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財団法人日本ユニセフ協会




 

より良い再建のために 津波前より良い環境へ 〜復興までの長い道のりにおける重要なステップ〜

 2004年12月26日にインド洋沖地震と津波が起きてから約12ヶ月が過ぎました。20万以上の人々が亡くなるか行方不明のままで、その3分の1は子どもたちでした。生き残った子どもたちも両親や親類、学校の先生やかかりつけの医師を失いました。家も学校も無くなってしまいました。子どもたちは日常生活の全てを失ったのです。

各被災国で既に開発支援プログラムを実施していたユニセフは、被害を受けた各国政府と国連機関内外問わず幅広い分野で活動する様々なパートナーとの調整を迅速に進める立場に置かれました。初めの数週間に、ユニセフは各被災地域に緊急物資を配り、今回の災害に関する世界の一致団結した一連の行動の一環として、被災者の命を救い、病気の蔓延を防ぎました。

ユニセフは、緊急支援を行う組織であり、長期的な開発事業を行う組織でもあります。ユニセフは第二次世界大戦の直後にヨーロッパの子どもたちを救済し復興を支援するために設立されました。157の国と地域で活動している現在、緊急時には何がすぐに必要なのかということに加えて、長期的な子どもの健康な発達のために必要なことは何かもふまえて自然災害へ対応しています。

 この1年間は全体として3種類の活動に力を入れてきました。一つは、世界中が資金や支援物資、人的資源や必要な設備を一斉に提供したのと同時に、ユニセフも緊急支援を即時に開始しました。ユニセフは最も素早く対応した機関の一つであり、地域にある備蓄と世界中のサプライヤーからの命を救うための支援物資を各被災地域に届けました。その後長期間にわたる支援活動の核を確立するのと同時に、生存者の命を守ることが最優先事項だったのです。

2つ目の鍵となる活動は、家を失った何十万もの家族に、継続的に基本的な社会サービスを提供することです。安全な水の提供範囲を日々拡大すること、適切な衛生・予防接種・基礎ケアを提供すること、学校を再開し教材を配布すること、そして家族と離れ離れになってしまった、または家族を失ってしまった子どもたちの身元確認をすること、子どもたちを家族と再会させ、十分なケアを受けられるようにすること、などが必要でした。家を失った家族にとって生活環境は依然厳しいものですが、保健・栄養・水・教育に関する基本的なニーズは満たされています。

3つ目の活動領域は、目立たないけれども非常に重要な作業である計画プロセスと合意形成です。命を守り、健康を保ち、基本的な保護を確保した上で、この規模の復興支援をするにあたって何よりも大切なのは、人々が自分の将来に責任を持てるように力づけることなのです。

 ユニセフは日常的に、パートナーや政府、契約業者や地域コミュニティとの活動の調整という困難できめ細かい仕事を担っています。子どもたちの回復のために私たちが投資した資金が最も必要とされているところに届いているか、適切に使用されているか、持続可能で継続的に成果を出せるかを確実にすることをユニセフは目指しています。最も大切なこととして、私たちの支援が、最も被害を受けた人々の願いや考え方を反映する形で役立って欲しいのです。

津波は建物だけではなく、登記簿も流し去ってしまいました。土地所有権の救済手続き、新たな区域の整備、どこに建物を再建するかの決定プロセスの問題が、恒久的な建設のペースを遅らせています。しかし当座の間、ユニセフは仮設教室や仮設診療所の建設を行ってきました。スリランカとインドネシアだけでも、2005年に200の仮設または準耐久性の校舎 がユニセフと地域コミュニティの協力で完成することとなりました。最終的にはこれらの建物は恒久的な施設に換わられる予定ですが、子どもたちを教室へ戻すと同時に、コミュニティ再建の磁石としての役割という2重の目的を果たします。

ユニセフはまた、復興支援全体に関する基準を設定するために、多くの時間を割いて熟考を重ねてきました。行方不明になった子どもたちの身元を確認し、登録するシステムを設置しました。「子どもに優しい学校」のための計画は、被災地域と時にはそれ以外の地域でも全ての新たな学校のためのモデルとして、政府からも採用されています。

 ユニセフの調査と政策提言によって、子どもたちを人身売買から保護し、施設よりも里親を推奨して孤児への長期的なケアを行うための政策が生まれています。そして、子どもたちの健康を維持する活動も、津波で影響を受けた地域を越えて実施され、沿岸部から離れた地域で親戚などと暮らす子どもたちも予防接種キャンペーンやビタミンAの補給などのサービスを受けています。

ユニセフはこのようにして、「災害前より更に良い状態まで復興する」という約束を守るため努力しています。ユニセフは、子どもの幸福にとって不可欠の時は迅速な結果を追求すると同時に、公正さ・持続可能性・質の高さを保障することに全力をそそいでいます。

 ユニセフの質に対する責任を表すものとして、資金の効果的に活用し、十分な監督・報告責務を遂行することが挙げられます。一年弱の活動で、ユニセフは支援者の皆様から頂いた62億6600万米ドルの資金のうちの3分の一を活用しました。この第一段階におけるユニセフの資金使途は基本的な物資の供給、仮設施設の建設、研修と能力強化、そして災害の影響があった地域に住み、復興を実現しているユニセフの経験ある専門職スタッフなどに使われています。

これからの数ヶ月、恒久的な校舎や診療所の建設が始まると、ユニセフの現地事務所が残りの資金の大部分を活用することになります。また、現在の時点では、ユニセフの実施パートナーについて、行われた活動の質、地域コミュニティと政府と相談の上で設置された高い基準を遵守しているかどうかを追跡し記録することに、最大の焦点を当てています。

次からは、国別に、鍵となる活動内容の内訳と現在と将来の支出、今後の計画、課題について紹介をしています。これらの情報は、数千人のユニセフ職員と政府・NGO・民間企業のパートナー、そして被災地域のコミュニティ自身の、懸命な活動と創造性、知識と、子どもたちへの情熱的な献身を表したものであることを言い添えておきます。

津波後1年におけるユニセフの支援

この一年の間にユニセフは津波地域に住むおよそ350万人の子どもと女性を支援することができました。約120万人の子どもたちがユニセフの支援するキャンペーンの一環としてはしかの予防接種を受け、50万人以上の子どもと母親がマラリアの感染を防ぐために殺虫処理を施された蚊帳を提供されました。

子どもたちを学校へ戻すために、134の仮設または準耐久性の校舎が建設され、370の校舎が修理されました。約140万人の子どもたちが緊急教育物資の恩恵にあずかり、63万人がユニセフの支援によって教科書を配布されました。ユニセフは、被災地域で家族と離れ離れになってしまった3,793人の子どもたちの登録、受け入れ家庭のアレンジ、家族との再会を支援しています。今日までに、心に深い傷を負った31万8千人の子どもたちがユニセフが支援する心理社会ケアの活動から恩恵を受けています。

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