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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第51報
HIV/エイズの脅威から、お母さんと子どもたちを守るために

【2010年6月30日 ハイチ・ポルトープランス発】

© UNICEF/2010/Ramoneda
ジーンさんの娘のマリエちゃん。ジーンさんは、震災後、短期間の中断の後、抗レトロウイルス薬治療を再開することができました。

ジーン(仮名・28歳)さんは、娘のマリエちゃんを愛おしそうに眺めながら、マリエちゃんの寝ているベッドを慎重に蚊帳で覆いました。暑さの厳しい昼下がり、ジーンさんはハイチの首都ポルトープランスにある親戚の家の居間に座っています。ジーンさんにとって、5月のマリエちゃんの出産は、特別な出来事でした。

今年1月大地震に見舞われたハイチで、当時妊娠していたジーンさんは、ユニセフが支援している診療所で抗レトロ薬治療を受けていました。ジーンさんは、数年前からHIVと共に生きていたのです。ジーンさんは、夫と、慎重に妊娠の計画を立て、医師の指示に従った結果、ジーンさんの夫へのHIV感染を防ぐことができました。

1月12日、ジーンさんが仕事から戻ると、倒壊した自宅で夫は亡くなっていました。ジーンさんは、妊娠5ヵ月でした。

HIV母子感染の予防
© UNICEF/NYHQ2010-0622/Noorani
HIVと共に生きているジーンさん(右)は、1月12日の地震発生時、妊娠5ヵ月でした。適切なケアを受けるためにユニセフのスタッフと話しています。

夫を亡くした悲しみに暮れる中、ジーンさんは、見ず知らずの20世帯もの人々と一緒にテントでの避難生活を余儀なくされました。仕事もなく、この先どうなるのか分かりませんでした。ジーンさんは、特別な医療ケアと必要な薬を手に入れる手段も失いました。

「その時一番心配していたのは、抗レトロ薬治療を中断したら、私の赤ちゃんはどうなるのかということでした」と、ジーンさんは当時を振り返ります。「不安でした。無事に出産できるように、全て上手くいってほしいと思っていました。」

ユニセフは、すぐにHIV母子感染を防ぐための支援を再開することができました。ジーンさんは、抗レトロウイルス薬治療を再開し、帝王切開でマリアちゃんを出産しました。出生直後のマリアちゃんには、感染予防治療が施されました。

「出産時にHIV母子感染を防ぐための治療を受けた赤ちゃんが、抗レトロウイルス薬治療を受けている母親からHIVに感染する確率は、わずか2パーセントです。」(現地ユニセフ事務所のエイズ専門家、レミイユ・トリビエ)

今までのところ、マリエちゃんの検査結果は陰性です。しかし、最終的にマリエちゃんがHIVに感染していないと判断するには、さらなる検査が必要です。

将来への希望
© UNICEF/2010/Ramoneda
震災後、ポルトープランスで生まれたマリエちゃん。生まれてすぐにHIV感染予防のための治療を受けたので、マリエちゃんがHIVウィルスに母子感染した可能性は、非常に低くなっています。

マリエちゃんが生まれたときのことを尋ねると、ジーンさんの目から涙が溢れました。ジーンさんの気持ちは複雑です。マリエちゃんが生まれて嬉しい反面、この喜びを分かち合うマリエちゃんの父親がいないことが悲しいのです。現在、娘により良い未来を与えるため、ジーンさんは生活を立て直したいと思っています。

ハイチのHIV感染率は、大地震の前、わずかながら低下する傾向を示していましたが、カリブ海諸国の中で、非常に高い国の一つです。約6,800人の子どもたちが、HIVと共に生きていると推定されています。

ユニセフは、HIVと共に生きるハイチの人々が、医療ケアを受け続け、抗レトロウイルス薬治療を中断することのないよう支援しています。HIV母子感染を予防するためのサービスを拡大するため、ユニセフは保健省を支援し続けています。また、地元NGOと協力して、若者への予防活動も積極的に行っています。