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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

210万人 危険な労働に
<フィリピン>


 ノエルは8歳の少年。マニラ湾に面した埋め立て地に建設された巨大な国際会議場や国立文化センター脇の港で暮らしている。ノエルは6歳のときに家を出て、船の積み荷の影に隠れて一人でセブ島からマニラにやってきた。日本なら小学校1年生にあたる。それ以来、ノエルはストリートチルドレンの仲間と手作りの掘っ建て小屋で暮らしている。交通量の多い交差点で車をふいたり、船員の使い走りをしてわずかな小銭や食べ物をもらってなんとか日々の糧を手に入れている。

開発途上国では今、開発に伴う都市化が農村との格差の拡大と共に急速に進んでいる。フィリピンでも都市人口が1975年の33%から90年には49%に上昇し、その中で都市の貧困層も増大している。フィリピンの都市人口の40%は貧しい人々が占め、こうした人たちは不衛生で、上下水道や保健、教育など公共サービスが乏しく、狭い家屋が密集したスラムやスクウォッター(不法居住地域)に住んでいる。親は失業か半失業状態が多く、子どもに暴力をふるうこともある。

このような中で、フィリピンでは210万人(政府の公式統計)の子どもたちが学校にも行けず、危険で、低賃金で、長時間の労働に携わっている。路上で働くストリートチルドレンは20万人以上(政府統計)に上る。ノエルのように家族と断絶する子どもも出てくる。幼い時から大人の社会で働き、生き抜いていく、子どもの時代を奪われた子どもたちである。世界では、児童労働者は約2億5千万人、ストリートチルドレンは約3千万人とも1億人とも推定されている。開発に伴うひずみが子どもたちに押し寄せている。

ノエルは別れ際に、つらいことは食べ物がないこと、寂しいことは自分は親を思っても親は自分のことを思ってくれないことと、大人びた顔でポツリと話した。車に乗り、振り返ると、遠ざかるノエルたちが元気にふざけあっている姿が目に入る。ノエルは8歳の少年に戻っていた。

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