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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第32報
エボラで孤児となった兄妹
感染拡大で、人々の心に深い傷

【2014年9月30日 シエラレオネ発】

エボラで両親と祖母、妹を亡くしたフランシスくん。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
エボラで両親と祖母、妹を亡くしたフランシスくん。

9月30日、ユニセフはエボラ出血熱の感染が確認されて以降、ギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国で少なくとも3,700人の子どもたちが、両親または親の一方をエボラ出血熱によって亡くしたとの推計を発表しました。3カ国では感染が続いており、エボラで孤児となる子どもは、10月半ばまでに倍増するとみられています。

感染拡大が続くシエラレオネから、広報コンサルタントのジョー・ダンロップによる報告です。

* * *

一時ケアセンター長のマミエ・クプルムさん。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
一時ケアセンター長のマミエ・クプルムさん。

シエラレオネ東部のカイラフン。国内最大のエボラ感染地で、13歳のフランシスくんと出会いました。

密度の高い生活環境では、エボラ出血熱は感染の危険が非常に高くなります。つまり、家族のだれかが感染すれば、ほかの家族の感染の危険が非常に高くなります。フランシスくんの場合、父親と母親、続いて祖母の具合が悪くなった後、カイラフンのエボラ治療病院に5歳の妹ローズちゃん、3歳の妹アリスちゃんも入院しました。

入院後、両親は間もなく死亡。エボラの症状がみられ、検査で陽性となった祖母と妹たちは、病院の感染者ゾーンへ移されました。

残された子どもたち

一時ケアセンターでボランティアをしているハワさんと子どもたち。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
一時ケアセンターでボランティアをしているハワさんと子どもたち。

奇跡的にもフランシスくんは感染しておらず、一時ケアセンターに連れてこられました。このセンターは、ユニセフなどの支援を受けている一時的なケア施設で、マミエ・クプルムさんがセンター長を務め、エボラによって生活が一変した子どもたちが身を寄せています。

マミエさんは「子どもたちのことを思うと、とても悲しいです。両親を失い、新しい生活を送らなくてはいけません。子どもたちが安心して、守られていると感じられるようにすることが、私たちの仕事です」

この2日間でセンターには新たに幼い子ども3人を含む4人が加わり、全員で10人となりました。フランシスくんの5歳の妹のローズちゃんは驚くべき回復をみせて退院し、このセンターでフランシスくんと再会しました。しかし残念なことに、3歳のアリスちゃんは亡くなりました。

ボランティアのハワ・カモカイさんは、子どもたちと丸一日一緒に過ごしています。食事を作り、一緒にゲームをし、両親がいなくなってしまった子どもたちの心の隙間を埋めるべく、子どもたちの世話をしています。子どもたちの悲しみはとてつもなく大きく、優しさとあたたかさをもって接するハワさんを、子どもたちはすぐに好きになります。

ハワさんはフランシスくんのほうを見ながら、「たいていの場合、年長の子どもたちは、何が起きているかはっきりとわかっています。年長の子どもたちには、自分の気持ちを伝えられるように働きかけ、励ましています」と語ります。

私がテーブルでハワさんとマミエさんと話している間、フランシスくんはずっとそばにいました。私たちが話していることを聞き、理解しているようでした。

家族を失い、押し寄せる悲しみ

エボラ治療センターを退院する際にもらった、保健衛生省発行のエボラからの回復証明書を見せるローズちゃん。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
エボラ治療センターを退院する際にもらった、保健衛生省発行のエボラからの回復証明書を見せるローズちゃん。

フランシスくんは、父親のエマニュエル・サキラさんが亡くなったことを深く悲しんでいます。「お父さんの勇気や、いっしょに散歩をしたことが恋しいです。お父さんは、ぼくにいろんな話やアドバイスをしてくれました。お父さんがいないことが、たまらなくさみしいです」と、そっと話しました。

毎日悲しみを感じているフランシスくんは、「エボラ患者との接触者」というトラウマや不安とも日々直面しています。自分を除く家族全員がエボラに感染したことから、フランシスくんは潜伏期間の21日間、体調の検査をしなくてはいけません。ハワさんは、毎朝フランシスくんの体温を測っており、前日には熱が出ました。

「フランシスくんを隔離してエボラの検査をしましたが、陰性でした。ただの微熱でした。妹のローズちゃんはとても心配して、食事もとらず、眠りにつくこともできませんでした。これ以上、家族を失いたくなかったのでしょう」とハワさんは語ります。

わたしが初めて会ったとき、ローズちゃんはとても静かで、ハワさんのスカートにしがみついていました。「お母さんが恋しくなって、泣いています」とハワさんは教えてくれました。

次に訪れたとき、ローズちゃんの様子は変わっていました。ほかの子どもたちと遊び、歌い、笑っていました。まだ小さくて、恐ろしい病気でほぼ家族全員を失ったことがわからなかったのかもしれません。私を見つけると、フランシスくんはローズちゃんに何かを見せるように言いました。ローズちゃんは寝室からエボラから回復したとの証明書を持ってきて、見せてくれました。誇らしげに見せるローズちゃん。しかし、それがどれほど重要なことなのかは、まだ十分にわかっていないようでした。

孤児となる子どもたち、今後も増加

一時ケアセンターの様子。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
一時ケアセンターの様子。

NGOの子どもの保護専門官のファトゥ・フォムバさんの支援を受け、ハワさんとマミエさんは物語やロール・プレイ、歌などの活動を通じて、定期的に子どもたちに心のケアを行おうと考えています。

ファトゥさんは「幼い子どもほど、私たちの気を引こうとします。愛情を求めているのです。私たちは子どもたちに幸せになってほしいのだと思っていることが、子どもたちに伝わればと思います。事務所に戻ると、涙が出ることもあります。こうした子どもたちの今後や将来を思うと・・・カウンセラーをして10年になりますが、とても厳しい状況です。エボラは、ひそかに行われている戦争のようです。銃はありませんが、暴力と同じように、人々は心に深い傷を負っているのです」

フランシスくんとローズちゃんは身を寄せる場所が見つかるまで、センターで生活します。ユニセフや社会福祉・ジェンダー・子ども省の支援を受け、NGOが子どもたちを引き取ることのできる親戚を探しています。

当初、闘病中だった祖母が孫ふたりを引き取りたいと申し出ていましたが、この記事を書いている間に、亡くなったとの知らせが届きました。ふたりの今後がどうなるのか、さらにわからなくなってしまいました。

シエラレオネでは、これまでに300人以上の子どもたちがエボラで親を失い、孤児となっています。感染が続いていることから、今後もその数は増える見込みです。

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