財団法人日本ユニセフ協会



ジンバブエ:コレラ流行の悲劇—ナイジェル君の話

【2008年12月19日 ジンバブエ発】

© UNICEF Zimbabwe/2008/Myhren
ナイジェル・チグドウ君(15歳)は、一晩のうちに、コレラにより、きょうだい(弟妹)を5人亡くした。ユニセフは、ジンバブエを襲っているコレラの流行を食い止めるため、緊急アピールを出した。

ナイジェル・チグドゥ君の目は、深い悲しみでいっぱいです。ジンバブエ全土を襲っているコレラの流行は、ナイジェル君の5人のきょうだい(弟妹)の命を、5時間で奪い去りました。ナイジェル君は、苦しそうな声でゆっくりと、そのときのことを話してくれました。

「弟たちは、嘔吐し始めて、ひどい下痢になっていました。」ナイジェル君(15歳)は話します。「一番年下のガムは、1歳2ヵ月。ラメックは12歳でした。真夜中のことだったから、どこへも連れて行けなくて、ただきょうだいたちが死んでいくのを見ていることしかできませんでした。」

「二日後には、おばあさんも亡くなりました」と、ナイジェル君は続けました。

コレラ流行の中心地

ナイジェル君は、ハラレ近郊にあるブディリロに暮らしています。ブディリロは、最近、コレラが流行している地域です。ナイジェル君一家が住む道路の反対側には、ユニセフが支援しているコレラ治療センターがあります。悲しみにくれる母親が、コレラにかかって命を落とした2歳の赤ちゃんの遺体を引き取りにきています。

これは決して珍しい光景でも話でもありません。水の供給が断たれ、下水道や衛生施設(トイレと手洗い場)が機能せず、道路にゴミの山ができている今、たくさんの人たちが同じような経験をしているのです。

ブディリロでは、破裂した下水管が水溜りをつくり、常に臭気が漂う中、ゴミが収集されないまま道端に放置されたままなのです。このような状況を憂慮したユニセフは、不衛生な水から広がるコレラを抑制するために、国際社会に緊急アピールを出しました。

病気がすごい早さで広がっている!

ジンバブエ全土で、ハラレのブディリロやバイトブリッジのドゥリバドジムのような人口密度の高いところでは、コレラはまるで手のつけられない火事のように広がっています。ジンバブエの10州のうち9州で、コレラの症例が報告されています。8月以来、症例数は1万6,000以上、死者は約800人近く報告されています。

「ジンバブエの子どもたちは、既に厳しい状況にあります。子どもたちの4分の1は孤児で、多くの子どもたちが、世界の同年齢の子どもたち比べて、非常に少ない量の食事にしかありついていません。」ユニセフ・ジンバブエ事務所のローランド・モナッシュ臨時代表は話します。「ジンバブエの子どもたちは、いま国内のコレラの流行の過酷さを最も感じていることでしょう。その中には、命を奪われている子どもたちもいます。子どもたちの命を守るための支援を行うことが、今極めて重要です。」

緊急支援活動として、ユニセフは、300万世帯以上の人々が、水を浄水できるように、浄水剤を数十万個配布しています。経口補水塩(ORS)、点滴、コレラ治療のための点滴、石鹸、バケツも数千支援しています。

チャンスはある

また、ユニセフは、コレラの影響を受けたコミュニティに、給水車で安全な飲料水を運び、コミュニティですぐに水が使えるよう、水のタンクを設置しています。衛生と保健教育を推進し、強化する活動も行っています。

「コレラの流行は、一般的なインフラと社会サービスが崩壊している兆候です。」とモナッシュ臨時代表。「保健と教育部門は、大きな困難に直面しており、支援を必要としています。」

この緊急支援を加速するため、ユニセフは、120日間の緊急事態対応策のために、1700万米ドル(約15億2500万円)の緊急プログラムに着手しています。このプログラムは、人口の70パーセントの人々に対応するための医薬品の提供、コミュニティを中心にした栄養不良治療の拡大、アウトリーチ型の予防接種サービスの実施、教師と看護師を仕事に復帰させるための報酬の支援などです。

「次の4ヵ月で、社会サービスの悪化を食い止めることができるかもしれません。チャンスはあります。このチャンスを逃すわけには行きません。」モナッシュ臨時代表は話します。「しかしながら、私たちだけで、これは達成することはできません。この支援活動を継続していくために、皆さんからの援助がもっと必要なのです。」