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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第34報
エボラ出血熱:
シエラレオネ 感染予防のための研修を実施

【2014年10月7日 シエラレオネ・フリータウン発】

米国疾病対策予防センターのベン・レヴィー氏が、感染防止のため、ゴム手袋を二重にして着用するよう指導。(シエラレオネ)
© UNICEF/2014/Bade
米国疾病対策予防センターのベン・レヴィー氏が、感染防止のため、ゴム手袋を二重にして着用するよう指導。

エボラと闘い、治療の最前線にたつ医療従事者にも感染が広まっています。シエラレオネでは、これまでに医療従事者80人以上が死亡、100人以上が感染しています。医療システムが脆弱で医療従事者が少ないシエラレオネにとって、大きな損失となっています。

感染拡大を阻止するためには、医療従事者自身が正しい知識を得て、自身の感染を防ぐことが重要です。ユニセフ・シエラレオネ事務所コンサルタントのヨランダ・ロメオによる報告です。

* * *

シエラレオネの首都フリータウンのとある教室。20人が研修に参加していました。学校では見慣れた光景ですが、テーマはエボラ出血熱、参加者の多くは40代前後でした。

参加者は看護師や医師など、全員が医療従事者で、極めて感染しやすい環境下での感染予防法を学んでいました。

医療従事者への研修

エボラ病棟での個人防護備品の使用ならびに取り外し手順はとても厳しく定められています。この研修は、国内1,200カ所の保健施設すべてに知識が普及するまで、実施されます。(シエラレオネ)
© UNICEF/ 2014/Bade
エボラ病棟での個人防護備品の使用ならびに取り外し手順はとても厳しく定められています。この研修は、国内1,200カ所の保健施設すべてに知識が普及するまで、実施されます。

ユニセフは、エボラ対応コンソーシアム、国際救援委員会(International Rescue Committee)やNGOなどと協力し、英国国際開発省(DFID)の資金提供を受けて今回の研修を企画し、米国疾病対策予防センター(在アトランタ)のスタッフが講師を務めました。

研修では、個人防護備品の正しい使い方や患者の検査、感染が疑われる場合の隔離、また特に女性や5歳未満の子どもたちへの予防接種や栄養、妊産婦ケア、HIV、結核、マラリア、肺炎といった通常の保健ケアの提供を、医療従事者に指導することを目的としています。

これらの内容は、医療従事者が自身の安全を感じ、また住民が医療従事者は専門知識を持っており、住民たちを守る方法を知っていると感じ、保健システムへの信頼を回復する上で重要です。

シエラレオネではエボラ出血熱の感染が確認されて以降、これまでに医療従事者80人以上がエボラ出血熱で死亡し、100人以上が感染しています。医療従事者の感染を予防することは、エボラ対応を行うにあたって、最も優先すべき事項です。

今回の研修は、各地で研修の講師を担う医療関係者に向けて実施されました。参加者たちはそれぞれの拠点に戻り、各地で感染予防コントロールを担う医療従事者たちに研修を行います。この取り組みによって、国内の1,200の保健施設に知識が届けられるようになります」

感染コントロールは「ぜいたく」

米国疾病対策予防センターのベン・レヴィー氏は「シエラレオネの保健システムは脆弱で、備品を必要とする感染コントロールは必須というより、ぜいたくだと思われています」

レヴィリー氏は感染を阻止する上で、知識とリソースの欠如が問題となっているとの認識を強めています。シエラレオネの医療従事者はよく働き、長年の経験もあります。しかし、「感染予防コントロールに関しては、患者も医療従事者も、不慣れです」と指摘しています。

感染の初期段階では、防護備品は利用できませんでした。

現在シエラレオネには、知識や医療品が届いています。ユニセフは感染コントロール支援と貴重な医療従事者の喪失をなくすために、これまでに消毒用の塩素やゴム手袋、遺体を収める袋など約230トンの物資を空輸しています。住民3万3,000人を医師1人でみているという状態のシエラレオネでは、医療従事者は貴重な存在です。

知識と自信

研修に参加していた看護師のレベッカ・アマラさん(35)は、シエラレオネの保健施設には感染予防の専門家はおらず、研修にとても興味を持ったといいます。ほとんどの情報は、初めて知るものばかりでした。

同じテーブルにいた同僚もうなずきます。「医療従事者たちが使用済みのブーツを直射日光で“洗おう”としているのを見たことがありました。これからは、消毒するためには0.5%の塩素溶液に30分浸して裏返しに干すように教えるわ」と話しました。

塩素溶液での消毒は、正しい方法で行われなくてはいけません。レヴィリー氏は「溶液が濃すぎればと備品を痛める恐れがあり、薄すぎればウイルスを殺菌できません」と説明しました。

理論を学んだ後は、実践です。参加者たちは、感染を予防するための防護用メガネの正しい着用法を学びました。

備品などの扱い方の手順は、簡単ではありません。参加していた看護師のアブ・コンテックさんは「難しいです。けれど、練習したことで前より自信がつきました」と語りました。

医療従事者が正しい知識や必要な備品を手にすることができた今、残る課題は、医療従事者の労働時間の短縮です。時間が短縮できれば、疲れによるミス、つまり重要かつ予測不能な人的ミスを避けられるようになります。

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シエラレオネでは、これまでに2,212人のエボラ出血熱感染が確認され、532人が死亡しています。(2014年10月2日シエラレオネ政府発表データ)

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