を脅かすことにもつながるのです。

10代で妊娠をした少女たちは、恥ずかしい思いをしたり、社会的な孤立やうつ状態に陥ることが多くあります。自分を責め、社会的な汚名を着せられ、自殺を試みた少女たちもたくさんいます。また、10代での妊娠と出産は、少女だけでなく、家族にも長期的な影響をもたらします。妊娠で学校を退学する可能性が高まり、技術を必要としない低収入の職にしか、少女たちはつけません。支援がなければ、10代の両親や赤ちゃんは一生、社会的・経済的に不利な状況に置かれてしまうことになるのです。

子どもたちの妊娠は、10代の少女や少年、そして赤ちゃんの権利を守るためのシステムが十分でないということを意味します。問題への理解や対応を行うことへの拒絶は、10代の子どもたちの妊娠の増加に拍車をかけることになるのです。

文化や宗教を尊重しながら、これらの問題に声を上げず、拒絶を続けることで女の子や女性にもたらされる社会的、開発的、そして経済的な代償を、証拠を示しながら伝えていく必要があります。

東ティモールで

東ティモールの首都、ディリの海岸に座る少年たち。
© UNICEF EAPRO/2012/Andy Brown
東ティモールの首都、ディリの海岸に座る少年たち。

昨年ユニセフ東ティモール事務所を訪れた際、10代の男女のグループと会い、話を聞く機会がありました。彼らとの会話を通じて、10代での妊娠は社会的に受け入れられていないにも関わらず、ごく一般的なものだと感じました。多くの女の子が、恥ずかしさのあまり学校を退学して身を潜める傾向にあり、なかには出産までの間、他の地域で暮らす親せきの元に身を寄せる少女たちもいます。

幼い女の子がコーヒー農園の茂みで出産し、ショックや孤独感のあまり、赤ちゃんをそのまま放置してしまったという話には、特に胸が痛みました。また、公的な取り決めがないまま、養子に出されている赤ちゃんもいます。養子になった赤ちゃんの数や養子となった子どもたちがどのように育てられているのか、また10代の母親に生まれた赤ちゃんの生存や成長、発達に関するデータは、明らかになっていません。

妊娠した少女たちは、より偏見を受けたり、退学をしやすいだけでなく、母親となる準備ができていないにも関わらず、母親としての役割を果たさなくてはいけません。しかし同時に、10代の父親に与える影響に対しても十分な理解が得られていないように感じます。また、望まずして結婚した子どもたちの割合や、家族からの支援を受けられていない子どもたちがどれぐらいいるのかも、明らかではありません。意図しない妊娠を防ぐための効果的な方法だけでなく、10代の両親やその家族のニーズへも目を向ける必要があります。

ユニセフの取り組み

ユニセフは10代の妊娠に関する地域別調査を実施しました。その調査結果は、数カ月前に中国やタイ、フィリピン、ベトナム政府が行った10代の妊娠に関する会合で、具体的な行動計画の立案のために活用されました。各国の文化に適した取り組みを行うことができるよう、国別の調査結果の分析も実施されています。

しかし、それだけでは十分ではありません。10代の若者に性行為やリプロダクティブ・ヘルスに関する教育やスキルを提供し、性行為を行うようになる前に、避妊サービスを利用できるようにすることが重要です。学校の出席率が上昇し、政府自身で幼い子どもたちの生存を守ることのできる中所得国では、学校で子どもたちに知識やスキルを提供することが最も効果的です。

10代の妊娠は、保健省や保健システムが単独で対応するのではなく、教育システムで子どもたちの知識やスキルを向上させることに力を注ぎ、保健システムでリプロダクティブヘルス・サービスや避妊法へのアクセスの向上を実現させることが重要です。また、ただ単にサービスや情報を提供するのではなく、10代の若者を計画の立案や実行に移すプロセスに巻き込む方法を模索することが必要です。

ユニセフは政府や開発機関、市民社会だけでなく、若者の声に耳を傾けて共に活動に取り組むことで、青少年の意図しない妊娠を防ぎ、適切な支援を提供するために力を注いでいきます。

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