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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

アルメニア:障がいのある子どもたちの人生を変える包摂的な教育

【2013年2月14日 ニューヨーク発】

© UNICEF Armenia/2012
アルメニアの首都エレバンの学校に通う、12歳のシラノウシュ・マルチロスヤンちゃん。車椅子でも普通の学校に通えます。先進的な政策により、障がいのある子どもの生活に、前向きな変化が見られます。

障がいのある子どもたちは、世界で最も弱い立場に置かれ、取り残されています。こうした子どもたちの権利は、しばしば侵害されています。

外出を許されなかったり、特別な施設に預けられたり、教育の機会に恵まれていないことも少なくありません。多くの子どもたちは、家族と離れて成長しています。家族と一緒にいたとしても、親は、障がいから表われる症状や徴候で、子どもが冷笑されたり、嘲りを受けたりすることを恐れています。そのため、こうした子どもたちが公の場に姿を現すことは少なく、コミュニティに積極的に参加できる機会も多くはありません。

『障がいに関する世界報告書2011年度版』における2004年のデータでは、中度・重度の障がいのある14歳以下の子どもの数は、世界の全人口の5.1パーセントに及びます。

多くの課題が残されているにもかかわらず、中央アジアや、東・中欧諸国、特にアルメニア、モンテネグロ、セルビアでは、誰もが分け隔てない環境で教育の機会を得られるような先進的な政策(=包摂的な教育)を導入しているだけでなく、差別撲滅キャンペーンもスタートさせました。こうした取り組みにより、人々の意識が変わり、障がいのある子どもの生活に、前向きな変化が見られます。

ユニセフは、各国政府と共に、教育システムをはじめ、障がいのある子どもとその家族を支援し、社会的排除によって生じる不公平性を減らすために活動しています。

「あらゆる子どもが受け入れられる世界、子どもたちの才能が生かされ、子どもたちの提案や貢献が認識される世界を想像してみてください」「この世界こそ、ユニセフが目指している世界です」ユニセフのアンソニー・レーク事務局長はこう話しました。

アルメニア出身のシラノウシュ・マルチロスヤンちゃん(12歳)は、車椅子で生活しています。現在、彼女は、首都エレバンの家の近くにある第129学校に通うことができます。

「私は、絵を描くことと、ピアノを弾くのが上手なの」と、シラノウシュちゃん。「この学校で自分を特別に感じたことはないわ。友達と一緒に話したり、休み時間に遊びに行ったり、学校の行事に参加することを楽しんでいるよ」

アルメニアでは、特別支援学校の数は、半数に減少。その一方で、包摂的な教育が導入された2005年から、包摂的教育実施学校の数は、100校まで増加しました。

セルビアのヴーク・カラジッチ小学校に通うアレクサちゃんの母親のザリカ・クマノビクさんは、次のように話しました。「助けが必要なときに手助けしてくれる先生方と、息子を受け入れてくれるお友達に囲まれ、息子は良好な環境の中で学校生活を送っています。アレクサは満足そうにしていますし、幸せな子です」と話しました。

最近、この3ヵ国政府は、ユニセフの執行理事会に合わせて開かれた会議で、このテーマについての各国の進展と課題について発表しました。

包摂的な教育とは、全ての子どもたち一人ひとりが、持っている可能性を最大限に発揮し、地元の学校で学習する好機を与えられていることを意味しています。しかしながら、これは、特別な学校やケア、高価な教材や専門の知識のある専門家が必要になるということではありません。全ての児童・生徒が、ただ単に、個人に合わせたサービスを受けられ、学習の機会を得ることができるということなのです。

セルビアの教育科学技術開発省のザルコ・オブラドヴィッチ大臣は、「全ての子どもを学校に入学させ、それぞれの子どもに応じたプログラムの策定を実現しました」と語りました。

オブラドヴィッチ大臣は、セルビアの包摂的な教育のためのネットワークなどの革新的な取り組みについて説明しました。政府、教員、学校カウンセラー、教育関係者、市民社会グループが、教育における不公平性の削減について進捗状況を確認している全国調査機関(the National Monitoring Framework)と連携して活動しています。総数の5人にひとりに当たる、約1万5,000人の教員が、現在研修を受けています。2010年には、セルビアにおける全国の3分の1の小学校で、障がいのある子どもの初等教育入学者数が増加しました。

「特別なケアを必要とする子どもにとって、教育は将来の発達に大変重要であるという、啓発活動を行いました」モンテネグロの教育・スポーツ省のベスナ・ヴクロヴィッチ副大臣は、こう話します。

モンテネグロでは、3年間にわたる啓発・広報キャンペーンによって、全人口の80パーセントがこの取り組みを認識。調査した4人にひとりは、自分たちの意識が変わり、今は障がいのある子どもたちが普通の学校や社会に参加することを、前向きに受け入れていると応えました。

アルメニアでは、学校での草の根レベルの活動から、総合的な政策策定へと戦略的にシフトすることに重きを置いています。

「この活動は、学校からスタートしました。とてもゆっくりとしたものでした。教育科学省は、この取り組みを拡大する必要があることを認識しました」アルメニアの教育・科学省カリン・ハルチュンヤン副大臣はこのように語り、カリキュラムの変更について説明しました。このカリキュラムの変化により、さらに包摂的になっただけでなく、そして、障がいのある子どもの教育的なニーズを調査・評価するための特別な委員会も設置されました。

ユニセフは、他国の政府やドナーに、全ての子どもが質の高い教育を受ける権利があることを訴えるための政策を支援するよう求め続けています。

「できる限り多くの子どもたちが質の高い教育を受けられるように支援することは、同時に、社会を豊かにすることに繋がり、社会にとってもよいことなのです」ユニセフの執行理事長で、フィンランドの国連大使も務めるジャルモ・ヴィナン大使はこう話しました。

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