メニューをスキップ
財団法人日本ユニセフ協会
HOME > ユニセフについて > 日本ユニセフ協会 > 日本ユニセフ協会の主な活動−アドボカシー活動
『第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議』

「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」
国内準備会合 報告


1996年のストックホルム、2001年の横浜に続く「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」が、2008年11月25日〜28日、ブラジル・リオデジャネイロで開催されます。

日本では第1 回会議以来、1999年「児童買春、児童ポルノ等禁止法(以下、現行法)」の制定と2004年の改正、2005年「子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書」の批准といった法整備がなされてきました。また法律以外の取り組みとして、2005年3月に旅行業界を中心とした、観光地における子どもの買春防止のため行動倫理規範「コードプロジェクト」が発足し、さらにITの世界においても官民をあげたインターネット上における子どもの保護の取り組みが行われています。

しかし乍ら、本年6月に米国国務省が発表した人身売買報告書では日本の取り組みが不十分と指摘されたり、近年のインターネットに代表されるIT技術の急速な発達と普及にともない子どもポルノ問題が深刻化を見せるなど、第2回会議以前から継続している問題や、新たに発生した課題が山積しているのも事実です。

第3回会議では、これまでの成果はもちろん、これらの課題について話し合われ、国際社会が子どもの性的搾取問題の解決に向けて一丸となって取り組む姿勢を改めて示すことが期待されています。

そこで日本国内でも、様々な立場から本問題に取り組んでおられる方々にお集まりいただき、各方面における取り組みと課題について情報を共有し、今後も本問題の解決に協力して取り組むという共通認識を確認するため、第3回会議に向けた国内準備会合を開催いたしました。


国内準備会合プログラム

日 時 : 2008年10月6日(月)13:30〜16:30
会 場 : ユニセフハウス1F・橋本正ホール
主 催 : (財)日本ユニセフ協会
後 援 : 駐日ブラジル大使館、警察庁、外務省、ECPAT/ストップ子ども買春の会
1 .挨拶・・・・・・・東郷 良尚 (財)日本ユニセフ協会 副会長
2.横浜会議からブラジル会議へ
(1)「第三回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議(ブラジル会議)」のプログラムについて
  ・・・・・・・・・早水 研 (財)日本ユニセフ協会 専務理事
(2)2001年〜2008年の日本政府の取り組み・・・・・・・志野 光子 外務省 総合外交政策局 人権人道課長
(3)2001年以降の子どもの性的搾取問題の現状と各セクターの取り組み
(ア)子どもの買春問題
— 日本国内と国外事犯の事例・・・・・・・絹笠 誠 警察庁生活安全局少年課 少年保護対策室長
— 観光における子ども買春について・・・・・・・三ツ橋 明子(株)ジェイティービー 広報室マネージャー
— 会場からのコメント
(イ)子どもの人身売買
— 現状と課題・・・・・・・中山 暁雄 国際移住機関 駐日事務所 駐日代表
— 人身取引被害児童の児童相談所等における一時保護について
  ・・・・・・・太田 和男 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 総務課 児童福祉専門官
— 会場からのコメント
(ウ)子どもポルノ
— インターネットホットラインセンターにおける通報状況について
  ・・・・・・・吉川 誠司 インターネットホットラインセンター 副センター長
— 子どもポルノの現状と国内の法改正に向けた動き・・・・・・・宮本 潤子 ECPAT/ストップ子ども買春の会 共同代表
— 会場からのコメント
(4)質疑応答(会場との意見交換)
3 .統括
「ブラジル会議とその後に向けて〜更なる子ども保護の取り組み・・・・・・・アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使

はじめに、東郷良尚 日本ユニセフ協会副会長が、1996年の第1回世界会議からの取り組みと成果および新たな課題について触れ、日本においてはとくに「商業的」性的搾取の根絶に取り組むことの重要性が強調されました。

早水研 日本ユニセフ協会専務理事からは、「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議(ブラジル会議)」についての開催概要とプログラムが説明されました。今回は5つのテーマ(1.商業的性的搾取の形態とその新しいシナリオ、2.法的枠組みと責任、3.統合された部門横断的な政策、4.社会的責任のイニシアチブ、5.国際協力のための戦略)について議論され、その中でもテーマ5の「性的搾取と闘うための貧困との闘い」というサブテーマが設定されていることについて、商業的な性搾取の大きな要因の一つである子どもを取り巻く「貧困」の問題を取り上げることは意義があることだと述べました。

志野光子 外務省総合外交政策局 人権人道課長からは、「2001 年〜2008年の日本政府の取り組み」として、横浜会議以降の日本政府の国内的な取り組みと国際的な取り組みについての成果、ならびに第3回会議に向けた活動についての報告がありました。国内的な取り組みの中では二つ、「法整備の問題」と「啓蒙活動」に関して述べ、まず2004年の児童買春・児童ポルノ禁止法(現行法)の改正および2005年1月に批准した「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」が例示されました。啓蒙活動としては、日本ユニセフ協会との協力による旅行業界への現行法の周知、および海外旅行者向けの冊子の作成、各都道府県警察を通じた児童に対する広報ツールの配布が挙げられました。国際的な取り組みでは、人間の安全保障基金を通じた児童の性的搾取問題対策に取り組む途上国への支援、ならびに第2回世界会議ホスト国としての第3回世界会議に向けた準備プロセスへの積極的な関与(中央組織委員会、地域会合への参加など)について報告し、第3回世界会議では、この問題について日本政府の先例や経験を提供しつつ、問題解決のための解決を一つでも多く得たいと述べました。

つづいて、商業的性的搾取の主な3つの問題、1.子どもの買春、2.人身取引、3.子どものポルノ、について、異なる分野の専門家からそれぞれの2001 年以降の現状と課題についての報告がありました。各問題についての発表後は、参加者からのコメントの時間を設け、活発な意見交換が行われました。

絹笠 誠 警察庁生活安全局少年課少年保護対策室長からは4点(1)児童買春を含めた児童の性的搾取に関する各法令とそれに基づく検挙状況、(2)児童買春・児童ポルノ禁止法の児童買春に関する具体的な状況、(3)児童買春の国外犯の取り締まり状況、(4)警察庁の取り組みについて、の報告がありました。特徴としてインターネット利用に係る児童買春事例の増加が示され、統計的には2002年〜2007年にかけて児童買春・児童ポルノ等禁止法の児童買春の件数自体は減少しているものの、総数に関する割合では、出会い系サイト利用に係る割合が5割を占め、むしろ増加傾向にあることが指摘されました。今後の課題として、とくに中学生・高校生が、携帯電話のインターネット機能を利用して加害者と接触し、児童買春の被害に遭うケースが懸念されることから、それに対する取り組みの重要性が述べられました。また問題解決のためには、社会的な問題意識の定着など社会全体のサポートが必要であることが強調されました。

三ツ橋 明子 株式会社ジェイティービー 広報室マネージャーからは「観光における子どもの買春」について、まず、世界の旅行業が取り組むコードプロジェクト(子ども買春防止のための旅行・観光業界行動倫理規範)、2点目に日本の旅行業界とJTBグループがコードプロジェクトに参加した理由、最後に具体的なJTBグループの取り組みの3点について報告がありました。JTBグループは、2005年3 月に日本でコードプロジェクトが発足して以来、プロジェクト推進活動において中心的な役割を担い、例えば、JTBグループの行動規範の中に「わたしたちは世界中の子どもたちに対する商業的性的搾取に反対します」という一文を導入したり、海外旅行者向けのパンフレットに日本のコードプロジェクトロゴを入れたり、毎年英語で年次報告を作成・提出するなど、企業の積極的な取り組みが発表されました。

中山暁雄 国際移住機関(IOM)駐日事務所駐日代表からは、子どもの人身売買についての日本の現状と課題、さらにIOMの国際機関としての役割について説明がありました。まず日本政府の取り組みとして、2004年人身取引対策行動計画が策定され、興行資格の厳格化、人身売買罪の新設等、重要な対策が実施されたこと、人身取引については重要な3つのP(訴追:Prosecution, 保護:Protection, 防止:Prevention)に基づき対策がとられていることが紹介されました。またIOMが、日本政府から委託を受けて2005年5月から行っている被害者の自主的帰国と社会復帰支援について、これまでに136名の被害者の帰国支援(うち16名が18歳未満)を実施したとの報告がありました。また今後の課題として、被害者への支援の存在の周知ならびに多言語対応の24時間ホットラインのネットワークの充実化が指摘され、さらに被害者のシェルター生活における環境整備、高度な専門性をもったケースワーカーの養成の必要性が強調されました。

太田和男 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 総務課 児童福祉専門官からは、人身取引被害児童の児童相談所等における一時保護について、児童相談所または婦人相談所で被害児童が保護されるまでとその後の流れ、および2004年度から2007年度までの保護実績について報告がありました。一時保護所での具体的な支援として、適切な母国語通訳の確保と母国の文化を尊重した日常生活支援の推進が行われていますが、本問題のみならず、外国籍の子どもたちの保護が増えてきている状況から、母国語通訳の充実の必要性が述べられました。また、今後の被害児童の支援については、関係省庁や、とくに各都道府県における関係機関との適切な連携が指摘されました。

吉川 誠司 インターネットホットラインセンター副センター長からは、ホットラインセンターへの通報状況から見られるインターネット上における児童ポルノの流通について報告がありました。まず、ホットラインセンターへの平成20年度上半期の通報受理件数のうち、児童ポルノは836件。うち、国内から発信された562件に対し、警察への情報提供等を除いた173 件について、ホットラインセンターから削除依頼がされ、結果160件削除(92.5%)されたことから、児童ポルノについては各ISPでも厳しい対応をしているとの分析がありました。また、海外に置かれている児童ポルノサイトへの対応についても、INHOPEといわれる国際協会を通じて、各国のホットラインセンターに情報提供が行われていることが紹介され、本問題の対策についての国際的な連携の重要性が述べられました。最後に、児童ポルノ画像はその画像自体が直接児童の人権に直結することから、児童ポルノを含む違法情報には、積極的に対処したいと述べました。

宮本潤子 ECPAT/ストップ子ども買春の会共同代表からは、「子どもポルノの現状と国内の法改正に向けた動き」として、2001 年以降の児童ポルノ問題の新たに取り組むべき課題と、法改正を含む早急な対策の必要性について報告がありました。まず、ここ数年の児童ポルノの状況悪化を示すひとつの例として、「子どもの自己被害化」つまり、子ども自らが自身の裸の画像をインターネット上のサイトに掲載、携帯電話を通じて仲間に送信することにより児童ポルノの被害に巻き込まれるケース、さらに子どもや未成年者同士による加害行為も起きているとの指摘がありました。また最近の国内の事例として、幼い子どもに性的なポーズをとらせた水着やブルマ姿の画像など、子どもを性的対象とした商品の増加が挙げられました。この状況に対する対策として、日本ユニセフ協会とECPAT/ストップ子ども買春の会、この問題に取り組まれている個人、団体による「子どもポルノ問題に関する緊急要望書」と署名活動について説明。さらに与野党の現行法の改正案の解説を加えながら、子どもの人権を守るために党利党略を超え直ちに法改正を行うことの重要性を訴えました。

その後の質疑応答では、子どもへの啓蒙活動についての取り組み状況について官民での認識の違いが明らかになりました。とくに現場でこの問題について活動されているNPOの方から現場での課題が指摘され、学校教育における子どもたちへの正しい情報提供、子どもを誘惑する広告等の掲載をしているメディアに対してのアクションの必要性が強調されました。

アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使からは、ブラジル会議とその後に向けた更なる子ども保護の取り組みについて、自らの海外視察経験をもとに、この問題の解決に向けた官民をあげた一人ひとりの協力を訴え、「問題は多いですが、一人でも真剣に取り組む人が増えれば、世の中は変わると私は思います。自分の力は小さいと思わず、みんなで力を合わせてやっていきたい」と述べました。最後に、ブラジル会議はゴールではなく、新しいきっかけにして、子どもの保護のために一層のアクションを起こして欲しいと述べ、準備会合は閉会しました。

写真:© 日本ユニセフ協会