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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ユニセフ子どものための大使 ヨルダン・ラニア王妃の寄稿
「ガザ:紛争に巻き込まれる子どもの、
厳しい選択を迫られる子どもたちに光りを!」

ラニア王妃は、2007年1月のダボス会議で、ユニセフ子どものための大使に任命されました。4月5日のパレスチナ子どもの日に寄せて、王妃が寄稿してくださいました。

【2008年4月8日 ヨルダン・アンマン発

ユニセフ子どものための大使、ヨルダンのラニア王妃
© UNICEF/ HQ07-0708/Giacomo Pirozzi
ユニセフ子どものための大使、ヨルダンのラニア王妃(2007年6月、ユニセフ子どものための大使としてモロッコのフェズ市にある、ユニセフが支援する境域施設を訪問して。)

アイマン君は、ガザのジャバリア市出身の物腰の優しい14歳の少年です。お父さんが2006年3月以来失業しており、家族は貧しいです。いまやアイマン君の両親は、食料や子どもの学費のために家具をほとんど売ってしまいました。最近、政府の食糧配給を集めて、自宅へ戻るための資金稼ぎにミルクを売却しなければなりませんでした。

アイマン君は学校でよく勉強しています。将来の夢があるからです。それでも、定員の2倍47名もいるぎゅうぎゅう詰めの教室で、学習環境はとてもストレスが多いのです。家でも休まりません。アイマン君の住まいからわずか200メートルのところで、先日、武装組織の襲撃がありました。銃撃と爆撃で5歳の妹はとても怖がり、いまだに夜中、悪夢にうなされて目を覚ましてしまいます。

アイマン君のようなケースは、こうした争いとは無関係であるのに、もっとも被害を被っている、ガザで密集して窮屈に暮らしている人々にとっては、ごくありふれた経験なのです。実際、ガザの84万人の子どものうち、およそ59万人は難民で、アイマン君は他の子供よりもまだ悲惨な経験が少ないほうなのです。

先月から激化してきた武力衝突のために、少なくとも33人のパレスチナ人少年少女が亡くなり、それ以上の子どもとたちが怪我をしたり障害を負ったりしました。集中砲火や流れ弾、住まいの庭への誤爆があったのです。2月28日には、サッカーをしていた4人の子どもがミサイル攻撃を受け、家族が子どもの遺体を識別できないくらい粉々に吹き飛ばしてしまいました。

見えない牢獄に囚われて

シャルフ一家では、ガザの自宅で子どもたちが、暗闇の中、ろうそくの灯りで読書をしています。
© UNICEF/HQ08-0152
シャルフ一家では、ガザの自宅で子どもたちが、暗闇の中、ろうそくの灯りで読書をしています。

アイマン君と兄弟、そしてすべてのガザの子どもは日々、自分の命が軽視され、夢や希望が徐々に残酷に打ち砕かれていくのを感じています。明るい兆しはありますが、彼らは見えない牢獄に囚われているようなものです。全ての子どもが当然だと思えるはずのものが、遠ざかっていく現実に。 遊ぶ権利や、学校に通う権利、おなかいっぱい食べられること、夜勉強するとき明かりがあること、自宅で安らげること。全てが子どもたちから遠ざかっています。

世界でもっとも長きに渡るこの紛争の重荷を背負っているのが、彼らの細い肩であり、紛争は彼らの子ども時代を砕き、決して癒えることのない心の傷を植えつけてしまっているのです。

パレスチナ人はかつて、中東でもっともよい教育を受けているとの評判でしたが、今日は、何年もの紛争と、地域封鎖や貧困のために、教育の優秀さの栄光は影を潜めてしまいました。ガザの2000人もの子どもたちが過去5ヶ月の間に、学校を中途退学してしまいました。残った子どもたちも、ボロボロになった教科書を一緒に使わなければならず、必要な教材もなく勉強をしています。

国連パレスチナ難民救済事業機関の2008年1月に実施した、ガザにある学校の半期調査によると、数学は50〜60パーセントが不合格で、母語アラビア語の国語では40パーセントが不合格でした。こうした現実にも関わらず、アイマン君は主張します。「僕はもっと学問のある人になりたいです。国を作ることができる技術者になりたいからです。」

パレスチナ子どもの日に、世界はガザの危機を人災だと思い起こすことになります。世界は、占領が始まって以来、常に悪化し続けてきた状況に注目するでしょう。ガザの家庭のうち79パーセントは貧困の中、暮らしています。10家族中8家族は食糧支援に頼っています。労働力のある半数以上の成人が無職です。地元産業は廃れています。水と下水のシステムは機能していません。ゴミは通りに溜まり続けています。

正常化に向けて

ガザのオマール・ビン・アブドル・アジズ男子校で勉強をする1年生。燃料封鎖で暖房と電気はありません。
© UNICEF/HQ08-0152
ガザのオマール・ビン・アブドル・アジズ男子校で勉強をする1年生。燃料封鎖で暖房と電気はありません。

ユニセフは、昼夜なく活動してガザの若者が正常な日常感覚を取り戻せるように努力しています。子どもたちが勉強し続けられるように救済措置の活動方針を立て、学校でスポーツやレクレーション・プログラムができるようにし、子どもが安全に遊ぶことができる遊び場作りのためにコミュニティーと協力しています。 ユニセフはパートナーと共に、各家庭と保健施設に水と衛生、医療用品を届けられるように活動しています。そして、ユニセフが支援するカウンセリング・チームは地域に散らばり、パレスチナの子どもとその親がストレスの重荷にうまく対処できるように援助しています。

それでも、ユニセフが、例えガザの悲劇の真っ只中にいるひとを助けるためにできること全てをしているとしても、政治のリーダーだけが、この恐ろしい悪夢に終止符を打てるのです。新たな約束をすべきときです。封鎖を解除し、双方が民間人の殺害をやめなければなりません。どちら側でも、子どもは平和に成長するべき価値のある存在です。そして、どちらの政治のリーダーも、国際社会の力を借りて、平和が続くための唯一の手立てである平和的対話に加わるべきです。

アイマン君のお父さんは、静かに話します。「子どもたちは私の希望です。」 ガザの子どもたちは、暗闇に指す一条の光です。輝くチャンスが与えられるべき存在なのです。

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