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財団法人日本ユニセフ協会


いのちと生活をうるおす水 清潔で安全な水がもたらすもの〜ユニセフ・マリ事務所からの報告〜 報告会レポート



トゴタ・ソゴバ氏
© 日本ユニセフ協会/2008
トゴタ・ソゴバ氏
■日時: 2008年11月18日(火)
■場所: 東京・港区 高輪ユニセフハウス
■主催: (財)日本ユニセフ協会
■報告: ユニセフ・マリ事務所 水と衛生担当官
      トゴタ・ソゴバ氏

日本でも2007年にスタートしたVolvic「1Lfor10L」プログラムによるご支援は、マリ共和国の水プロジェクトに活用されており、今年も日本の多くの皆様にご協力をいただきました。この度、水と衛生担当官として現地での活動に携わっているトゴタ・ソゴバ氏が来日、子どもたちの生存と発達との観点から、マリにおける「水と衛生」の現状や子どもたちを取り巻く状況、「1Lfor10L」プログラムを通じた支援の1年目の成果を含め、ユニセフの活動とその成果、支援活動のすすめかたやその難しさなどについて報告しました。

マリ共和国と貴重な水

マリにおいて水がいかに貴重であるかを皆様によく理解していただくために、まずマリについてご紹介させていただきます。西アフリカに位置するマリ共和国の北部にはサハラ砂漠が広がり、国土の65%が砂漠か半砂漠状態にあります。人口の1240万人のうち、約70%が農村部に住み、国民の56.19%が貧困状態にあります。清潔で安全な水へアクセスできる人の割合は、全国で50%、農村部では36%と非常に限られています。マリにおいて、清潔で安全な水が得られる井戸が1基以上設置されている村の割合は、砂漠地帯の北部では30%以下で、全国にある約12000の村のうち、2200の村に未だ清潔で安全な水源がありません。このように、マリにおいて清潔で安全な水は非常に貴重であり、金や石油以上の価値があるとも言われています。トイレを使える人は、46%と水にアクセスできる人の数よりもさらに限られています。

清潔で安全な水の欠如とマリの子ども達

水は人が生きるためには欠かすことができない貴重なものです。しかし、清潔で安全な水へのアクセスがないために、マリの人々、特に子ども達が大きな影響を受けています。マリでの5歳未満の子どもたちの死亡率は、出生1000人あたり191人と非常に高く(※マリ事務所調べ)、その死亡原因の約15%が下痢性の病気です。これは、主に不衛生な水が原因であり、清潔で安全な水が手に入れば、予防できるものです。ユニセフは、水における重要な要素として、「質・量・アクセス」を掲げています。清潔で安全な水を人々が安心して飲むことができ、かつ人々が生活する身近なところに水が手に入る環境を作ることで、彼らの生活を改善することができ、多くの子どもの命を救うことができるのです。

1Lfor10Lプログラムによる活動の成果について

ユニセフが、マリでの「水と衛生事業」において大切にしている3つの柱は、「コミュニティー」・「学校」・「環境づくり」です。井戸を作る上で最も重要なことは、持続性を保つことであり、地域の人々が積極的に水の活動に参加・関与し、運営していくことが必要不可欠です。1L for 10 Lプログラムを通じ昨年いただいたご支援を用い、より多くの井戸を作ると共に、地域の人々の能力向上支援に力を入れて活動をしました。

具体的に申し上げますと、昨年のご支援を通じ、手押しポンプつきの井戸の20基を建設しました。この結果、多くの人が水にアクセスできるようになりました。また、故障していた手押しポンプ60基の取り外しと修復をしました。全部で80基の井戸ができたのですが、これらの井戸が持続的に使われるように、人の育成にも力を入れており、ポンプ修理工32人のトレーニングをしました。同時に、村人がメンバーになっている水管理委員会が62設立され、村の人々たちが主体となって水の管理を行っています。このような井戸の建設とポンプの修理によって、メジナ虫病が発生していた村で、計110,461人の住民が、清潔で安全な水にアクセスが可能になりました。

ご支援による変化と成果

井戸ができて、笑顔を見せる女の子
© 日本ユニセフ協会
井戸ができて、笑顔を見せる女の子

この水プロジェクトでは、水が正しく使われ、人の健康にきちんと効果をもたらしていることを計る指標として、マリにおけるメジナ虫病の根絶を掲げています。この病気は、メジナ虫の微生物が含まれた不衛生な水を飲むことによってのみ引き起こされます。清潔で安全な水を飲んでいればこの病気にかかることはないのです。不衛生な水に含まれている微生物が、体内で80センチもの大きさに成長し、体内で動くため、肉体的そして経済的に多くの苦痛をもたらします。このメジナ虫病をマリから根絶するために、ボルヴィックの支援が使われると同時に、水に関係した他のあらゆる問題が解決され、マリの人々の生活向上に役立っています。具体的な成果としましては、実施地域でのメジナ虫病の発生件数が0件となり、下痢などの水に関する病気も減少しました。また、以前は貴重な水を、体を洗うことや、家庭菜園に使うことは「もったいないこと」として、決してできなかったのですが、井戸のおかげで今では可能となり、人々が衛生的かつ栄養バランスの取れた生活を送ることができるようになりました。皆さんはおもしろいと思われるかもしれませんが、以前は、水を求めて逃げてしまっていた生活の糧である家畜が、逃げなくなったのです。

立ちはだかる壁と今後の展望

今では、清潔な水で体を洗えます
© 日本ユニセフ協会
今では、清潔な水で体を洗えます

マリ国土の65%が砂漠もしくは半砂漠状態であり、乾期の炎天下の中で井戸を掘ることは簡単なことではありません。掘削しても2本に1本しか水が出なかったり、熱さによる掘削機のオーバーヒートを避けるため、日中以外の深夜や早朝に掘削をしなければいけないなど、さまざまな挑戦があります。しかし、このような困難に直面しながらも、実に多くのことを学びました。昨年と今年の経験を通し、来年はより良い活動ができると確信しております。支援して下さっている日本の皆様にお会いすることができ、さらなる元気とやる気をいただきました。マリの人々がより清潔で安全な水を手に入れることができるよう、今後とも力を入れて活動していきます。皆様からのご支援とご協力に、心より感謝の意を申し上げます。

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