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財団法人日本ユニセフ協会




アフガニスタン緊急・復興支援 第6報
アフガニスタンは今
〜ユニセフ・アフガニスタン事務所 現況報告〜

【2009年7月16日 アフガニスタン発】

アフガニスタンの多くの地域でいまだ頻発する武力衝突と政情不安。ユニセフは、その影響を最も受けている弱い立場にある子どもたちへの支援活動を継続して行っています。こうした支援活動には、非常に大きな困難を伴います。しかし、一部では、著しい進展も見られています。

ユニセフ・アフガニスタン事務所−現況報告2009(5月1日-6月30日)
人道的課題と緊急支援
© UNICEF Afghanistan/2009/Sweeting
アフガニスタンとパキスタンの国境付近に位置するトークハムにあるユニセフの支援を受けた学校で、読み書きを習う女の子たち。この学校では、少なくとも一日1回の食事を得ることができる。

5月、アフガニスタンの北部、東北部、西部の13州に暮らす約2万2,000世帯が洪水の被害を受けました。それに応じてユニセフは、高エネルギービスケット、緊急保健キット、食糧以外の支援物資(家族キット、貯水タンク、毛布、料理用コンロ、防水シート、フロアマット、ビニールシート、テント等)を約4,500世帯の家庭に提供しました。ほとんどの地域で、ユニセフは支援物資を備蓄していましたが、支援物資の提供が遅れた地域(特に東北部)もありました。道路や橋が決壊し、危険な状態であったためにアクセスできなかったことが問題となっていました。 また、食糧以外の支援物資の調達が北部、東北部地区で行われ、7月中旬に北部に届ける予定となっている2,600張りのテントの調達も実施しました。

ユニセフと国連世界食糧計画(WFP)は、食料や食料以外の支援物資を必要としている南部ヘラマンドの国内避難民4,000世帯の最近のニーズの調査を実施しました。ユニセフは、2,560世帯に食糧以外の支援物資を提供。さらに、約350世帯が被害を受けた東部で起きた激しい洪水に対し、食糧以外の支援物資を96世帯に届けました。 バーミヤンのサイガン地区では、2校の学校が洪水被害を受けました。ユニセフは学校用テント13張りのほか、1,200人の子どもたちのための臨時の学校施設を支援しました。

主な活動内容

■教育

© UNICEF/NYHQ2007-1087/Noorani

緊急教育:緊急支援活動の一環として、洪水被害を受けた8校の学校に29張りのテントを提供しました。この支援を受けたクンドゥズにある2校の学校は復旧しており、ファルヤブで1校、ジャウジジャンで5校がこの支援を受けました。また、レクリエーションキット70セットを7州に提供。ナンガルハールのシェラザド地区にある地震の被害を受けた5校には、学校用テント、フロアマット、学校用の教材を届けました。また、クナールの1校では復旧支援も実施。近々予定されている総選挙での混乱に備えて、テント500張りとレクリエーションキット2,000セットが発注されました。

心理・社会的な訓練:正規の学校教師707人に対し、心理社会的な支援に関する指導を毎月実施しています。また、3ヵ月ごとに、教師たち自身で振り返りの会議を実施しています。

■保健・栄養

ポリオ−2009年までに慢性ポリオの症例が、南部で8件、東部と中部で1件ずつ、合計10件報告されました。全国予防接種デーキャンペーンを、5月23-25日と6月22-24日の2回実施し、各回、約770万人の子どもに予防接種を実施しました。5月の回では、740万人の5歳未満児に、ビタミンA補給剤も投与されました。

6月3日、4日には、7月に実施予定のはしかと破傷風キャンペーンのための指導者研修を行いました。アフガニスタンでは、インフルエンザの新型ワクチンを導入することができたのです。今まで予防接種の際に子どもたちが投与されていた、通常インフルエンザに対する免疫を作るワクチンの中に、新型のワクチンも混入したのです。これはアフガニスタンの予防接種プログラムの歴史上、大変意義のある出来事の一つとなりました。

栄養−5月、全国母乳育児コミュニケーションキャンペーンのための広報活動が以下のとおり行われました。

5月: ヨード塩に関する4つのテレビ・ラジオスポットの制作。
5月31日-6月4日: 中部地区の医師、看護師、助産師計28人に対し、重度栄養不良についての研修の実施。
6月20-22日: 赤ちゃんに優しい病院イニシアティブの一環としてカブールのマラライ病院において、ハート産婦人科病院の14人の医師と助産師を専門指導者とするべく研修を実施。
6月21-23日: 東部ジャララバードのコミュニティの保健員25人に対し、母乳育児カウンセリングコースの研修を実施。

■水と衛生

ラングマンのナンガハールとメヘテーラムキャンプ内にあるチムタラキャンプにおける給水設備の緊急修理によって、帰還した5,000世帯の人々が安全な飲料水を利用できるようになりました。これらのキャンプにおける水と衛生活動についての長期計画としては、手動式ポンプによる飲料水の供給、ソーラー式ポンプ、家庭や学校での衛生施設(トイレ)の設置が含まれており、保健教育も同時に行われます。給水ポイントは、50のコミュニティと20校の学校で設けられ、2008年の干ばつ被害を受けた8,000人以上の人々と1万3,000人の子どもたちに提供されます。また、ナンガハールのシェルザード地区の地震に見舞われた人々に対し、水を入れるための容器、塩素粉、浄水剤、公衆衛生のための教育教材が提供されました。さらに、パルワンのゴルバンド地区で2つの水供給システムを設置し、1,500人以上の人々が安全な飲料水を提供されました。6月25日には、カブールにおける2ヵ月間の下痢性疾患予防キャンペーンをスタート。ユニセフの技術的及び資金的な援助を受けて、公衆衛生省と都市開発省が実施しました。

■子どもの保護

子どもと武力衝突:ユニセフの現地事務所に対し、国連安保理決議1621に基づいて、武力衝突に巻き込まれた子どもに対する暴力についてのモニタリング、報告、対応メカニズムを導入するために、現在技術支援が行われています。

子ども保護活動ネットワーク(CPANs):2009年5月、州のCPANsは、22の州において215人の子ども(男の子170人、女の子45人)が保護されたと報告しました。その中には、法に抵触した子ども73人、家族と離ればなれになった子ども17人、性暴力の被害に遭った子ども8人が含まれていました。全ての子どもたちが社会的な支援とサービスを受けました。2009年6月現在、9つのCPANsは5州32地区に活動を広げています。

少年司法と法治:ソーシャル・ワーカーや弁護士と共に、ユニセフはカブールにある青少年更生センター(JRC)での、早期に効果が期待できるプロジェクトを開始しました。この一番の目的は、JRCにいる166人中の子どもの中で、審議を待っている77人の子どもの全事例を振り返り、彼らを家族の元に帰すことです。

刊行物: 『アフガニスタンの子どもの人身売買に関する審議報告書』、『イスラム・クラ、ザランジ、トルクハムの3つの国境地域に暮らす弱い立場の子どもたちの状況分析』、『ハート、ナンガハールの国境地域における、所得創出のニーズと機会の評価』という3冊の関連刊行物が、子ども保護関係者とパートナーに配布されました。

■プログラムコミュニケーション

インフルエンザ H1N1型:世界各地での新型インフルエンザの発生とWHOによる「フェーズ6」の宣言に伴い、ユニセフは公衆衛生省とWHO、現地の民間団体パートナーと共に、コミュニケーション行動計画を立てました。ラジオやテレビコマーシャルを通じて予防に関する主要なメッセージが放送され、また、メディアマネージャーや宗教リーダーなど、地域で影響力のある人々者に対し、新型インフルエンザの予防と治療についてのオリエンテーションが行われました。特に人口の密集している地域や人口移動の激しい地域には、メッセージを絵にした資料配布されました。

ポリオ予防接種に関するコミュニケーション:ポリオ・コミュニケーションのデータ管理を強化するため、南部と東部の地域にて地元のチーム向けの研修が実施され、ポリオ感染リスクの高い地域やポリオワクチンを受ける機会がなかった子どもたちを対象に、よりよいコミュニケーションが取れるようになりました。紛争の影響を受けた南部、西部、東南部でのポリオ予防接種へのアクセスを改善するため、予防接種医に対しての個人的な研修も展開されました。情勢が不安定でポリオ感染リスクの高い地域では、ポリオ予防接種を実施することに障害となる問題点や成果を把握するために、知識、態度、実践に関する基礎調査が実施されました。

ユニセフのこうした成果は、現地政府やNGO、他の国際機関との協力は勿論のこと、常にユニセフを応援してくださっている世界各国の政府や、企業、団体、個人のみなさまのご支援なくては生み出すことのできなかったものであることは言うまでもありません。ユニセフは、パートナーと共に、アフガニスタンだけでなく、日々世界各地の支援の最前線で、コミュニティや子どもたち、若者の安全を確保するべく活動しています。